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合わさる世界
学園へ帰ろう
しおりを挟む辺境伯の屋敷で開かれた晩餐会の後、クレイドとフェリスとリュノの3人は荷造りをしながらダンジョンについて話す。
「しかし、東と西でこんなに違うとはなぁ」
「あの化物が出て来なかったのは良い事だ」
「ボス部屋以外は全部外ってのもすごいよね」
結局、冬休みの半分以上をダンジョン探索とダンジョン経営計画で費やし、東の辺境での研修…と言っていいのか分からないが、とにかくお仕事は一旦終了した。
「そういえば、パッセルは?」
「……ステルラタ伯と、ギル殿と3人で政治的なお話し合いだ」
「あー…結局パッセルかぁ」
「仕方ないよ、災害救助隊のトップだもん」
晩餐会の時には隣同士で混み入った話もしたのだから、がっかりする必要は無いのかもしれないが……
「あくまで辺境伯候補、だものね」
「それはまあ、そうなんだけどさ……
俺が辺境伯になるのを支持してくれるかどうか、分かんないじゃん」
「ああ、大丈夫だ。
東の辺境伯がどう出ようが、ユバトゥス王国はクレイド辺境伯候補を支持するからな」
「本当ですか!?」
「勿論。隣人として申し分無い人間だからな」
確かに、人となりが分かっている人物が隣人であれば有難い事この上ない。
ユバトゥス側としても、自国の王の血を引く子どもが一切の波風を立てる事なく辺境伯を継ぐ可能性があるのならそれでいいのだろう。
そもそも、あの土地が欲しかったのなら「良かったらどうぞ?」と言われた数十年前に「じゃあ貰いますね」と言えば良かっただけなのだ。
「じゃあ、いよいよ現実味が出て来たね」
「だな!
……後は30年、辺境伯の地位を保つだけだ」
多分、それが最も難しい試練になるだろう。
それでも、フェリスと共に生きられる未来があるのなら必死になってやろうじゃないか……。
クレイドはため息まじりに、それでも真剣な目でそう言った。
・・・
次の日、馬車に自分たちの荷物と皆へのお土産を積み込んで、一行は辺境伯の屋敷を出た。
「あの『ダンジョンまでの獣道』も立派な『小道』になりましたしね」
「ああ、もうメジロがいなくても大丈夫だ」
「ええ、安心して帰れます」
パッセルは愛馬の首をポンポンと叩き、出発の合図を出した。
屋敷が見えなくなる程度の距離まで来て、リュノ王子が言った。
「いいのかメジロ?ここに残れば、毎日美味しい草が食えるぞ」
「フシーーーー!!」
自分を排除しようとするリュノ王子に対し、敵意剥き出しのメジロ。
背中に乗っているパッセルも苦笑いだ。
「さぁ、帰りは飛ばすぞ!
急いで戻らないと、3学期に間に合わない」
「ヒヒン!」
余分な荷物とお土産しか積んでいない馬車は後から追いかけてきてもらう事にし、学生たちは馬の速度を上げた。
***
途中途中、災害救助隊の詰所に立ち寄り休憩を挟みつつ、10日もしないうちにモンタルヌス領へついた。
うっかり忘れて来た外国語教師を回収する為である。
「そういえば、あの偏見が改まってなかったら首だって、エバ殿下が」
「知ってる、でも嫌な予感しかしないんだよな」
「ええ、教育がいき過ぎる部分がありますからね、エクレセンテ様は」
モンタルヌス邸がある街に着き、またまた大きな歓声で出迎えられつつ屋敷へ向かう。
「そう言えば、ギル殿はエクレセンテ殿と随分話し込んでいたそうじゃないか」
「ああ、魔法剣の事を色々と教えて頂いた。
実戦も込みで、大変充実した内容だった……
近衛騎士団の特別講師として雇いたい、とお願いしたら断られてしまったがな」
「でしたら、エクレセンテ様の魔法剣習得法も本になさったらどうです?」
「ああ、それはいい!
リュノ殿、挿絵を頼めるか」
「勿論だ」
そうして屋敷に着くなり、ギル王子はリュノ王子を伴ってエクレセンテを訪ねに行き、パッセルとフェリスとクレイドはこの旅の報告をするためにエーライ当主の待つ執務室へ向かい……
「お帰りクレイド、フェリス様。
お疲れさまでした、パッセル様」
「お帰りなさい、クレイド殿、フェリス殿。
パッセル殿、、、、、お疲れ様です」
「「「……」」」
そこであの教師と、再会する事になった……。
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