誰が真面目に勇者なんかしてやるかよ ~めぐりめぐって異世界で再会した友だちが魔王だった話~

紫蘇

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本領発揮するおじさん

足止め

 
「マサト、魔物だ!」
「ああ、見えてる、行くぞオーベル!」

 村へ帰る途中にも、やっぱり魔物が出た。
 今度は紫のヘビ……しかも、頭が5本ある。
 そしてでかい。

「めんどくせえ奴出て来たな!」
「ああ、だがいつも通り行こう!」
「ああ!」

 今まで、2・3・4本頭のやつは倒してきた。
 5本あるのは初めてだけど、3本のときも4本のときも初めてだって言いながら倒してきた。
 だからやれる。

「魔法で真ん中の頭を狙う!」
「頼むぜロルッカ!」

 俺は右、オーベルは左。
 そうすると、奴は右にも左にも頭を伸ばさなきゃならないから前に進むのをやめる。

「っりゃあ!」
「セイ!!」

 真ん中の頭がどっちを攻撃しようか迷ってるうちに、俺とオーベルは2本の頭の攻撃をかいくぐり、二人がかりで胴体をぶった切る。
 ヘビは胴体がなきゃ前へ進めないからだ。

「quiiiiiixxx!!!」
「っしゃ、次、頭!!」

 2人同時に頭が暴れるのに巻き込まれない様に下がる。
 ロルッカの魔法が完成する。

「……炎よ!!」
「gy%#exxxx!!」
「よし、当たった!」
「行くぞ!」「おぉ!」

 俺とオーベルは、火に巻かれてる魔物の頭を叩く。
 全部の頭を叩き割れば、死ぬ……!

「だぁあ!」「gyllxxxxx!!」
「っしゃ!」「oyugrlllx!!」

 まず1本。次に2本。最後は、

「srilllooo!!」
「がっ……!」

 3本目の頭が、俺の左肩に食らいつく。
 痛ぇ、が、エリーゼの治癒がありゃ……!!

「マサト!」
「の、野郎!!」
「yuill$$$ryixxx……!!」

 右手の剣を持ちかえて、思いっきり眼球から頭をぶち抜く。
 奴が暴れる、肩がえぐれる、

「ロルッカ!」
「…………氷の矢よ!」

 ロルッカの魔法はいつでも正確だ。
 暴れるヘビの眉間に、氷の矢が一発……
 そして魔物の姿が消え、俺の左肩からは派手に血が噴き出す。
 ナイフを抜いたら血が出て来るのと似てる。

「マサト!!」
「マサト、いま治癒するわ!」

 エリーゼがすっ飛んでくる。
 泣きそうな顔してる。
 どうやら、今回の怪我は結構……

 やばい。


 ***


「雅人、おい、雅人!」

 あ……社長?

「ったく、何死にかけてんだよ」
「すいません……」

 妙に天井が白い部屋に、俺は寝ていた。
 どうやら病院に担ぎ込まれたらしい。

「お前、無茶しやがって……もう38なんだから、若い時みたいな無理は効かねえって言っただろ」
「あ……はい……」

 ……あれ、俺、戻って……来たのか?

「やっぱ篠くんがいないと駄目だな、お前は」
「え、何で急に篠くんなんすか」
「だってお前に気ぃ使ってくれるの、俺か篠くんしかいないだろ」
「いや、社長は分かるけど、篠くんは……」

 篠くんは、突如俺の修行先に現れた大学生だ。

 カフェめぐりが趣味で、たまたま俺の修行先に客としてやってきた。

 羨ましいぐらいに綺麗な黒髪とが印象的な子で、人あたりも良くていいやつだ。

 カウンター越しに話してるうちに仲良くなって、よくお店に来てくれるようになった。

 帰る方向が一緒だって分かってからは、閉店まで待ってくれて一緒に帰ったり……
 休みの日には、カフェめぐりに連れて行ってくれたりした。

「他の店を偵察するのも大事だから」って。

 そうやって、俺の夢を笑わずに応援してくれて……

 って、確かにそんな人、社長を除けばシノくんぐらいしかいなかったかもしれない。

 修行先の店長ですら、最初信じてなかったしな。

「つうか社長、篠くんの事知ってたんですね」
「知ってるさ!挨拶に来たからさ」
「そういやそんな事もありましたね」

 俺の部屋は会社の2階にあったから、遊びに来た時、偶然社長と出くわしたんだって言ってた。

「大変仲良くさせて頂いてます、ってさ。
 雅人はあんまり友だちいないから、よろしく頼むなって言ったんだ」
「はは……」

 確かに、友だちは少なかった。
 中学生にして立派な不良だったくせに、遊ぶ金がないから他の不良とつるんだりもできなくて……

 他のやつらと違って、親の財布から金を抜くとかもできないだろ、親いないし。

 だからって、脅すとか盗むとかもさ……
 施設の先生に迷惑かかるじゃん。
 ただでさえ、教師ぶん殴って迷惑かけたのに、これ以上は……って。

「昔は『美貌の一匹狼』って呼ばれてたしな!」
「美貌は余計っす」

 正直、この見た目で得した事なんか一回もない。
 モテるどころか喧嘩売られるばっかだ。
 なのに、社長はずっと「可愛い」って……

「いやだって、ほんとに可愛かったもんよ。
 嫁がアイドル事務所に履歴書送ろうとしたの止めたもん、俺」
「そういやそんな話、ありましたね」
「だろ!
 俺の嫁が美少年だっていうんだから、間違いねぇ」

 社長は豪快に笑って、俺の肩をバシバシ叩いた。
 でも、なんでこんな懐かしい話……

「なあ雅人。
 無理すんなよ。
 仲間もいるんだろ。
 一人で抱え込まないで、相談しろ。
 あと、そろそろ目ぇ覚まさないと、死ぬぞ」
「えっ」
「じゃな、雅人。
 今度はちゃんと生きて俺んとこ顔だせよ」
「しゃちょ……!」


 ……社長の姿が、光の中へ消えてく。
 いや、俺が光に包まれてる……?






「マサト!!」


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