話が違う2人

紫蘇

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二つの世界が出会う時

【クレイド】三男坊だからさぁー

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俺、クレイド・モンタルヌスはアルファである。
兄貴たちもアルファである。

モンタルヌス家は地方貴族で、領地を治める仕事をしている「領主」だ。
領主の仕事は一番上の兄貴が継ぐ。

領地で地場産業をおこしたりもする。
が…それは二番目の兄貴と、いとこがやってる。
いとこは3人ともベータだけど、優秀だし、何より3人の連携がすごいから…
俺の出る幕なんて無し。

つまり、俺は自力で身を立てるしかないわけだ。
だって今のところ何も継げるもの無いしさ。
だから、学園でどっかの偉いさんとコネ作って事業を興すか、中央官吏を目指すか、騎士団に入るか…。

「は~あ…」

そん時の俺は、13歳で地方の中等部に入ったばかりなのに、もう次の進路に悩まされていた。
貴族の子は16歳になったら「王立アルカ学園」の高等部に通うのが決まりだ。
問題はそこで一体何科を選択すべきか…

アルカ学園では、アルファの高等部生は一般の授業を受けつつも進路に合わせた専科の授業も受けなきゃならないんだ。

身を立てるってんなら、やっぱ商業科かなぁ…なんて、あんまり気が乗らないけど、考えたりしててさ。

でもある日、親父が真剣な顔で言ったんだ。

「クレイド、専科選択の事なんだが…。
 お前が入学した一年後から、パッセル様も学園へ通って頂かねばならん。
 だから彼の方が無事卒業するまで…いや、した後も…危険な目に合ったり、どこかの貴族に囲われたりしないよう、守る者が必要だ」
「うん」

親父は養子にしたパッセルの事を、モンタルヌス家の救世主として扱っている。

その事には俺も異存は無い。

だって、魔法を使って畑を直したり、風でめちゃくちゃになった果樹園を元へ戻したり、洪水で流された家を建て直したり、村を襲う魔物を退治したり…
怪我人を治療してくれたり。

俺も途中から同行したけれど、なるほど魔法はこういう事にも使えるのか…と、目から鱗がポロポロ落ちた。

災害で痛めつけられた領地や領民を救ってくれた。
その上、川に堤防を作って、先の災害への対策までしてくれた。
彼を慕って集まった人々に知恵を惜しまず与え、防災団まで作り上げた。

更には周辺の領にまでその防災団を率いていって、力を振るった。
そして、そこの領にも防災団を作った。

災害が来る事を前提に、どうすれば被害を最小限に出来るかを皆が考えるようになるきっかけをくれたんだ。

そんな人を救世主と呼ばずして何と呼ぶのか…。


…けどパッセル本人はそういった扱いが嫌らしく敬称も敬語も辞めてくれと言う。

飯もパンとスープだけで良いと言うし、小遣いで贅沢もしない。
丁寧な口調だし、困り事を相談すればどんな小さなことでも親身になってくれる。

そう、彼は救世主として相応しい人格も持っていたんだ。

偉ぶるところもないし、逆に文字を教えてくれと俺や兄貴たちに頭を下げたり。

そんなパッセルを見ているうちに、俺たち家族の頭からは「アルファだ~貴族だ~」みたいなのが吹き飛んじまった。

俺もどっかで、自分は偉い人間だって思ってたけど…
正直、パッセルには敵わなかった。


「彼の方の能力や知識を、どこか一つのに独占されたら国家の損失になる。
 そこまではわかるな?」
「うん」

読み書きも出来ないのにこれほどの知識と魔法の技術を持っているなんて、あまりに奇跡的だった。

「それと…これは、もうお前も気づいているかもしれんが、パッセル様は…オメガだ」
「え!?」

いや、気が付いてもいないし、というか、パッセルのバース性なんか気にした事も無かったからさ。
めちゃくちゃびっくりした。
だって、オメガって母さんみたいな人だろ?
基本家の中で出来る仕事の人っていうか…
外に出ないイメージだったからさ。

それで…それから、親父はちょっと闇深な話をしてくれた。

「だが、アルカ学園の理事会は、多分パッセル様をオメガだとは認めない。
 強制的にアルファクラスに編入させられるはずだ」
「はぁ!?なんでよ!?」
「…中央ではな、んだ」
「……うん?」
「つまりだな…」

親父によると、中央ではアルファが功績を上げるのは良いが、ベータや、ましてオメガが功績を上げるなどもっての他。
アルファ以外の人間があげた功績は、勝手にアルファのものに改ざんされる…

既に功績をあげた人間の事が広まってしまっている場合は、その人のバース性を偽る事によって、だ。

「優れた功績をあげたパッセル様は、本来のバース性はどうあれ『アルファ』として扱われるだろう。
 既にかなりの領から、魔法工法・魔法農法の視察が来ている。
 もう功績は隠しようがない。
 特に筋交い…少しでも地震に強い家を、という情熱をお止めする事は出来なかったからな」
「…なるほど、で?」
「嫌でなければ、騎士科を選択してくれんか…
 騎士ならば、王家に近い場所ででも働ける。
 学園を卒業してからも、パッセル殿を守る事ができる…だから、頼む」

親父が俺ら息子に頭を下げるなんて、今まで無かった事だ。
かなり切羽詰まっているんだな…
パッセルをよこせって遠回しにそこら中から圧かかってるの、知ってるし。

「いいよ」
「本当か!?ありがとうクレイド…!!
 大変な事を押し付けてすまないが…
 パッセル様を、守ってくれ」

…んで、一応騎士科を希望して通ってるんだけどさ。

パッセル自身が結構強いんだ。
魔法も使えるし、魔物退治だってやってたし。
財布をすろうとした奴を投げ飛ばしたっていう逸話もあるし。

おまけに、策謀に引っかからない頭の回転の速さ…
貴族だろうと物怖じせず堂々と渡り合えてる。
だから…俺が何かする必要は無さそうなんだけど、さ。

「…クレイド兄、どうやら…来た、ようで」
「おいおいマジか!分かった、すぐ部屋へ運ぶからな」

発情期は、何にも出来なくなっちまうから。
だから、そういう時は俺の出番…
まだ発情期が安定しないパッセルを、しっかり部屋に閉じ込めて、扉の外で誰も入って来ないように見張るんだ。

絶対に誰も入れない。
それこそ、王子様でも、王様でもだ。
ただ一人、フェリスを除いては…。

「…クレイド殿、パッセルの様子を見に来ました」
「ああ、頼む」

フェリスはオメガだし、実家と仲が良くない。
父親にパッセルを売るような事は無いだろう。

「パッセル…新しい配合の、抑制ポーション、作ってきたよ」
「んっ…あ、ありが、たい…」

……それに、パッセルとは随分仲も良いし。
オメガ同士で恋愛…って可能性も、無くはない。

何だか胸がザワザワする話だけどな!
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