話が違う2人

紫蘇

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合わさる世界

ダンジョン運営計画

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巨大ネズミ(毒蛇付)を倒すと、いくつかの「推定:魔石」と金貨、そして人数分のマンガ肉と2本の前歯を残し、死体は光に包まれて消えた。

「やっぱりダンジョンだったね」
「しかもいきなりボスに遭遇するとはな」

高々階段を降りただけでこんな目に会うなんて、とクレイド。
これは巧妙な罠だろうか?それとも……

「もしかして、この遺跡の中もダンジョン圏内だったりして……?」
「…しかし、拠点からここまでのルートで何の魔物も出て来なかったですよ?」
「試して見りゃ分かるんじゃね?」

そう言ってクレイドはフェリスを見た。
フェリスは頷き、紙包を取り出して言った。

「……、製薬」

すると、フェリスの手の中で、包みがほわんと光った。
それからカサッという乾いた音がして……。

フェリスは中身を手のひらに出してみせた。

そこには、丸薬がひとつ……

「出来ちゃったね」
「という事は、ここはダンジョンの内側になるんですね」
「そういうことだね」

つまり、入口はどこか分からないけれど、パッセルの愛馬が案内してくれたルート上にあるのだ。

「ますます、正しいルートでなければここへ到達できない可能性が高まりましたね」
「うん、その方がダンジョンっぽいもんね」

ふと、皆の視線がパッセルの愛馬へと向く。
メジロはそれに気づいたのか、草を食べるのをやめてドヤ顔をしてみせた。


***


目印を頼りに来た道をしっかりと辿りながら、次また来られるようにと幅30cm程度の極細な道を付けながら進んで拠点へ戻る。

「今は獣道ですが、そのうち人の往来が増えれば立派な小道になるでしょう」
「うん、ダンジョンで稼げるとなったら、山賊や野盗になる人も少なくなるかもだし」

拠点で赤い狼煙を焚きながら、パッセルとフェリスが話す。

ダンジョン経営ってどんなだろう?
主な換金アイテムは「推定:魔石」。
時々ドロップする金貨や宝飾品も、当然金に換えられるだろう。

問題は金貨が出すぎると、きんを基軸に貨幣価値を定められなくなる事だが……。

「上手い事やって、金貨を回収しつつモノを行き渡らせる。
 つまり嗜好品の増産……となると、酒」
「砂糖もね!この国、お菓子のレパートリー無さ過ぎでしょ」

ダンジョン経営は金がかかる。
だがそれと同時に、小さな経済圏を手にする事が出来る。
冒険者はダンジョンに行き、魔石を拾って小金に変え、金貨は両替し、それを酒と食い物に変える。
提供される食事は全て地産地消で……。

パッセルとフェリスは夢物語を語るように、ダンジョン経営について話を詰めていく。

「西でもサトウダイコンが育てられる土地を探しましょう。
 そして酒……エールの醸造所を見学して帰りましょう」
「ワインじゃ駄目なのか?」
「ぶどうの木を増やすのには年月が要りますから、後々ですね」

そして付加価値の付く蒸留酒までたどり着ければ……

「エールからウイスキー、……目指せバラン30年」
「ばらん?」
「ええ、30年もの年月をかけて樽の中で熟成した魅惑のスコッチ…蒸留酒です」

何となく麦畑を作ればいいと思っていた。
だが、なりたい形があるのならそれを目指していくほうが、絶対に面白い。

「西のダンジョンも、一つでない可能性がありますしね」
「えっ!?」
「ま、あの数だもんな」
「そっか、そんなに……」

先に出たパッセルとクレイドは、あの数を目の当たりにしている。
絶望的なまでの魔物の数を…
拾い集めた「推定:魔石」の数より遥かに多かった事を。

「地面の上にあるものは、時間がたつと消えてしまうのかもしれませんね」
「それもまた実験するしかないな」

拾い切れなかった「推定:魔石」が、この世界に漂う魔力の素だという可能性もある。
だとすれば、西の方に強く大きな魔物が出るのは、この石がそこら中に落ちていて魔力の素が濃いからだという仮説も立てられる……

「どっちにしろ、ダンジョンは上手くすれば金の卵になりうる。
 経営計画は入念に練った方が良さそうですね」

パッセルはそう言って、にやりと笑った。
心底楽しくて仕方が無い……
そんなふうに。

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