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最後の学園生活
王子たちの殺伐
しおりを挟む一方その頃、第一寮裏ではギル・エバ・リュノの3人が集まって険しい顔をしていた。
そのただならぬ雰囲気に、他の学生たちは彼らを遠巻きに見ている……
「どうしたんだろうな、こんな時期に」
「エバ殿下がご卒業後すぐに戴冠されると聞いたが、その事だろうか」
「いや、リュノ殿下の事じゃないか?
今のところ、我が国からの叙爵は予定が無いと聞くぞ」
「ユバトゥスとの折衝が思うように進んでいないとか」
早めにこちらへ国籍を移す、と言っていたリュノ王子だが、本国がなかなか首を縦に振らない。
パッセルとの繋がり、ひいては西の辺境、そしてアルバトルスとの縁に関わるからだろう。
戦争をしたいわけでないからこそ、慎重にならざるを得ないと言ったところだ。
「全ては結婚後、という事か」
「なら交渉の作戦会議かもしれないな」
「ふむ……まあ、パッセル殿の仕事には、他国の人間では関わらせられない事が多いからな」
将来官吏を目指す学生たちは、彼らが何を話し合っているのか予想し合う。
今、国内の情勢はどうなっているのか。
外国との関係はどうなのか。
それをしっかり頭にいれておかなければ、どこの部署でも役立たずだ。
「ギル殿下が副王というお立場に不満を抱えておられる、という可能性は無いのか?」
「いや、殿下の率いる近衛特務隊は、パッセル殿から『救国の士』を引き継ぐと聞いたぞ」
「もしかしてそれがマズいのかもしれんな、エバ殿下としては」
あれこれと話し合いの内容を想像し、こっちはこっちで議論が白熱する。
だが、真相は……。
***
「……という訳で、決闘の再戦をだな」
「一対一でか?
救国の士を引き継ぐための決闘なら、こっちは特務隊全員で挑ませて貰いたいね」
「いや全員は無理だろ」
3人が話し合っているのは、決闘の方法だった。
パッセルに勝つか引き分けるか。
それが引継ぎの最低条件だ、との言い分に、ギル王子としては不満たらたらである。
「魔法有りなら、そっちに勝ち目があると」
「……弱点は聞いた。
この前のダンジョンで確認もした、だが」
魔法を唱えた直後の一瞬を突く。
言うのは簡単だが、出来るかどうかとなるとまた別の話だ。
そんな弱気な弟を見て、戦いには疎いはずのエバ王子が口を挟んだ。
「大丈夫だ、この前、研究所の協力で、王宮内の訓練所に学園の魔法教練所と同じ仕掛けを施した。
魔法使いを騎士として正式採用するなら、魔法の訓練も出来なければ話にならんだろう?」
「問題はそこじゃない、兄上」
ギル王子は速攻で反論したが、エバ王子はニヤリと笑って続けた。
「分かってるさ、俺が言いたいのは、だから魔法をどんどん使わせられるだろって事」
「まさか、魔力切れを狙うのか?」
「そのまさかだ」
「おいおい、それこそ現実的じゃないぞ」
パッセルの魔力は膨大だ。
それこそ、魔物を何百と倒せる量がある。
だがエバ王子は続ける。
「いいか、まず特務隊員との一対一を申し込む」
「決闘で?」
「いいや?救国の士に足るかどうかの最終試験をしてくれと頼むんだ」
「ほう?」
つまり、パッセルは隊員の数だけ戦う事になる。
特務隊員の数は20。
20試合もやれば合間の疲れを回復魔法で癒すだろうし、魔法剣との戦いとなればパッセルも魔法を使う可能性がある。
「それで最後にギルの出番だ。
特務隊員たちで少しでも魔法を使わせられれば、勝機は広がる」
「……卑怯だと思われないか?」
「そこはやり方次第だろ。
『部下をボコボコにされて上官が黙っているわけにはいかない』んだから」
「……なるほど?」
自分が戦いに向かないからこそ、知恵を絞って勝つ。
卑怯だろうがなんだろうが、勝った方が正義なのだ……
戦争は。
「俺は弱い。
だから本番で何の手助けもできない。
その代わり、勝てそうな状況を事前に考える事ぐらいはできる」
戦争は無い方がいい。
だからと言って、軍事を疎かにしていいはずがない。
「いいか、特務隊がやられ様を見て、かっとなって出て来るんだ」
「……はい」
「それで、自分が勝ったら特務隊全員を救国の士として認めろ、とか、これほど厳しく審査するなら俺にも考えがある、とか……まあ、状況に応じてだな。
他の騎士団の者が客席に多いようなら、二つ目の方が観客の共感を呼べる。
逆に官吏ばかりであれば、一つ目の方が盛り上がる」
「……分かりました、状況に応じて」
仕掛けて来られたら、迎え撃たなければならない。
専守防衛を掲げただけで敵が寄って来ないようにするには、戦ったらただでは済まないと見せつける事も必要……
「まあ、俺は信じているがな。
ギルならパッセルの一瞬を突ける、って」
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