話が違う2人

紫蘇

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あがく世界

【閑話】やりなおしの、初恋 ※

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「…、ふぅ…」

あの不思議な治療を受けてから、初めての発情期だ。
今まではただ、一人で耐える事しか出来なかった。
何とか、あの男のシャツを一枚だけ頼んで…

そんなもの、何の足しにもならないけれど。

そもそも、僕はあの男を愛してはいない。
今も昔も、愛しているのはたった一人…

「…王妃殿下、陛下のお召し物を借りて参ります」
「ううん、要らない」
「ですが、少しでも楽になられるのなら…」
「いい、苦しくてもいい。
 君が側にいて…僕を、慰めて、くれたら」

ずっと僕の事を守ってくれた、近衛騎士のヴェスパ。
僕と同い年で、初等部からずっと同じ学校で学んできた幼馴染。
僕がオメガだって分かった時、お金を貯めて俺がお前をもらう…って言って、僕のファーストキスを奪った人。

彼の実家のマンダリニア子爵家は、彼の為にお金を用意してはくれなかったから…
彼の兄の為に払う結納金で精一杯で。

それに、僕の実家は貧しくて、弟たちの進学の為に僕の結納金を当てにしていた。
だから一番お金を積んでくれる家に嫁ぐ事が決まって…

僕の顔を気に入った、とある伯爵家に嫁ぐ事が決まった。

そして、ヴェスパが僕を娶るためには、かなりの金額が必要になってしまった。
有力貴族ですら難しいその額を、学生の身分で稼げるはずも無くて…。

せめて学生の間だけは…と、隠れて逢瀬を繰り返して。
好きでもない男に噛まれる前にと、初めても捧げた。

分かってたよ、婚約者に対する裏切りだって。

だけど婚約者だって、僕を放置して他の人と遊んでいたし…何より、僕の事を奴隷みたいに扱った。
気に入らない事があれば殴られた。
憂さ晴らししたい時にも殴られた。
そのくせ、僕より幼い男の子を何人も侍らせて、彼らの事は散々甘やかしてた。
彼らにも僕を虐める様に指示して…。

結婚したら、どんな地獄が待っているんだろうって。
だったら思い残す事が無い様に…
彼と、セックスをしたんだ。

だけど、どういう訳か、王様…当時は王子様だったんだけど、奴に目をつけられて。
無理矢理、倉庫へ閉じ込められて、発情させられて、犯されて…
ネックガードを切られて、項まで噛まれた。

そして、エバを身ごもってしまったんだ…

それを知った当時の王様は、醜聞を無かった事にするために、僕を急遽、奴と結婚させる事にした。
奴には婚約者の女性がいたけれど、それを解消して、男の僕と結婚させたんだ。

奴は「男なんか抱けるか!」と騒いでいたけど、実際に男を強姦して孕ませてるんだから説得力は無いよね。

…ま、どうせ地獄が待ってるだけだったから、この程度の地獄はどうって事無かったよ。
暴力は無かったし。
だけど、奴は精神的な嫌がらせだけは上手くてさ。
騎士になりたてのヴェスパを、僕の護衛にしたんだ。

それで、発情期の度に部屋の中へ彼を招き入れて…。

愛した男の前で犯される気分はどうだ?って、毎度毎度最低な気分だった。
抱かなくなったら抱かなくなったで、愛する男の前で他の男の精を求める気分はどうだ?って、一緒に離宮へ押し込められたしね。


でも、それが…まさか良い方へ転じるなんて、誰が思っただろう?


「あのね、ヴェスパ。
 僕、とある実験に参加してるんだ。
 だからその実験が成功しているか、知りたいの」
「…それは、どんな実験です?」
「番契約を解消する実験」
「なんだって!?」

ヴェスパが、びっくりしている。
そうだよね、ぼくもびっくりだもの。
ヴェスパの誘引香を、感じられるようになってるなんて…。

「しーっ…ふふ、信じられないでしょ?
 僕も、半信半疑なんだ。
 だから…成功してるか、試したいんだ」

番契約が本当に解除されているとしたら、彼の誘引香を心地よく感じられるようになっているはず、でしょ?

僕はそう言って、ヴェスパの手をそっと握る。

侍従もメイドも、これから一週間はこの部屋へ近づかない様に命じた。

…まあそんな事をしなくても、彼らは王に僕の事を売ったりしないんだけどね。
彼らもあいつに辟易してるから。

「…ねぇ、抱いて」
「ああ…分かった、気分が悪くなったら、言うんだぞ」
「うん…」

ヴェスパの顔が近づく。
僕はそっと目を閉じる…

あの時のキスが、蘇る。
彼の匂いが、僕を優しく包んで…
少しずつ激しくなるキスに、あの時の…

初めてを彼に捧げた日を思い出す。

「ぁ…ん」
「大丈夫か?アルス」
「うん…すごい、本当に…効いてる」
「本当か?」
「うん…だから、ヴェスパ」
「ああ、本当にまた、君を抱けるんだな…」

今度は僕の方から、ヴェスパに口づける。
もっと…もっと、今まで我慢してきたぶん、全部…

「んっ……、はふ……ん」

激しくなるキス、彼の唾液の味、舌の動き…
あの日みたいに、少しおっかなびっくりで。

「…尖りに、触れてみて良いか?」
「うん、いっぱい、して…上書き、して、今日から、ずっと…!」

胸の先に触れられると、そこから今までに感じた事の無い幸福感が生まれる。
そうだ、僕は彼と、ずっと…!

「ね、もっと、はげしく、して」
「ああ、分かった」
「あっ…ああっ、愛してるっ…ヴェスパ」

好き…、愛してる、そして、嬉しい。
本当にあの男から自由になったんだ、僕は!

「ね…、おねがい、胸の先にも、キスして…」
「ああ…仰せのままに、アルス」

彼の口が、僕の胸の突起を捉える。優しく食んで、舌で転がされて、吸い上げられて…
右手は僕の芯を優しく扱き上げ、左手は僕のお尻を撫でる。

「あっ、あんっ…!あ、あ、あいしてっ」
「ああ、俺も、君をずっと愛してた…!」

右の胸も、左の胸も、ちゅうちゅうと吸われる。
彼の誘引香が強くなる…きっと、僕のも。

だけどもう、気持ち悪くなることも無い。
もっともっと嗅ぎたい、もっともっと…

この香りに、乱れたい。

「…アルス、いいか」

ついに、彼の両手が、僕の膝を割り開く。

「うん…いっぱい、突いて。
 いっぱい、中に出して…!」



僕は、後ろに彼の質量を感じながら何度も達する。

そして、そのまま発情期を迎えた僕は…

今までを取り戻すように、求めあった。

ヴェスパの子を孕んだって、かまうもんか。
あんな奴、こっちから、願い下げだ…!!



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