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最後の学園生活
日常
しおりを挟む政変騒動による休校が開け、学園に日常が戻った。
いや、一部戻らなかった者もいたりするが、概ね元に戻った。
パッセルは第一寮へ戻り、オヴィスとエバ王子もまた第一寮へ帰って来た。
「お久しぶりですね、オヴィス殿」
「パッセルさんも、ご無事で何よりです!」
「そういえばパッセル、北の辺境領から9人、学園生として登録して欲しいという話があったんだが……」
「ああ、そういえば!
うっかり西の辺境へ置いて来てしまいました」
「おい、うっかりで人を忘れるなよ」
三人はあははと声を上げて笑い、学舎へと向かった。
途中で会った学生が二人に挨拶をした。
「おはようございます、両陛下、パッセル閣下!」
「おいおい気が早いぞ?」
「そうですよ、全部の式はまだ先なのに」
エバ王子とオヴィスは、その生徒に不自然な速度でツッコんだ。
だからパッセルは「変なあだ名がついたものだ」と聞き流しかけた言葉が本当である事に気付いた。
「……かっか?」
「なに、気にするなパッセル」
「そうそう、気のせいです気のせい」
この国において「閣下」は高官への敬称として用いられている。
つまり、知らないうちに自分に御大層な役職がついているという事だ。
「……何か、やりましたね?」
「ううん、何の事だか?では、私どもはここで」
エバ王子は急によそよそしさを醸しつつ、オヴィスの手を引いて逃げた。
「殿下、お待ちを!……これはどういう事、
…………あっ!?」
パッセルは思い出した。
あの晩、姫君に自分を「災害救助隊の長」と紹介した事を。
多分それが……
「しまった、墓穴を掘った……!」
王宮はそもそも平民がお気楽に参内していい場所ではない。
パッセルの場合、モンタルヌス家の養子だからギリ許されているだけだ。
だから怪しまれない為に、あの時即興で適当な役職を考えた。
その場かぎりの嘘のつもりで。
それなのに、パッセルは姫君に約束をしてしまった。
図鑑だけ贈ればよかろう、と気軽に考えてしまったのだ。
それが、相手に隙を与えてしまった!
「あの、コンサル狸……!」
つまり、奴が姫君の為といって役職をつけたのだ。
まさか、こんなところで一本取られるとは!
「……しかしさっきの生徒、一体どこでそれを」
どこでも何もない。
早急にかつ大々的に世間に知らせないとまずいから、とスマリティムス工房が徹夜でモリモリ刷ったのだ……
号外を。
だが残念な事に、王宮に詰めっぱなしになっていたパッセルには号外が届かなかった。
王宮の中まで号外を配りには来ないのだ。
「……何故だ、そしてそもそも何という役職なんだ」
久々に食らわされたパッセルは、軽い頭痛を感じながら教室へと向かった。
***
無事に授業が終わり、放課後の第一寮裏では久々に戻ったパッセルに学生が群がって政変の事を聞きたがったり、そこへタイミングよく王子が連れ立って現れたりし、勉強会はほぼ説明会になって終わった。
「やはり、まだ納得出来ん者も多いな」
「人の心情とはそうしたものなのでしょうね」
「そうだな、突然母がいなくなった者は特に」
今は久々の食事会だ。
いつものメンバーが勢揃い……とはいかないが、エバ王子とオヴィス、ギル王子とラディア、アラウダとパッセルの6人でテーブルを囲む。
「そういった方々に、再会の場をもうけては?」
「そうだな、時期が来たら」
「今はまだ……西からの連絡が入らんしな」
「東は来たんですか?」
「ええ、救助隊の方が直接」
「……」
とんとんと話が進む中、ラディアは黙々とただ食べている。
だって久々に会う師匠は、前よりずっと、大きく見えて……。
「……それで、ラディア。
ギル殿下の横で働く事には慣れましたか」
「っ!、ん、むぐ」
「特務隊には、ベータ性の方もおられたはずです。
もし行き詰まったら、その方にお話を伺ってみるのも良いと思いますよ」
「!、んっ、……、は、はい!」
だが、そんなパッセルも、自分がベータだと思っているようだ。
思ったより自分は上手くやれている……のか?
ラディアは思わず、オヴィスの顔を見た。
オヴィスはにっこり笑っていた。
「あの……パッセルさんは、卒業したら西の辺境へ住むんですよね?」
「ええ、勿論」
「リュノ殿下とは、いい夫夫になれそうですか?」
「っぶ!!?」
突然の切り込みに、パッセルは思いっきりむせた。
「な、急に何を言うんです、オヴィス殿っ」
「だってパッセルさん、雰囲気変わりましたもん!
だから、その……エッチ、したのかなーって」
「「ぶふっ!?」」
今度はエバ王子とギル王子が噴き出した。
途端にアラウダが立ち上がって叫んだ。
「まさかあんた、項を噛ませたんじゃ……!?」
「やめろアラウダ、人に聞こえるっ」
「こんなもん聞こえても構いません!!」
いっそこの話題で政変の事が掻き消えるなら、その方がまし。
アラウダにその計算があったかは分からないが……
翌日から、パッセルとリュノ王子が番になったという噂が学園中を駆け巡る事になった。
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