話が違う2人

紫蘇

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あがく世界

第一寮裏の実験

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リュノ王子がパッセルを強く抱きしめて、言う。

「…じゃあ、噛んでみるぞ」
「お願いします」

幾分か緊張した声でパッセルが応え、王子がゆっくりとパッセルの首に口を近づけ…

「……うっ……」

口を開け、

「…ふ、ぅ…っ…」

かぷり、とそこへ噛みつく

「んうぅっ…あっ、く…!」

パッセルが小さな声で喘ぐ。
顔は赤く染まり、表情は苦悶。

「…っ、う、ぐ…」

リュノ王子がネックガード越しにパッセルの項に噛みつくのを、勉強会に集まった全員で見守る。
今まで見た事の無いパッセルの表情に、全員が固唾を飲む。

そうして、やがてゆっくりと王子の口がパッセルの首元から離れ…
力が入らないのか、パッセルはぐったりと王子に支えられて何とか立っている状態になる。

フェリスとクレイドが慌てて駆け寄る。

「っ、大丈夫!?パッセル!」
「は、はは…ええ、少しですが…何か掴めた気がします」

いつもより少し弱々しいけれどいつもと同じ口調で、パッセルが言う。
フェリスは矢継ぎ早に次の話をする。

「変になった所は無い?
 ねえクレイド、パッセルの匂いが強くなってるとか弱くなってるとか、分かる?」
「ああ、噛まれた瞬間はかなり濃くなったが、今は普通ぐらいかな」
「そうなんだ…良かった。
 僕は逆にリュノ殿下の匂いに注目してみていたけど、そっちは口を開けた時から濃くなったよ」

つまり、アルファとオメガでは誘引香フェロモンの使い方が異なるという事だ。
一方はより強く相手を惹き付ける為に、もう一方は相手に自分の香りを強く意識させる為に…

「なるほど、それで噛まれる前に酔った様な気分になるのですね」
「酔う?誘引香に?」
「ええ、強引に鼻の中へねじ込まれるような…」

開けた場所でも、これほど香るのだ。
密室であれば完全に…。

「噛む前にこの香りを強く印象付け、この後の行為をより特別なものにする…
 つまり一つは、強烈な刷り込みだ」
「…なるほど」

契約によって縛られるのはオメガだけ。
番のアルファ以外では満足できなくなるのは、その日に味わった強烈な快楽を覚えているからかもしれない。
セックスの快楽というのはその時のメンタルによるところが大きい…

パッセルの前世の経験によれば。

…パッセルはリュノ王子の腕からそっと抜け出すと、エバ王子に耳打ちした。

「…まずは『刷り込み』という仮説から検証していきましょう」
「どうやって?」
「…傷痕が残っていれば、いつでもこの『契約』を思い出させる事が出来る。
 目視はもちろん、手触りに拠っても。
 という事は、傷痕を完全に消せば一つは解消される…かも、しれません」
「…母上を、救う事はできそうか」
「まだ分かりません。
 ですが、実験にご協力願えるなら是非に」
「…分かった、話してみる」

パッセルとエバ王子は小さく頷き合い…
その姿に、リュノ王子とオヴィスが盛大に嫉妬をしたのは言うまでも無い。

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