話が違う2人

紫蘇

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合わさる世界

愛馬の名はメジロ

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拠点づくりが終わり、先に捜索をしていた騎士や救助隊員たちは村へ戻った。

「それじゃ、パッセル様。
 明日の正午、物資を持って戻ります」
「ええ、一日しかありませんが、しっかり休養してください」
「はい!」

そうして彼らを見送った後、パッセル達は自身が乗って来た馬を出来たばかりの馬屋へ……

「ぅぶるるる」
「ん?どうしたメジロ」
「ひひん!」
「だめだ、ここから先は連れていけない。
 ここで大人しく待っていてくれ」
「ぅぶぅ…ふるる」

なぜかパッセルの愛馬が言う事を聞かない。
一緒に森へ行くのだというふうに、前足をカツカツ鳴らして不満げに鳴く。

「いいかメジロ、森は危険だ。
 お前が魔物に襲われたら、俺はどうしたらいい」
「ぶるふ、ふぶるふ」
「あっ、こら!」

この前、西のダンジョンに行く時に置いて行かれたのが嫌だったのだろうか?
パッセルの説得も、馬だけに馬耳東風。
手綱を持ったパッセルを引きずるように、森の中へ……

「ああもう、メジロ、分かった。
 途中までだぞ!」
「ひひん!」

交渉上手なパッセルも、愛馬には勝てないようだ。
そもそも言葉が通じないので交渉も何もないのだが。

「……あいつ、強いな」
「馬と張り合うのは止めてくださいよ、殿下」
「だがパッセルは、あいつには『俺』と……」
「そんなとこ聞いてたんですか!?」

馬には甘いパッセルを見て、いびつな嫉妬をするリュノ王子に呆れる面々……
そして愛馬に押されて森の中へ入っていくパッセル。

「こ・ら!みんなと、だ!」
「ぶふふぅ」
「こら、メジロ、待てって!」

「ぶるるぅ」

「お前、今日少し、変だぞ……わっ!?」
「うるるるぅ」

その他面々を放置して、パッセルの愛馬「メジロ」はパッセルの背中を鼻面でぎゅいぎゅい押しながら森の中をずんずんと進み、時々風の匂いを嗅いで、また進んだ。

「やっぱ馬早えわ」
「付いて行くのがやっと……」
「すみません!
 もう少し速度を押さえろ、メジロ」
「ふすっ」

駿馬とは言えない馬だとて、人よりずっと足は長いし速い。
それが、何かの確信を持って進んでいくのだ。
こっちは付いて行くので精一杯、来た道を辿れるように印をつけるので精一杯……

「ふふン」

一体、メジロはどこへパッセル達を連れて行こうというのだろう。

パッセルのお願いを聞き分け、ややゆっくりとした足取りになりながらも……

「すふ?すんすん……」
「一体どこまで行くんだ、メジロ?」
「ぶるるっふう!」

着実にどこかへ向かって進んでいった。


***


メジロに案内されるまま付いて来た一行は、森の中に不思議な物を見た。

「メジロ……まさかここは」
「ぶるるふう!」
「ああ、よくやってくれた、偉いぞ!」
「ぶふふん、ヒヒン」

メジロは少し開けた場所に全員を案内すると、パッセルに「褒め」を要求した後そこらへんの草を食べ始めた。

その場所にあったのは、前世で言うところのストーンヘンジのような遺跡だった。

巨石が円形に並び、その上に巨石が乗せられていて、パッセル達が辿り着いた場所が門のように少しだけ幅が広くなっており、そこから入って正面、真っ直ぐに柱が二列……

「あっちに行けって事かな?」
「……行ってみましょう。
 メジロ、ここで待っててくれるか?」
「ぶるる!」
「今日は潜らない、ちょっと確認して、ダンジョンだったら赤い狼煙を上げに戻るんだ」
「ぶるる!」

メジロは納得したのか、パッセルの上着の襟をはむはむした後、再び草をもしゃもしゃと食べ始めた。
それを見てパッセルは言った。

「ここから先、何が起きるかも分かりません。
 注意して進みましょう」
「ああ、そうだな」

見てみなければ、分からない。
それでも全員が、この先にダンジョンがあると確信した。

「こんな大きなものが今まで見つからなかったなんて…」
「もしかして、ここへ来るためには決まったルートを通らなければならない、とか?」
「とすれば、メジロが止まった場所には何か鍵になるものが…?」

有力そうな意見に、皆が納得しかける。
だが、確認するまでは全て推測だ。

「…という事は、誰かあの馬を守る者が必要なのでは?」

確かにそうだ。
メジロがいなければ、帰れなくなる可能性も出てくる…

「パッセルはここで待て。
 俺たちが行って見てくる」
「兄上!」
「パッセルなら、あの馬を守れるだろ?
 それに最悪、逃げなきゃならなくなっても……そいつと一緒に、援軍を連れてまた来てくれるって信じられるからな」

クレイドの決断に、異を唱える者はいなかった。

ただ、リュノ王子は少しだけ不満そうではあったが……。

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