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最後の学園生活
するか、しないか
しおりを挟む「け、っこん、しき?」
王宮に到着し、オヴィスの待つ応接間へ急行したパッセルは呟いた。
オヴィスはその様子に、呆れながら言った。
「そうですよう!結婚式!」
パッセルはゆっくりと首をかしげ……
「……すっかり忘れてただろ、パッセル」
「いいえ?」
パッセルはしれっと嘘をついた。
当然ながら、全員にお見通しのやつだ。
だから全員から怒られた。
「正直に言いなさい、パッセル!」
「なんでそんな見え透いた嘘をつくの!?」
「全然準備が進まなくて困ってたんですからね!」
「衣装の仕立てだって時間がかかるんですからね!」
「場所を押さえるのだって大変なんですよ!」
「お食事会の献立が決まらなきゃ食材の発注も出来ないでしょ!!」
「警備にしたって計画が立たないだろうが!」
「隣国の王子様と結婚する自覚をもってください!」
「国賓の歓待もあるんですからね!」
一緒に来たフェリス、リュノに加え、オヴィスの後ろにいた式典係から服飾職人から料理人、はては騎士団総長や外交官吏にまで怒られ、パッセルは小さく呟いた。
「……申し訳ない」
***
パッセルが全員からひとしきり怒られたところで、アルベンシス候とシルウェストリス公もやってきた。
「パッセル殿、なぜこんな大切な事を忘れるんだ」
「申し訳ありません」
「お相手の身分をお忘れじゃありませんよね?」
「申し訳ありません」
「いい加減自分の立場もわきまえてください」
「申し訳ありません」
取り敢えず謝罪するモードに入ったパッセルは、素直に頭を下げて反省した様子を見せた。
その姿を見て、シルウェストリス公が言った。
「まあ、そんなこったろうと思って、大体の計画は進んでんだわ」
「そうでしたか」
「招待客は最低限に絞った。
お前の両親とモンタルヌス伯夫妻とユバトゥス王国国王夫妻の6人だ」
式の内容もフェリスと話し合って大体決まっているらしい。
持つべきものは、前世の知識を共有する友だち……
「では、小さな式場でも足りますね」
「足りるか馬鹿。
国王夫妻が来るっつってんの」
つまり、その都合もあって「隣国の新しい王の誕生を祝う」のと「隣国の王の結婚を見届ける」のと「我が子の結婚を祝う」のがひと固まりになったのだ。
フェリスの「大型連休を作ろう計画」にとても都合のいい日程になったのは、偶然ではなく必然……。
「2日連続で大聖堂押さえられたのは僥倖だったな」
「馬鹿の尻拭いで神殿と懇意になってたのが功を奏したな」
あいつがようやく役に立った、とシルウェストリス公が笑い、アルベンシス候もつられて笑う。
その二人を見て、パッセルが感慨深そうに言う。
「……お二人がそうやって笑い合う日が来たのですな」
「本来派閥争いしてる場合じゃないからな、我が国……って、話をずらすんじゃねえ」
「バレましたか」
「つか、お前本当は反省してないだろ」
「ええ、まあ、そうですね」
パッセルは頭をかきかき苦笑いする。
「結婚と結婚式が、どうも結びつかなくてね」
「は?」
「結婚はするけど、その……式をしないっていうのは」
その瞬間、集まった全員がキレた。
「なしに決まってるでしょ!」
「さっきご自分の立場とお相手の立場について申し上げましたよね?」
「いい加減にしてください!」
「どうして逃げるんですか!?」
「変な所で面倒くさがるのやめてください!!」
応接間がかつてないほどの騒ぎになる。
そりゃそうだ。
ここにいる皆で、忙しいパッセルのために彼の結婚式の準備を秘密裡に進めてきたのだ。
今更「やらない」わけにはいかない。
だって、もう……
「もう準備は進んでんだよ。
後はお前が『はい』って言うだけってとこまで!」
そのシルウェストリス公の言葉に、パッセルはにっこりと微笑んで言った。
「ならば私は『はい』と答えましょう。
ここにいる皆さんを始め、多くの方が私を想ってしてくださった事に、間違いは無いでしょうから」
そうして、この空間にいる全員に向かって丁寧にお辞儀をした。
「私のような者のために……
本当に、有難うございます」
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