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最後の学園生活
姫君との再会
しおりを挟むパッセルは離宮に行く途中、偶然ウルサに出会った。
「あら、お越しは今日でしたっけ?」
「ええ、そうだと思いましたが……何か御用が?」
「いいえ、全然用はございませんわ、ただ……」
何かを言いたいが言いづらい、という顔で、ウルサは持っていた本のタイトルを隠した。
すると横から突然声が聞こえた。
「ウ~ルサ!」
「きゃっ!?」
「姫様!お一人でこんな場所まで」
「うふふっ、でも、今まで二人とも気づかなかったでしょう?
私が敵だったら二人とも丸焦げよ!」
小さく可愛らしい姫は、可愛らしく笑いながら可愛らしくない事を言った。
パッセルは心の中で一人の男に中指を立てつつ言った。
「ええ、素晴らしい認識阻害魔法でした」
「でしょう!ボルタおじさまが教えて下さったの、いざという時の魔法ですからって」
「やはりそうでしたか」
シルウェストリス公は、一夜にして両親を失った……と言っても死んだわけでは……うん……多分父親の方もまだどこかで生きてる……と……思う……的な、可哀想な姫君を猫かわいがりし始めたのだ。
母親をここから出したのも父親を追い出したのも自分だから、罪悪感があるのだろう。
そういうパッセルにも、少々の罪悪感があるのだから。
「……寂しくないですか、姫」
「全然寂しくないわ!
お母様が私の為に残してくださった本もい~っぱいあるし、ウルサや、ドリーや、ミラや……」
姫の口から出たのは、幼い頃から一緒にいる侍女やメイドたちの名前だ。
彼女たちは雇用される際、仕事が終わった後は姫君の友人として振舞うよう王妃に請われたのだという。
そしてウルサもまた、しかり。
パッセルは思慮深き王妃の事を頭に浮かべながら言った。
「そうでした、沢山のご友人がおられるのでしたね」
「そうよ!
私に、外の世界のこといっぱい教えてくれるの。
この前はこんなのを買ってきてくれたわ!」
そう言って姫が取り出したのは、スマリティムス家が印刷した有料号外だ。
「……これは!?」
「お、おほほほほほほ」
姫が広げて見せたその紙面には、『救国の士パッセル、結婚秒読み!? リュノ王子とのデート一部始終♡』というタイトル&サブタイトルが……あった。
さらに姫はその記事を拾い読みした。
「この記事によると、パッセルはリュノ殿下と一緒に露店商が集まるマーケットに行ったのね」
「な、な、な」
「そこで薬草標本をいくつか買って、喫茶店でマフィンを食べて、帰りに釘を2箱、ネジを1箱買って、その後は貴族街まで足を運んで新しいネックガードを注文したのね」
「ウルサ殿、なんでこんな話が号外に!?」
パッセルは、これがスマリティムス家の仕業だと瞬時に見抜いた。
見抜かれると思っていたウルサは、一番自分が可愛らしく見える角度を即時計算し、あざとさ全開で言った。
「……国民の一大関心事だから?」
「何でですか!?」
そして人の恋愛でこんなに大騒ぎできるのは、王都が平和な証ね!と姫が為政者っぽい事を言い、パッセルは久々に個人的な視点でぷんすか怒った。
とても平和な、お昼の出来事だった。
***
一方、近衛騎士の訓練所では殺伐とした空気が流れていた。
「……今日こそ、貴様を倒す」
「やれるものならな、隣国の王子様?」
王宮執事はモンタルヌス流にならい、カランカランとハンドベルを鳴らしながら注意喚起を……
「決闘!決闘でーす!決闘ですよ~!!」
……いや、注意喚起ではない。
完全に客を呼び込む態勢である。
訓練所には暇な人間も暇でない人間も集まり、決闘は催し物の様相を帯びる。
「ギル殿下ー!頑張れー!!」
「リュノ殿下も負けるなー!!」
ギルの応援を近衛がやり、リュノの応援はたまたま王宮へ報告に来た王都騎士団がやる。
つまり、リュノは応援からしてすでに劣勢……
「愛しのパッセルは応援に来ないのか?」
「そういう貴様は、最近お気に入りの魔法使いを連れてないのか」
「連れて来なくても付いてきてくれるんだ、お前の魔法使いと違ってな?」
「……の、野郎……!」
会場のボルテージが上がる。
どっちが勝つか、賭けを始める者もいる。
ついに騎士団総長が叫ぶ。
「開始ぃっ!!」
「うおお!」「はぁあ!」
二人の王子が同時に踏み込む。
激しい剣戟が訓練場に響く……!
「この前より腕を上げたな!」
「ダンジョンで修行してるからな!」
ギルの打ち込みをリュノが防ぎ、数瞬のつばぜり合い。
そしてまたお互い2歩下がり、次の瞬間には1歩前へ出て剣を打ち合わせる。
大歓声が上がる。
その声は遠く、王宮の外まで響き……
ちょっとした騒動を生む事になった。
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