話が違う2人

紫蘇

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ゲームの世界

最強村人・パッセル、始動

その時は突然訪れた。

地震だ。

「早く、外へ出なさい!」
「パッセル、急げ!」

そんな大げさな、と思った矢先、家の柱が嫌な音をたて始めた。

「まさか、潰れる…!?」

おいおい、地元じゃこのくらい揺れたうちに入らなかった…


うん?地元?


いや、地元はここのはずだが。
だって目の前に両親が、

あ!!

「危ない、父さん、母さん!」
「パッセル!!」
「駄目だ伏せろ!」

その時、大きな音がして…。



倒れかけた柱は両親直撃コースだった。
落ちてくる屋根で俺も圧死まっしぐらだった。

「……生きて、る?」

だがそうはならなかった。
何故か?

「…一体、何が…?」
「……分からない」

…答えは、俺が魔法に目覚めたからだ。



「…なんで急に?」
「……分からない」



屋根には大きな穴が開いた。
柱は俺たち家族がいた場所を避けて倒れた。

「分からない、でも、助かった…」
「そうだ、他の家は!?」

俺たち家族は慌てて外へ出た。
村はかなりの惨状で、潰れていない家の方が少ない。
何件かの家からは火が…!

「うわぁああん!母さん!」
「誰か、息子がまだ中に…!」
「父さん!父さん!」

そこら中から、叫び声が聞こえる。
俺は思わず走り出した。

「今助ける!待ってろ!!」

…そこから先は、そんなに覚えていない。
ただ潰れた家の屋根を吹きとばし、柱を吹きとばし、火には水をかけ、怪我人を引きずり出し…

「パッセル、頼む、うちの母ちゃんが」
「無理に動かすな!俺がそっちへ行く!」
「パッセル、うちの子の火傷も」
「泣いてるならまだ大丈夫だ!後で治す!」

必死で駆けまわった。
治れと祈り、時々叫んだ。
そうするうちに日が沈んで、異様に腹が減って、目が回って、それでも最後の一人まで…。

「う…う~~ん…」
「パッセル!?」
「パッセル!!」
「もう、むり……」

そうして、目を覚ました時には、村人全員が…

俺の事を、拝んでいた。

***

建築物倒壊率、ほぼ100%。
人的被害、ゼロ。

「パッセル様のおかげで、みな生きております」
「有難う御座います、パッセル様」

…恐ろしいことに、村人は全員無事だった。

俺が暫く寝込んでいる間に、みんなは潰れた家の中から食糧を探し出して炊き出しを行い、折れていない木材と燃えなかった布地でテントを張ってくれていた。

「母さん、俺…」
「お腹が空いたでしょう、パッセル。
 あなた4日間も寝ていたのよ」
「4日?」

4日…何だか中途半端だな。
普通こういう時は……

「ん?普、通……?」

俺はその時急に、前世を思い出した。
そうだ、パッセル。
どうしてその名前でピンと来なかったんだ。
自分の名前だからって、命まで賭けてプレイしたあのゲームの事を今の今まで思い出さなかったんだ。

「馬鹿だな、俺…」

そうだ、パッセル。
ココ村のパッセル。

俺が大好きだったゲーム、「わたしの箱庭」。
そのシリーズ最初の作品で、プレイヤーの手足となる村人。
そして、何気に全シリーズ皆勤賞の村人。

そして俺は、そのココ村のパッセルに…!

「お釈迦様の、お導き…か?」

そうだ、死ぬ前に祈ったんだ。
仏様に…どうか次は、戦争の無い世界に、って…。

「何という粋な計らい…有難う御座います」

俺は手を合わせ、自分の中にある仏様に祈った。
その姿を見ていた村人たちが、ますます俺を神様の使いだと思い込むようになるとは…

その時には、考えもしなかった。


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