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あがく世界
【オヴィス】僕だって、できるもん!
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パッセルさんを浴室に案内して、暫く外で待つ。
窓の外を見ると、明らかに異質な馬車が1台停まっている。
「きっと、エイギルフェルド王子だ」
こんなところに来てまで…
ううん、一番狙いやすい、僕と僕の家族が一緒にいるところを狙いに来たんだ。
どの派閥も、パッセルさんに直接手を出せないってアラウダ様から聞いた。
理由はすごく簡単で、本人が強いからだ。
僕も道中で見たんだ。
どんな魔物が出ても冷静沈着。
即座に弱点になる魔法を撃って、それで魔物を動けなくして騎士さんに後をお任せしつつ、他に出てきた小さな魔物を残らず退治してしまう。
もちろん剣だって使える。
魔法が効かない魔物も、レイピアで一撃だ。
きっと一人でだって戦えるんだろうけど、敢えて騎手さんに花を持たせてあげる…というか、色んな魔物を倒す経験を積ませてあげてるんだ。
「今回付いてきた騎士さんは、みんな新人さんだって言ってたもんな」
パッセルさんにとっては、騎士さんも生徒なんだ。
騎士団にとっても、パッセルさんは安心して実地訓練を任せられる相手って感じなのかも…
だけど。
「…新人さんは、第二王子が来たら断れないよね」
きっと新人さんばかり付いてるのも、エイギルフェルド殿下の策略なんだ。
だってエバ様やフェリス様が、随分前からパッセルさんを狙ってるって言ってたもん。
そしてパッセルさんはずっとそれを躱し続けてるんだ、って、アラウダ様からも聞いたし。
そんなパッセルさんがわざわざ「第二王子の言う通りにしろ」って言うんだから、その方が良いんだろう。
僕も、僕の家族も、護衛に付いてきた騎士さん達も、みんな無事にいられる方法なんだろう。
「だけど…僕だって」
僕は…弱い。
魔法も、剣も、使えない。
だけど、僕にだって何か…
そうして悩んでいると、浴室の扉が開いてパッセルさんが出てきた。
「お待たせしました、オヴィス殿」
「えっ、いや、それほどじゃ…」
僕は、見てしまった。
支度をして出てきたパッセルさんの首には…
ネックガードが、無い。
…僕は思った。
パッセルさんは自分を犠牲にする気だ、って。
だって、本来、番契約をするのは、セックスの真っ最中、絶頂の手前…
僕はそう習ったし、学園の教科書にも書かれてる。
噛まれた時に放たれた精は、強い着床力を持っている…とも。
つまりパッセルさんは、僕らを守るために、好きでもない人に抱かれて、子どもまで孕まされるのを受け入れるつもりなんだ、って……
「…駄目だよ、そんなの」
「何がです?」
実験の一環だなんて、嘘。
だってそんなの、帰ってからリュノ王子に頼んだほうがずっといいに決まってる。
上書きしてもらうって事は、一度汚されるって事と同じじゃないか!
僕は、パッセルさんの言う通りにしたくない。
何の抵抗もしないで、ただやられるなんて…そんなパッセルさん、見たくない。
僕だって、何かは出来るはずだ!
だからとりあえず、項を守るためには…
「パッセルさん、ネックガード、付けてください」
「…何故です?」
な、なぜって…ええっと、そうだ!
「その…、父だって一応、アルファなので…その、父の、プライド?っていうのもあるというか…ネックガードをするまでもないアルファだって思われてるって勘ぐっちゃって、落ち込んじゃうかも…、その!ただでさえ、知らない借金の事で落ち込んでるし!だから…これ以上、落ち込んじゃったら…」
「……ふむ」
…本当は、そんなプライド父さんには無い。
だって、今も昔もずっと、自分はベータだと思ってるんだから。
けど、家族を引き合いに出せば、パッセルさんは引くと思った。
理屈じゃ絶対に勝てない相手だから、感情とか気持ちで攻めるしかない。
例えそれが嘘でも…!
「……なるほど、そういう……
であれば、着けた方が良いですね」
「ええ、せめて晩餐会の間だけでも」
「分かりました」
…パッセルさんは外したネックガードを浴室へ取りに戻ってくれた。
「…これで少しは、時間が稼げる」
たった1~2分の事かもしれない。
だけど、その間に僕が出来る事はきっとある。
考えろ…
考えるんだ!
窓の外を見ると、明らかに異質な馬車が1台停まっている。
「きっと、エイギルフェルド王子だ」
こんなところに来てまで…
ううん、一番狙いやすい、僕と僕の家族が一緒にいるところを狙いに来たんだ。
どの派閥も、パッセルさんに直接手を出せないってアラウダ様から聞いた。
理由はすごく簡単で、本人が強いからだ。
僕も道中で見たんだ。
どんな魔物が出ても冷静沈着。
即座に弱点になる魔法を撃って、それで魔物を動けなくして騎士さんに後をお任せしつつ、他に出てきた小さな魔物を残らず退治してしまう。
もちろん剣だって使える。
魔法が効かない魔物も、レイピアで一撃だ。
きっと一人でだって戦えるんだろうけど、敢えて騎手さんに花を持たせてあげる…というか、色んな魔物を倒す経験を積ませてあげてるんだ。
「今回付いてきた騎士さんは、みんな新人さんだって言ってたもんな」
パッセルさんにとっては、騎士さんも生徒なんだ。
騎士団にとっても、パッセルさんは安心して実地訓練を任せられる相手って感じなのかも…
だけど。
「…新人さんは、第二王子が来たら断れないよね」
きっと新人さんばかり付いてるのも、エイギルフェルド殿下の策略なんだ。
だってエバ様やフェリス様が、随分前からパッセルさんを狙ってるって言ってたもん。
そしてパッセルさんはずっとそれを躱し続けてるんだ、って、アラウダ様からも聞いたし。
そんなパッセルさんがわざわざ「第二王子の言う通りにしろ」って言うんだから、その方が良いんだろう。
僕も、僕の家族も、護衛に付いてきた騎士さん達も、みんな無事にいられる方法なんだろう。
「だけど…僕だって」
僕は…弱い。
魔法も、剣も、使えない。
だけど、僕にだって何か…
そうして悩んでいると、浴室の扉が開いてパッセルさんが出てきた。
「お待たせしました、オヴィス殿」
「えっ、いや、それほどじゃ…」
僕は、見てしまった。
支度をして出てきたパッセルさんの首には…
ネックガードが、無い。
…僕は思った。
パッセルさんは自分を犠牲にする気だ、って。
だって、本来、番契約をするのは、セックスの真っ最中、絶頂の手前…
僕はそう習ったし、学園の教科書にも書かれてる。
噛まれた時に放たれた精は、強い着床力を持っている…とも。
つまりパッセルさんは、僕らを守るために、好きでもない人に抱かれて、子どもまで孕まされるのを受け入れるつもりなんだ、って……
「…駄目だよ、そんなの」
「何がです?」
実験の一環だなんて、嘘。
だってそんなの、帰ってからリュノ王子に頼んだほうがずっといいに決まってる。
上書きしてもらうって事は、一度汚されるって事と同じじゃないか!
僕は、パッセルさんの言う通りにしたくない。
何の抵抗もしないで、ただやられるなんて…そんなパッセルさん、見たくない。
僕だって、何かは出来るはずだ!
だからとりあえず、項を守るためには…
「パッセルさん、ネックガード、付けてください」
「…何故です?」
な、なぜって…ええっと、そうだ!
「その…、父だって一応、アルファなので…その、父の、プライド?っていうのもあるというか…ネックガードをするまでもないアルファだって思われてるって勘ぐっちゃって、落ち込んじゃうかも…、その!ただでさえ、知らない借金の事で落ち込んでるし!だから…これ以上、落ち込んじゃったら…」
「……ふむ」
…本当は、そんなプライド父さんには無い。
だって、今も昔もずっと、自分はベータだと思ってるんだから。
けど、家族を引き合いに出せば、パッセルさんは引くと思った。
理屈じゃ絶対に勝てない相手だから、感情とか気持ちで攻めるしかない。
例えそれが嘘でも…!
「……なるほど、そういう……
であれば、着けた方が良いですね」
「ええ、せめて晩餐会の間だけでも」
「分かりました」
…パッセルさんは外したネックガードを浴室へ取りに戻ってくれた。
「…これで少しは、時間が稼げる」
たった1~2分の事かもしれない。
だけど、その間に僕が出来る事はきっとある。
考えろ…
考えるんだ!
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