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合わさる世界
帰還の日
しおりを挟む16名のダンジョン捜索隊が戻ってから1ヶ月。
大量の「推定:魔石」を前に、パッセルと災害救助隊のメンバーたちは話し合った。
「結構集まりましたね」
「はい、これでいくらかご支援のお礼ができそうです」
「どこからどれだけのご支援を頂いたかは、王都の方で管理して下さっているはずですから、そちらから贈るという事で宜しいですか?」
「はい!」
王都から来た支援団は、時々壁の外へ出て「推定:魔石」を集めたり、魔物の狩り残しを討伐したり、街中で、時には周辺の村へ出向いて倒壊した家の立て直しを手伝ったり、畑を元に戻す手伝いをしたり……。
そうして、復興の目途が立つ頃には、謎の宝石は数えるのもウンザリするぐらいの数が集まった。
「あ…あの、記念に1つ頂いても良いでしょうか」
「ええ、これだけあるのですから大丈夫でしょう。
皆さんもここまで頑張って下さいましたし……
途中の村で頑張って下さっている皆さんにも、一つずつ配りましょう。
もし帰る途中で見つけたら、また拾っておきますし」
そうして謎の宝石とダンジョンで出て来た宝飾品や金貨などを持って、王都から来た支援団一行は戻る事になった。
「支援に返礼品があるのって、初じゃないか?」
「ああ、そうかもしれませんね。
でも良いんじゃないですか?貰いっぱなしなのは気が引けるでしょうから」
「そうだな……これで借りが少しは返せる」
「融資も受けられやすくなるかもだしね!」
来た時とは違い、今度はみんなで帰る。
道中困り事があれば、それも解決しながらだ。
「置いて来た治癒魔法師やうちの騎士団員も回収しないとね」
「ええ、救助隊もそれぞれの村まで送り届けましょう」
荷馬車に災害救助隊のメンバーを乗せ、フェリスが乗って来た馬車には村人たちから貰った干し肉や水を詰め…。
「それでは、出発!」
「「はい!」」
ギル王子の号令で、一行はカヌス領中心街を後にした。
後は領地にいる人間で何とかやっていけるだろう。
パッセルは晴れやかな顔で愛馬に跨る。
毎日餌やりとブラッシングをしてもらった愛馬は、調子よくポコポコと歩き出す。
馬上でパッセルは独り言ちる。
「……東の辺境伯にも、石を持っていた魔物がいないか聞いておこう」
東の魔物討伐も、なかなかの量だった。
もしここと同じ様にダンジョンが生成されていたら……
それも、冬休みにクレイドと研修に行けば分かる事だ。
***
街を出て、隣の村へ入り、そこの復旧具合を確認するのに一泊。
そしてその隣村へ行き、そこでも一泊……と、行きの3倍ほど時間をかけ、パッセルたち3人は王都へ戻った。
リュノ王子、ギル王子に加え、近衛騎士団と王都騎士団の面々は先に帰った。
王都で何があっても困るからだ。
「戻る頃には、冬休みに入っているかもしれませんね」
「そうだね……追試になっちゃうね」
「そういや学期末の試験、忘れてたわ」
さすがに今回は非常事態だし、お目こぼしも多少あるだろうが、まだ3人とも学生だ。
勉強が第一である。
「そういやパッセル、外国語大丈夫か?」
「あまり自信はありませんが、赤点さえ取らなければ大丈夫でしょう」
「リュノ王子に教えて貰えば良いじゃん!
そろそろ恋人交代の時期じゃない?」
「あー…すっっっかり忘れてた」
パッセルはそう言いながら少し顔を赤らめた。
「これで漸く、恋愛が分からない自分に年下の王子様を付き合わせる罪悪感が無くなります」
「ふ~ん……ギル王子と恋人になってみて、どうだったの?」
するとパッセルは意外な事を言った。
「とても可愛い弟……でしょうか。
セックスするのに躊躇する程度には」
パッセルはどうにも「ギル王子とは最後の一線を越えてはいけない」という感覚が強くあるようだ。
それは最初警戒感から入ったものだが、最終的に身内感へと変化したらしい。
フェリスは「やっぱりね」と思いつつ、リュノ王子の事も聞いてみた。
「そうなんだ?じゃあリュノ王子とは?」
「分かりません、これから恋人になってみるのですから」
パッセルはそう言って話を終わりにした。
本当は恋愛なんてしている暇は無い。
冬は東の辺境でダンジョン探しをしなければならないし、もしかしたら立て続けに災難が起きる可能性もある。
「……冬休みを待たず、東の辺境へ行った方が良いのかもしれませんね」
「まあ、あんな事があった後だもんね」
仕事が落ち着いたら、また別の仕事だ。
ウサギの危険性も伝えて行かないと……。
「いつの間に、3つも世界を抱えたんだかなぁ」
見た目は可愛いよりの平凡。
そんな人間がいつの間にか特異点になってしまった事に、パッセルはため息をつくのだった。
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