話が違う2人

紫蘇

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合わさる世界

そして地上へ

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マンティコアやキマイラやヘルハウンドが跋扈する層のボスは、虎の背中にコウモリの羽が4枚、お尻に蛇が8匹生えた「まともな」オリジナル魔物だった。

ただ、時々火を吐くのが困りもので、水魔法が大活躍したぐらいの事だ。

「あの奇怪生物に比べると、楽な方でしたね」
「本当にね!」
「あれが表に出て来ていたら、アルバトルスは終わってしまっただろうな」
「まるで恐怖の大王ですね」
「あ、それ……」

パッセルのノストラダムス的表現に、誰もがツッコミも入れず頷いている。

……フェリスはここに来て思った。
RPGのパッセルも、こういうネタを会話に潜り込ませるタイプなのではないか、と。
現にここへ来て、前世がある事を悟られかけているのにお構いなしなのだ。

ちなみに、ノストラダムスは「1999年7の月に世界は滅亡する」と予言人だ。
解釈次第でどうとでもなる「詩」に、青少年たちは怯え、どうせ死ぬならと貯金を使い果たした愚か者まで出る始末……

若い子は知らなくても良い話である。

18で死んだ叶が知っていたのは、偶然動画で見たからだ。
彼が亡くなる少し前に「2025年日本滅亡説」が流布し、その「予言と言えば」で出て来たのだ。
その2025年を迎える事無く、叶は亡くなってしまったが……。

「……何で小説の方には寄らないんだろう」

もしかして、呼ぶ人間が誰でも良かったわけでは無いのかもしれない。
「わたしの箱庭」フリークで、かつ様々なゲームの知識があって、度胸があって、思考が柔軟で……と、条件を絞っていったら彼しかいなかったのでは?
という事は…「小説」の知らない所で「ゲーム」たちが結託している……?

「……もう、良く分かんないな」

あまりメタな事を考えても仕方が無い。
ありのままを受け入れていくので精一杯だ。

「それにしても、3つの世界の共通点、か」

パッセルが忙しい理由も、多種多様な能力を持っている理由も、そこにあるのかもしれない……。
そんな事を考えながら、フェリスは1つ上の層への階段を上った。

***

1つ、また1つ。
ボスを倒し階段を上り、ついに地上へ着いた。

「う~、明るい!」
「広い入口だな~!」

全員無事で出てこられた事に、全員が安堵する。
しかし……。

「もしかしてあれ、最初に入った入口がある小山?」
「馬鹿な、あれほど歩いたのにか?
 目視できる範囲内にあるなんておかしいだろ」
「ああ、体感で2~3日は中にいたしな」

セーフルームがあるたびに長時間の休憩を取ったり、ボス部屋でマンガ肉を焼いたりはした。
交代でちょっとずつ仮眠を取ったりもした。
だが、それ以外の時間はほぼ前進する事に使ったのだ。
もしかしたら、国境近くまで来ているかも、国境を越えているかも、なんて考えながら進んできたのだ。
それが、まさか……この、距離?

「試しに行ってみれば分かるのではありませんか?
 野営道具一式を入口に置いて来たでしょう」
「……そうだな、
 おい!体力のある者で見に行ってくれ」
「「はっ!」」

ギル王子の命令で、クレイドと数名の騎士たちがその小山の方へ向かう。
残った方はその間に入口付近を探索し、攻撃的な魔物がいないか確認して回る。
そしてフェリスは、試しにひとつ実験をする。

「……出来ないね、やっぱり」
「出来ませんか、やっぱり」
「うん、あの中では別の法則が働いてるみたい」
「という事は、あの中丸々異世界という事ですね」
「そう言ってもいいかもしれないね」

薬草を握って魔力を通しても、何も起きないのだ。
世界が変わってしまった、という事は無いらしい。

「一安心ってとこかな」
「そうですね……ただ、西の辺境に入植した後は、ここの管理も大事になりますね」
「あ~、そっかぁ、大変だ」

ダンジョンの管理なんて、小説にも農地経営SLGにも出て来なかった要素だ。
完全な手探り状態になるだろうが、魔物に滅ぼされる未来は防がなくてはならない。

「ダンジョン管理人かぁ……」
「ここへ定期的に潜る事を考えると、今から頭が痛いですね」

ただ、この一連の出来事でクレイドには立派な功績が出来た。
カヌス伯爵にも大きな恩を売れたし、後は東の辺境伯を納得させれば……。

「まあ、細かい事は兄上にお任せしましょう。
 未来の辺境伯ですし」

災害をダシにしているようで心苦しいが、綺麗事ばかりではやっていけない。
生きている人間は生きて行かなければならないのだ。

生きる事は綺麗事では無い。
それと同じ事だ、とパッセルは一人頷き……

「魔物、確認出来ません!」
「なら一安心ですね」

休憩の為、リュックの中から取り出したポットに魔法で水を入れた。

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