話が違う2人

紫蘇

文字の大きさ
158 / 292
合わさる世界

ついに脱稿、そして校正

しおりを挟む
 
「パッセル様、ここの文章なのですけれど、少々分かりづらいかと存じますので注釈をお願い致しますわ」
「ええ、かしこまりました」
「ギル殿下、ここの文章ですが、助詞が分かりにくいですわ」
「ふむ……では書き直すとするか」

3学期もいつの間にか中盤になり、魔法農法・魔法工法の出版スケジュールも大詰め。
今日はパッセル・ギル王子・リュノ王子の3人とウルサ嬢の4人で校正作業の真っ最中だ。

「挿絵の方はいかがです、リュノ殿下?」
「実によく出来ている……すごいな」
「お褒め頂き、有難う御座います。
 職人たちも喜びますわ!」
「ああ、今度礼をしに行かねばな」

勉強会の方は、フェリスとエバ王子とアラウダで回している。
とはいえ、もう3学期だ。
各自やりたい事も見つかっているしグループも確立しているので、それ程相談に乗る事も無いのだが……。

「フェリス様、この薬草は……」
「うん、良くある腹痛を抑える薬草だよ。
 王都の外れで採取した時には、葉の色が赤だったんだけど、ここへ植え替えたら緑になったんだ。
 土が違うと、そういう事があるみたい」
「そうなんですね……薬効は?」
「変わらないけど、抽出の時間が長くなるね」

自分が作った小さな薬草園を引き継いでくれる人間を探すために、フェリスは忙しくしている。

エバ王子も今後のアルバトルス王国を共に盛り立てていける人物を探しているし、アラウダは宮廷で真面目に働いてくれそうな人材に声をかけたりしている。

こころざしさえ同じなら、バース性にはこだわらない」

エバ王子もアラウダもそう宣言しているから、何とか2人と話そうとする学生も多い。

「何でも真面目に取り組む姿勢と、他人の話を聞ける素直さが大事だ」
「自分がこの国の為になると思う事をぶつけ合って前に進むんだ」
「今より少し豊かな国を目指す。
 現状維持だけでも大変な事は分かっているが、それでもだ」

卒業したら王になる男と、その最側近になる男。
最終学年を前にして、二人にはその自覚がしっかりと芽生え始めていた。

***

一方その頃、学園の中等部では、3年生が高等部に入る為の準備が進んでいた。

中等部と高等部の大きな違いと言えば、領主貴族の子が編入してくる事と寮住まいが可能になる事。
それから、より専門的な「科」が存在する事だ。

高等部にあるのは、

・騎士科
・薬学科
・医師科
・商業科
・魔法科
・総合科

の6科である。

今まではアルファの学生だけが専門の科を選択できたが、今年からは全生徒がその対象だ。
当然、そこそこの混乱が発生していた。

「……オメガの学生でも、騎士科を選べるんですか?」
「まあ、戦えるという事であれば……だが」
「となると、適性診断の試験が必要になりませんか」
「……確かに」

こうして、選択できる科を振り分ける為の試験が行われる事になったのは良いが、問題は人手が足りない事だ。

「高等部にも力を借りるべきだな」
「そうですね、教えるのはあっちなのですし、見込みのない人間を先に振り落としておけるのであればあちらとしても悪い話ではないでしょう」

こうして、高等部側に助力を頼む事になったのはいいが、問題は時期だ。
あまり後の方になると、3学期の試験とかぶる。
さすがにそれは避けるべきだろう。
しかし、急に試験内容を作るというのもそれはそれで大変……

「あっ」
「どうしました理事長」
「現任訓練ですよ!
 ほら、シルウェストリス公が王宮官吏の人事に取り入れているという、あの」
「ああ……お試しで入ってみて、適性があるか確認する?」
「それそれ!試験をわざわざするよりも、取り敢えず1週間程、体験させてみれば良いんじゃないですかね」
「なるほど良い案だ」
「それで交渉してみましょう」

急がないと、最長6週間の日程が必要になる。
中等部の理事長はその日に高等部の理事会を訪ね、それを提案し、すぐに承認を貰う事に成功した。
なかなかのやり手である。

「という事で、来週から現任訓練で」
「おお、すぐに周知して希望を取りまとめましょう」
「そうですね、まずは騎士科スタートの魔法科終わりが12~15人……」
「待って下さい、全員に6つとも回らせるんですか?」
「科ごとに希望を聞いて調整する時間なんかありません、だったら全員強制の方が早い」
「……確かに?」

……という事で、中等部の3年生が高等部へ6週間通うことが急に決定した。
その3年生の中には、もちろんあのラディアもいるわけだが……

学生たちにその事が伝わるのは、もう少し後の事であった。


しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

恋人に捨てられた僕を拾ってくれたのは、憧れの騎士様でした

水瀬かずか
BL
仕事をクビになった。住んでいるところも追い出された。そしたら恋人に捨てられた。最後のお給料も全部奪われた。「役立たず」と蹴られて。 好きって言ってくれたのに。かわいいって言ってくれたのに。やっぱり、僕は駄目な子なんだ。 行き場をなくした僕を見つけてくれたのは、優しい騎士様だった。 強面騎士×不憫美青年

婚約破棄された俺の農業異世界生活

深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」 冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生! 庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。 そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。 皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。 (ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中) (第四回fujossy小説大賞エントリー中)

隊長さんとボク

ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。 エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。 そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。 王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。 きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。 えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m

令嬢に転生したと思ったけどちょっと違った

しそみょうが
BL
前世男子大学生だったが今世では公爵令嬢に転生したアシュリー8歳は、王城の廊下で4歳年下の第2王子イーライに一目惚れされて婚約者になる。なんやかんやで両想いだった2人だが、イーライの留学中にアシュリーに成長期が訪れ立派な青年に成長してしまう。アシュリーが転生したのは女性ではなくカントボーイだったのだ。泣く泣く婚約者を辞するアシュリーは名前を変えて王城の近衛騎士となる。婚約者にフラれて隣国でグレたと噂の殿下が5年ぶりに帰国してーー? という、婚約者大好き年下王子☓元令嬢のカントボーイ騎士のお話です。前半3話目までは子ども時代で、成長した後半にR18がちょこっとあります♡  短編コメディです

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

処理中です...