話が違う2人

紫蘇

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最後の学園生活

遅めの帰還

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フェリス達が帰って来てから2週間ほどして、パッセルとリュノが学園へ戻ってきた。

「お帰り、パッセル!リュノ殿下も!」
「只今戻りました、フェリス殿」
「よくぞご無事で、リュノ殿、パッセル」
「ありがとうエバ殿。
 南のダンジョンの報告書はここに」

リュノの報告によると「海と陸を繋ぐ」という珍しい特徴を持つ南のダンジョンは、まだまだ攻略に来る者も少なく、南方騎士団が定期的に海→陸のルートで攻略していくことになったそうだ。

「後は災害救助隊支部の件ですが、漁村にはそういった余裕がありません。
 ですから、渦潮魔法の継承を年に1回の祭りにして、人を内陸から呼び集めて漁村を知って貰うところから始める事になりました」
「分かった、後はこちらに任せてくれ」
「宜しくお願い致します」

取り敢えず、南の騒ぎも収まった。
災害救助隊の支部も、遠からず全国に広がるだろう。

「……これで、地方の困り事は目途がついたんだな?」
「ええ、一応は。
 後は「救国の士」たちの選定ですが……いっそ特務隊に代わって頂こうかと」
「と、言う事は?」
「ラディアの治癒魔法をもっと鍛えなければならない、という事と、彼らに防災教育をしなければならない、という事ですね」
「……確かに、その方が早いか」

近衛特務隊は現在、アルバトルス最強の集団だ。
そこへ優秀な治癒師さえいれば、パッセルの代わりとして余りある。

「後は権限の委譲ですね。
 災害救助隊とどう連携していくか」
「ふむ、分かった。
 それもこちらで引き継ごう」
「宜しくお願い致します」

ギル王子にそう言って、右の拳を心臓の上に当て、きっかり30度頭を下げたパッセルの姿は……

1年生の時アルファクラスで起きた事件の時と同じ、往年の騎士を彷彿とさせるものであった。


***


「無事に引継ぎが終わって良かったね!」
「ええ、これで心置きなく西の辺境へ移住できます」
「卒業後からスタート、って言ってたもんね、あの時」
「ええ、そうでしたね」

湯迫叶フェリスの「わたしの箱庭」は卒業で終わり。
奥津四郎パッセルの「わたしの箱庭」は卒業が始まり。

「これからは農地経営シミュレーションかぁ……がんばろ!」
「ええ、優秀な薬師が安定した経営には欠かせません。
 これからも宜しくお願いします」

先に行ったクレイドに合流して、3人で一旗揚げる。
今まで辛い想いをしてきた人たちと共に……

「夢が叶いそうだね」
「ええ、これからもどんどん、叶えていきましょう」
「そうだね!だって僕、「叶える」って名前だったんだから!」

前世で望んだ、健康。
前世で望んだ、平和。

健康だからこそ、できる事。
平和だからこそ、できる事。

「……結婚して、子どもを産んで、新しい家族を作るの。
 父上はおじいちゃんになって、母上はおばあちゃんになって……って、もうなってるんだけどね」
「私は、見渡す限りの小麦畑を目指します。
 焼野原でもなく瓦礫の街でもない、美しい原風景の中で、時々「退屈だ」なんて思えるほどの」

卒業後には、明るい未来が待っている。
そう信じられるだけの自信が……

「あっ、そうだ!
 オヴィスがね、戻ったら『リュノ殿下と一緒にすぐ王宮に来て欲しい』って言ってたんだった」
「え、オヴィス殿がですか?」
「うん、だから僕も一緒に着いてっていい?」
「それは……構わない、というか、心強い事ではありますが……」

一体何事だろう、とパッセルは思った。

そう、彼の頭の中からは大事な事が抜け落ちていたのだ……。

「おーい、パッセル!」
「リュノ!ちょうどいい所へ」

エバ王子への報告が済んだらしいリュノが、パッセルを迎えに来た。

「オヴィス殿が王宮に来て欲しいと」
「ああ、俺もエバ殿から聞いた」
「何の用でしょうね?」
「……大事な用だ。とても」
「とても……?」

答えを知っているリュノは、ちょっとだけ意地悪げに微笑んで、パッセルを馬車までエスコートし……
その姿を見てニヤニヤしながら、フェリスは後へ続いた。


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