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合わさる世界
拠点造り
しおりを挟むパッセルの魔法により、半時もしないうちにちょっと開けた場所はしっかり開けた場所になった。
「木を切るのもやっぱり風魔法か」
「ええ、自分が得意な魔法がこれなので…
属性の偏りはどうしても出ますね」
斬り倒した木を運ぶのも風魔法。
丸太を材木の形に整えるのも風魔法…
「基礎を作る土魔法は頼みますよ、リュノ」
「ああ、任せろ!」
呼び方一つでチョロい男だ、と言わば言え。
恋人になった途端に次々問題が発生し、恋人らしい事が殆ど出来なかったリュノ王子はそれだけで嬉しくて……
「よし、ここだな」
「ええ、岩の様に堅いのをお願いします」
「~……~…、~……よし、このぐらいか?」
「ええ、完璧です。
ありがとうございます、リュノ」
「♪♪」
もう少し特別扱いしてやった方が良いのかなぁ、とパッセルが考えるぐらいには浮かれている。
「それじゃ、柱、立てます!」
「せーの!」
材料が揃っていれば、簡単な建物は早い。
取り敢えず今は馬を隠せて小屋に薪を置ければ良い。
それなら天井が高くなくても良いから、特段頑丈な足場を組む必要も無いのだ。
「よーし、軒桁入れるぞ~!」
「おおー、よーいしょ!」
「よーし、叩け~!」
「ええーーいい」かん!かん!
木と木を組み合わせて、どんどん骨組みが出来ていく。
骨組みが出来たら次は板を張って壁を作る。
「次は小屋の基礎をお願いします、リュノ」
「分かった、任せろ!」
周辺で薬草採取に励んでいたフェリスは、その様子を見ながら思った。
「……こういうのは上手なんだよなー」
とはいえ作業が早く進むのは良い事だ。
例え誰かの恋心を操った結果だとしても。
***
拠点が出来た事を狼煙で知らせると、周辺の森に散っていた騎士や救助隊員たちが戻って来た。
「痕跡はありましたか」
「いやぁ…なかなか見つかりません」
「南東方面、という所までは絞れましたが…」
魔物が真っ直ぐここへ歩いてきたのなら、痕跡も見つけやすい。
だが、討伐された魔物は胴体が「虎」だった。
虎は木に登る事もあるし、気まぐれだ。
しかも……
「頭が山羊だったんだから、角に枝を引っ掛けるぐらいの事はあっても良さそうなんですがね」
「羽は生えていなかったですから、空は飛んでないと思うんですがね」
「尻尾が蛇だったとはいえ、地面を這って進んじゃいないと思うんですがね」
色々な動物が合成されているだけに、生態の想像がつかないのだ。
考えても仕方が無い。
「今分かっている洞窟は?」
「全部ハズレです」
「つまり発見されていない洞窟、またはそれに準じた何かがある、と」
「本当にこっちで合っているんでしょうか……」
「分かりません……もしかしたら、暴走を待つ以外に無いかもしれない」
パッセルの言葉に、全員が押し黙る中、フェリスが問う。
「パッセル、もしかしてその為にあの村を改造したの?」
「……そもそも、そう簡単に見つけられるものとは思えませんから」
ここを拠点にして、可能性のある方向に道を引いて、また拠点を作る。
それを繰り返して、この森全体を調査する覚悟が必要だ……とパッセルは言う。
大体、簡単に見つかる様な物なら、西のカヌス伯爵があそこまで苦労する事は無かった。
魔物から逃げる事に必死で、死体を回収する手間も危険も冒せなくなる程追い詰められる前に、原因を突き止められたはずなのだ。
そうなれば「推定:魔石」だってすでに見つかっているはずで、もしかしたらダンジョンを経営する事で儲かっていたかもしれない……
騎士団を領軍にまで格下げしなければならない程、財政が悪化する事は無かったかもしれない。
「今、辺境伯邸ではギル殿下が辺境騎士団にダンジョンの魔物についてレクチャーしているでしょう?」
「うん、そんな事言ってたと思う」
「見つからなかった時の対処を、予め頼んでおいたのです」
いつの間にか、パッセルはギル王子に頼み事をしていたらしい。
現恋人のリュノ王子としては聞き捨てならないが、パッセルは意に介さない、といった調子で話を続ける。
「二つ目のダンジョンにまでギル殿下が潜るとなれば、中央でいらぬ噂を産みますからね」
「ああ、兄弟仲が悪い方が都合がいい人たち」
「です」
つまり、エバ王子が弟に危険な仕事ばかりを押し付けている…
つまり、エバ王子はギル王子が死んでも良いと思っている…
何でも外野は言いたい放題だ。
だから今回は、安全地帯にいて頂く。
ここまでの道のりを考えれば、完全に表向きだけの話だけれど。
「出来ればどなたか、ダンジョンが見つかるまで常駐してもらえると助かるのですが……」
「……まさか、パッセル」
それもギル王子に頼んだのか、とリュノ王子は怒りを滲ませる。
だが、パッセルはやはりそれを意に介さないといった風で話を続ける。
「実はね、東の辺境伯様には年の離れた妹さんがいらっしゃるんですよ。
……オメガの」
「は?」
「今回同行して頂いた騎士様は、全員アルファでしょう?
あわよくば運命の番なんて可能性もあるかと」
「つまり、それ次第って事?」
「まあ、そうですね」
そう言えば、王宮の人事の大半は現在アラウダ父が握っているのだ……
「何でも計画すれば出来るものではありません。
大体、宰相閣下に借りを作ると何が起きるか分かったもんじゃありませんしね」
パッセルにだって、無理な事がある。
外国語の試験みたいに……。
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