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最後の学園生活
衣装、衣装、また衣装
しおりを挟む「と、いうわけだから、お前がやることは衣装合わせだ」
「何が『と、いうわけで』なんです」
「まあまあ、早く行こうパッセル」
シルウェストリス公が目配せするまでもなく、フェリスはパッセルの手を引いて別室へと連れて出ていった。
それにリュノが付いて行こうとすると……
「あ、リュノ殿下には当日までのお楽しみという事で」
「なっ!?」
目の前で扉が閉められた。
そして、オヴィスがまず最初に口火を切った。
「そうそう!リュノ殿下の衣装も試着しないとですし!」
「ユバトゥス国王ご夫妻をおもてなしするにあたって聞きたい事もありますし」
「そうそう、お部屋の事からご宿泊中のお食事も」
実は、パッセルよりもリュノの方に用事がたまっているのだ。
さっきまでパッセルに文句を言っていた背後の人々も、用事を口々に述べる。
「ユバトゥスまであれこれ聞きに行く事ができないもので、すいません」
そうしてやいのやいのと盛り上がる中、オヴィスがリュノに「最初にすべき事」をリュノに命じた。
「そうそう、パッセルさんの実のご両親にも、ご挨拶して頂かないと!」
実は結婚式の準備のために、数日前からパッセルの両親は王都へ出てきている。
そして、自分たちの息子があまりにも大きくなりすぎた事に震えながら過ごしているのだ……
なんという良心的な人たちだろう!
両親だけに!
「という事で、まずはご両親に会いに行きましょうか」
「え、ちょっと待て、心の準備が」
「そういうのは馬車の中でお願いしまーす」
リュノはいきなり両サイドを近衛騎士に固められて、そのまま連行されていった。
彼の姿が消えて暫く、誰かが言った。
「まあ、うちの『救国の士』を掻っ攫っていくんだから、このぐらいは我慢して貰わないとな」
***
「うーん、もうちょっとここ、レース足せる?」
「いやフェリス殿、もうレースは」
「駄目だよ、こういう時じゃないと華やかな衣装なんて着られないんだから!」
フェリスは隙あらば衣装にレースを盛り込もうとパッセルの婚姻衣装に口を出す。
「これでいかがです、フェリス様」
「うん、いいね!
ぐっと華やかになった……じゃあ次、戴冠式の衣装をお願い」
「かしこまりました」
まだ作る衣装があるという口ぶりに、パッセルは慌ててフェリスを止めた。
「いや、この前の茶会で着た立派なやつが」
「ああ、最終教官のやつ?
あれはクレイドの叙爵式で着るにはいいんだけどさ、エバ殿下の戴冠式には『救国の士』として出てもらうんだから、別で仕立てないと」
パッセルは国民の代表として、舞台の上で儀式を見守るのだ。
騎士を育てる官吏としてではなく。
「そっちのは極力シンプルなのを頼んであるよ。
リクルートスーツみたいな感じの、レースなし、刺繍なし、タイなし……まあ、マントはあるけど」
「なるべく安上がりに頼みます」
「うん、なるべくね」
救国の士がギラギラした衣装ではまずかろう。
それはさすがにフェリスでなくとも分かる。
「そっちは最後ね、サイズ合ってるかどうかの確認だけだから。
じゃあ次は……」
「え、まだあるんですか!?」
「そりゃエバ王子とオヴィスの結婚式もあるし、僕とクレイドの結婚式もあるでしょ。
ユバトゥスに視察に行ったら式典はあるだろうし……」
「いや、まだ行くと決まっては」
「いやいや、前々から打診が来てるから。
こっちが地震やら魔物大発生やらダンジョンやらで忙しかったから、延びてるだけでしょ」
「……はい」
パッセルはまだ来てもいない式典ラッシュにため息が出た。
そんなパッセルを見て、フェリスはそっと耳打ちした。
「実はね、小説の中ではエバ王子がパッセルに100着ぐらい服を買ってあげるの」
「は?」
そうなのだ。
小説の中では、フェリスによって制服を破られてしまったパッセルに制服を何着も買い与え、普段着が無防備すぎると言っては服を買い与え、デートの度にいくつも服を仕立ててやって……。
そりゃもう、自分の父親も真っ青の浪費ぶりを見せるのだ。
「だから、今のうちに作れるだけ作った方がいいって。
作ってもいい流れのうちにさ!」
「ええええ」
「だから農作業する時の服とかダンジョンに潜る時の服とか、いっぱい発注しといたから……
そっちは既製品だけどね」
「充分です!」
いきなりそんな衣装持ちになっても、収納する場所なんてない。
新居が服で埋まりそうな予感に、パッセルは身震いした……。
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