話が違う2人

紫蘇

文字の大きさ
275 / 292
最後の学園生活

王子たちの殺伐

しおりを挟む
 
一方その頃、第一寮裏ではギル・エバ・リュノの3人が集まって険しい顔をしていた。

そのただならぬ雰囲気に、他の学生たちは彼らを遠巻きに見ている……

「どうしたんだろうな、こんな時期に」
「エバ殿下がご卒業後すぐに戴冠されると聞いたが、その事だろうか」
「いや、リュノ殿下の事じゃないか?
 今のところ、我が国からの叙爵は予定が無いと聞くぞ」
「ユバトゥスとの折衝が思うように進んでいないとか」

早めにこちらへ国籍を移す、と言っていたリュノ王子だが、本国がなかなか首を縦に振らない。
パッセルとの繋がり、ひいては西の辺境、そしてアルバトルスとの縁に関わるからだろう。
戦争をしたいわけでないからこそ、慎重にならざるを得ないと言ったところだ。

「全ては結婚後、という事か」
「なら交渉の作戦会議かもしれないな」
「ふむ……まあ、パッセル殿の仕事には、他国の人間では関わらせられない事が多いからな」

将来官吏を目指す学生たちは、彼らが何を話し合っているのか予想し合う。
今、国内の情勢はどうなっているのか。
外国との関係はどうなのか。
それをしっかり頭にいれておかなければ、どこの部署でも役立たずだ。

「ギル殿下が副王というお立場に不満を抱えておられる、という可能性は無いのか?」
「いや、殿下の率いる近衛特務隊は、パッセル殿から『救国の士』を引き継ぐと聞いたぞ」
「もしかしてそれがマズいのかもしれんな、エバ殿下としては」

あれこれと話し合いの内容を想像し、こっちはこっちで議論が白熱する。

だが、真相は……。


***


「……という訳で、決闘の再戦をだな」
「一対一でか?
 救国の士を引き継ぐための決闘なら、こっちは特務隊全員で挑ませて貰いたいね」
「いや全員は無理だろ」

3人が話し合っているのは、決闘の方法だった。
パッセルに勝つか引き分けるか。
それが引継ぎの最低条件だ、との言い分に、ギル王子としては不満たらたらである。

「魔法有りなら、そっちに勝ち目があると」
「……弱点は聞いた。
 この前のダンジョンで確認もした、だが」

魔法を唱えた直後の一瞬を突く。
言うのは簡単だが、出来るかどうかとなるとまた別の話だ。
そんな弱気な弟を見て、戦いには疎いはずのエバ王子が口を挟んだ。

「大丈夫だ、この前、研究所の協力で、王宮内の訓練所に学園の魔法教練所と同じ仕掛けを施した。
 魔法使いを騎士として正式採用するなら、魔法の訓練も出来なければ話にならんだろう?」
「問題はそこじゃない、兄上」

ギル王子は速攻で反論したが、エバ王子はニヤリと笑って続けた。

「分かってるさ、俺が言いたいのは、だから魔法をどんどん使わせられるだろって事」
「まさか、魔力切れを狙うのか?」
「そのまさかだ」
「おいおい、それこそ現実的じゃないぞ」

パッセルの魔力は膨大だ。
それこそ、魔物を何百と倒せる量がある。
だがエバ王子は続ける。

「いいか、まず特務隊員との一対一を申し込む」
「決闘で?」
「いいや?救国の士に足るかどうかの最終試験をしてくれと頼むんだ」
「ほう?」

つまり、パッセルは隊員の数だけ戦う事になる。
特務隊員の数は20。
20試合もやれば合間の疲れを回復魔法で癒すだろうし、魔法剣との戦いとなればパッセルも魔法を使う可能性がある。

「それで最後にギルの出番だ。
 特務隊員たちで少しでも魔法を使わせられれば、勝機は広がる」
「……卑怯だと思われないか?」
「そこはやり方次第だろ。
 『部下をボコボコにされて上官が黙っているわけにはいかない』んだから」
「……なるほど?」

自分が戦いに向かないからこそ、知恵を絞って勝つ。
卑怯だろうがなんだろうが、勝った方が正義なのだ……

戦争は。

「俺は弱い。
 だから本番で何の手助けもできない。
 その代わり、勝てそうな状況を事前に考える事ぐらいはできる」

戦争は無い方がいい。
だからと言って、軍事を疎かにしていいはずがない。

「いいか、特務隊がやられ様を見て、かっとなって出て来るんだ」
「……はい」
「それで、自分が勝ったら特務隊全員を救国の士として認めろ、とか、これほど厳しく審査するなら俺にも考えがある、とか……まあ、状況に応じてだな。
 他の騎士団の者が客席に多いようなら、二つ目の方が観客の共感を呼べる。
 逆に官吏ばかりであれば、一つ目の方が盛り上がる」
「……分かりました、状況に応じて」

仕掛けて来られたら、迎え撃たなければならない。
専守防衛を掲げただけで敵が寄って来ないようにするには、戦ったらただでは済まないと見せつける事も必要……

「まあ、俺は信じているがな。
 ギルならパッセルの一瞬を突ける、って」
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

【完結】ただの狼です?神の使いです??

野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい? 司祭×白狼(人間の姿になります) 神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。 全15話+おまけ+番外編 !地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください! 番外編更新中です。土日に更新します。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

処理中です...