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合わさる世界
まさかのパッセル
しおりを挟む3人が戻って来てから10日後。
「あっ、フェリス様、クレイド様、パッセルさん!」
「お、呼ぶ順番も完璧だね」
「はい!人がいる場所では、偉い人から順に呼ぶ、です!」
貴族マナー初歩の初歩を覚えている事に胸をはるオヴィス。
だが、彼の成長はそれどころではない。
アルファだらけの理事会へ突撃して直談判し、エバ王子の援護を受けながらではあるが、難しめの交渉事を1つやってのけたのだから。
「オヴィスのおかげで無事に試験を受けられたよ、有難う」
「そんな、当たり前です!
王立の学園なのに、有り得ませんもん!」
笑顔でそんな科白を吐くオヴィスに、3人は苦笑した。
この学園も王立の機関なのだから、災害支援に賛同していない様に捉えられる行為は慎むべき。
確かに当たり前の事である。
エバ王子も言う。
「そもそも誰が、この3人を『欠席過多で強制留年』なんて事が出来ると思ったんだか」
「シルウェストリス公も国民も黙っちゃいませんよね」
「だな」
彼らのおかげで、3人だけでなく災害救助に携わった人間はその期間の欠席が出席扱いになった。
おまけに、いくらか点数を上乗せしてもらえる事にもなったのだ。
これにより、フェリスとクレイドは補講を免れた……
だが問題は、パッセルだ。
「パッセルさん、外国語苦手だったんですね」
「……喋るのに問題はありません」
「そうは言ってもな」
「……納得いきません」
パッセルは、とにかく文字を書くことに弱い。
例えるなら…「読めるけど書けない漢字」が沢山ある、みたいな事だ。
そもそも母国語の読み書きでも精一杯なのに、外国語を書くのはいよいよ無理。
そして、今回に限って、外国語に訳して文章を書く問題ばかり……
薄っすらとしたパッセル潰しである。
「補講は何日あるんだ?」
「……1週間です」
「1週間かぁ~」
「東の辺境伯がお怒りになるぞ」
「そうやって教員を脅すしかありませんな」
「もう、パッセルったら…穏やかじゃないなぁ」
すると、これまたオヴィスが名案を思い付いた!と言わんばかりに声を上げた。
「じゃあ僕、補講を別の形にしてもらえるよう交渉してみます!待っててください!!」
「え、あ、オヴィス殿!?」
「行ってきま~~す!!」
「こらオヴィス、待てって」
「エバさま、早く早く~~!」
そうして、エバ王子とオヴィスは職員室へと駆けて行った。
フェリスとクレイドは彼らをただ見送った。
そして思った。
彼らが王と王妃になれば、この国は明るくなりそうだ……と。
***
パッセルが外国語の試験を落とした、という話はあっという間に学園中に広まった。
「パッセル殿も人間だったのだな」
「でもまさか、赤点だなんて……」
「災害支援に行った分の加点もあったはずなのに……よっぽどだな」
「自分にもパッセルに勝てる部分があると思うと勇気が湧く」
等々……。
だが当人はそれどころではない。
オヴィスとエバ王子が学園側と交渉し、何とか「追試を受け合格すれば補講無し」というところへ持ち込んでくれたのだ。
この学園に追試というシステムが無かったのをねじ込んでくれた2人の為にも、必ず合格しなければならない。
そんなわけで現在、パッセルは自室からほぼ出てくる事なく缶詰め状態で試験勉強に取り組んでいる……
「パッセル、回復ポーション、置いとくね」
「……ありがとうございます」
「お昼のサンドイッチも置いとくからな」
「……ありがとうございます」
読める、けど書けない。
話すことは出来るのに、書けない。
それが何とも悔しくて情けない。
北の国境を越えてやって来た商人や東の辺境の向こう側から来た傭兵たちと会話した時には、何も困らなかったのに……。
「話せるのは多分、転生者特典だな」
ギル王子との恋人期間は、試験最終日をもって終わった。
最後のデートをして、お互いに「伴侶としては考えられない」と話し合って別れ、今後は良き友人として付き合っていこうと決めたばかりだ。
「勿論、東の辺境へは共に行く。
モンタルヌス領にも行くんだろう?
クレイドのお祖母様に一度お会いしてみたくてな」
「ええ、それは良い。
エクレセンテ様は凄いお方ですからね」
そうして、空いた恋人の座にはリュノ王子がついた。
だがもうそれどころではない。
東の辺境へ何としてでも終業式終わり、最悪でも次の日には出なければ……
「とにかく、単語だ。
単語を覚えなければ始まらない……くそッ」
ノートが真っ黒になるまで単語を書く。
そうやって頭の中に刷り込むしかない……
「……見てやがれ、教師共」
パッセルはそう毒づきながら、必死で外国語を詰め込んだのだった。
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