話が違う2人

紫蘇

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合わさる世界

最悪のボス

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全員が体内チェックを終え、パッセルが淡々とマンガ肉の残りを食べるのをこれまた全員でぼんやりと見守り……。
パッセルが補給を終えて一息ついたところで、誰かが言った。

「……行くか」
「……そうですね、進まないと」
「……行きたくないな」
「……腹を括るしかないですね」
「……さっさと終わらせましょう」
「……そうだね」

次はボス…この層で最も強く、……大きい魔物と戦うことになるだろう。

騎士たちが多少げんなりした気分を漂わせる中、エンカウント直後に魔法をぶっ放そう、とパッセルとフェリスが話し合う。

「今のところ魔法を吸収したり反射する敵はいませんが、試しにちょっと撃ってみてからにしましょう」
「うん、まずは軽く…だね。
 このフロアで出て来た奴の傾向からすると、火はあんまり効かないっぽい」
「水もいまいちでしたから、って事は風…ですかね…」
「そう言えば、クレイドが雷使ってた気がする。
 ねえクレイド!あのキモいの、雷効いた?」

フェリスは騎士たちを何とか鼓舞しようと声を掛けまくっていたクレイドに話しかけた。

「あー……効いたかどうかで言うと、怪しいな。
 結局、下側に潜り込んで腹を裂くのが一番効くんだわ…ほら、リュノ殿下が滑り込み様に攻撃する方法、編み出しただろ、あれ」
「あれに慣れた頃から一気に形勢が逆転しましたもんね」
「あれを魔法でやれたら、大分楽になるという事ですか?」
「ああ、だが同時にあの血がドバっと出てきたら…」
「それを一気に水で流せばどうかな?」

と言っても、同じ傾向の……あの気持ち悪いのの大きい版が出て来ればの話だ。
まったく別の形をしたボスの可能性も……

「……とにかく、行くしかないですね」
「ああ、やろう」

……全員が覚悟を決め、部屋を出る。
どんな奴が出てくるかと想像しながら……。


***


通路を通り、広間の手前で様子を伺うと、もうすでにボスらしき生き物がスタンバイしていた。

「やっぱりアレの大きい奴じゃん…」
「でも、腕が人間っぽくなってますよ」
「八本あるけどね」
「細くて長いですしね」
「胴体も…太り過ぎだろ、あれ動くのか?」

ブヨブヨした鏡餅型の巨大な…異形だ。
水玉模様はこのフロアで出て来た奇怪な生物と同じだが、無駄にカラフルでところどころ怪しく光っている。

「……芋虫みたいな短い脚がついてますね」
「下へ潜り込むのは無理だな…」

怪しく光るたびに、べちょ、という音が聞こえる。
その度に奴は床の上から何かを拾い上げ……

「おい、あいつ何か食ってるぞ」
「え、あ……うわぁ」

フロアで出て来たあの気持ち悪いのと似た奴を、くっちゃくっちゃと食べている……ように、見える。

だとすれば……

「……共喰いか」
「って事は、これが暴走の原因?」

魔物だって生き物だ。
自分の上司に食われる職場からは逃げ出したいのが本能だろう。
どういう食物連鎖がこの中で成立しているのかは謎だが、ここから上の層は奴らの牧場だったのかもしれない。

増やして食って、増やして食って……
自分らが増えるに従って、食い物を増やして、そして増えて…増やして、増えすぎて、増やし過ぎて、何かが起きるのだとしたら……

「こういうのを倒せば、ちょっとはましになるのかな」
「なるといいですね……では、ちょっと魔法、撃ってみます」
「ああ、何で行く?」
「……軽く、水で」

水であれば、魔法が跳ね返ってきたとしても大したダメージにはならない。
そう踏んで、まずは小手調べ……

「……飛べ、水の玉!」

パッセルが打ち出した水の玉が、奴の腹にべちゃっと当たる。

「ギュベ?」

どうやら魔法は通るらしい事が分かる、と同時に……

「気づいた!」
「…………行きます!
 駆けろ風刃!5層・5連!!」

パッセルは広間へと駆け、渾身の風魔法を放つ。
その風魔法を目晦まし代わりに、騎士が壁際に展開する。
パッセルの出した鎌鼬がボスの腹を5連続で切り裂く、噴き出す紫色の血……

フェリスが叫ぶ!

「大・水・洗!!」

水洗トイレを大で流した時のような水流が、床へドバンと流れ出す。
その水流で、ボスの足が取られ、横倒しに…

「ならない!!」
「あの形状ですからね!!頭まで何とか駆け上がれれば、」
「それには腕が邪魔だ!!」

騎士が奴の腕を何とかしようと、剣を構えて走り出す。
だが当然、そう簡単にいく話ではない。

「く、腕まで届かん!」
「あの体を上るしかない…どうする!?」

騎士たちが一旦壁際まで後退する。
奴が腕を振り回す。
振り回しながら、何かを投げつけてくる、避ける、割れる、そこから出るのはどろりとした液体と…

「アレのちっちゃいの出て来た!!」
「まさか、卵も産むのか!?」
「つか中身よく生きてんな!?」

生まれたての奇怪生物を、騎士が叩く。
叩きつつ、腕を避け、その腕に斬りつける、動きはそれほど速くない…!

「腕!ピンポイントで、落とします!」
「頼んだパッセル!」
「誰か、奴の動きを」
「任せて!…くらえ、毒ポーーーション!!」

フェリスは水魔法を使い、瓶に入った薬品を敵の頭にヒットさせる。

「ビャビャギョォーーーー!」

どうやら毒が目に入ったようだ。
いまいち目の数は数えられないが、それでも腕を振り回すのが止まった…

「行きますよみなさん!!
 風・太刀・断、八連撃ーーー!」

パッセルが叫ぶ。
のこり魔力の全部を掛けて、一本、一本、腕が千切れ…

「後は、頼みました…!」
「「おおお!!!」」

騎士たちが一斉に化物に飛び掛かる。
一人が腹に刺した剣を足場に、また一人が剣を刺し、その剣を駆け上り、脳天に剣を刺したのは…

「オギョァアアーーーー!!」
「ギル殿下!!」

暴れる魔物に逆らわず、ギル王子は剣を手放し、受け身を取りながら床へと転がり落ちる。
そして叫ぶ。

「クレイド!あれに雷を落とせ!!」

クレイドは滅多に魔法を単独で使う事は無い。
このダンジョンの中でも、魔法は剣に纏わせる方法でしか使って来なかった。
それでも。

「了解!……落・雷!!」

誰一人、彼が成功する事を疑うものは無かった。
そして当然の様に…

雷光が走り。
ズパン、という音が響き。
それがギル王子の剣に落ち。

「オギャァアアーーーー!!」

フロア一杯に、雄叫びが響く。
だがそれはまだ……

「やばい、全員、伏せろ!!」

リュノ王子の号令が響く。
瞬間的に全員が体を床に付け……!!

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