話が違う2人

紫蘇

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合わさる世界

距離感

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一方その頃パッセルは、一つ西の村を要塞に変えていた。

「壕をもう少し深くし、壁の外周には先を尖らせた丸太を並べ、魔物が簡単に近づけないようにしましょう」
「将来的に、ここへバリスタ…大型弩砲を備えられるように、土を盛っておきましょう」

慎重に街道沿いから木を切り出して運び、材木に加工し、村人と一緒に村の守りを固める。

魔物の調査は辺境騎士と近衛に任せた。
治癒師に何かあったら困るからと、村で待機する事になったのだ。

「……森の方に、動きは!」
「今んとこ何も見えません!」
「分かりました、引き続き見張り、頼みます!」

跳ね橋をいつでも上げられるよう、見張り台には救助隊員が待機している。
それを壁の外側から見上げた後、パッセルは村人たちと共に黙々と作業を続ける。

森で何か見つかったという話はまだ届かない。
ダンジョン攻略で進んだ事と言えば、村から魔物を倒した地点まで馬1頭通れるほどの細い道をつけただけだ。
明らかな痕跡さえ見つかれば、また道も伸ばせるのだが…

「でも、収穫が済んでて良かったっす!」
「ええ……西は収穫時期と重なって大変でしたからね」
「秋ごろでしたもんね、丁度」

そう、今回は冬だから何とかなる。
村全体が冬ごもりの態勢に入っているからだ。
備えがバッチリなので、籠城作戦も余裕…

「後は、ダンジョンが見つかるだけです」

討伐したあの魔物が来た道を辿る事さえ出来れば……
だが、匂いを辿る方法は、犬が怯えて上手くいかなかった。
だから結局、人間の観察力でやるしか……

「パッセル様!城の方から誰か来ます!」
「分かりました、今行きます!」

どうやら援軍が来たようだ。


***


次の日。

パッセルは愛馬に跨り、リュノ王子とフェリスとクレイドを連れて大型ダンジョン産魔物が討伐されたポイントへ移動していた。

「パッセル!君は、」
「お小言は昨日散々聞きましたよ」
「そういう事じゃない!いいか、君は」

昨日からパッセルに対するお小言が止められないリュノ王子の姿に、フェリスとクレイドは苦笑するしかない。

「心配してたもんね、リュノ殿下」
「こういう時のパッセルほど、頼りになる人間もいないんだけどな」
「ははは……ま、嫉妬八割でしょ」
「違いない」

パッセルは他人を守るために無茶をするけれど、自分の命も簡単に捨てたりしない。
西の辺境でのあれが特別だっただけだ。
まさかポーションの飲み過ぎで倒れるなんて……

「死んでも貞操を守るってタイプじゃないから、余計心配なのかな」
「そっち方面では自分を大切にしないからなぁ……あ、あれ」

小道の先に開けた場所が見えた。
どうやら最初の目的地はここらしい。
リュノの小言を押しのけ、パッセルが言った。

「そう、あそこです。
 あそこをダンジョン捜索の拠点にします。
 まずは馬屋と休憩小屋を作りましょう」
「つまり、魔法工法だな?」
「ええ、書き取りお願いしますよ、
「あ、ああ!」

突然「リュノ」と呼ばれたリュノ王子は、動揺しつつも返事を返した。
その顔は、ほんのり赤くて、嬉しそうな恥ずかしそうな……。

その様子に、やっぱりフェリスとクレイドは苦笑するしかなかったのだった。


===========

私事ですが、持病の悪化により入院することとなりました。
今でも綱渡り状態ですが、入院中は通信環境で更新しづらくなる可能性が高いので、どうか温かい目で見守ってやってください。

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感想 20

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