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合わさる世界
【ギル】因果応報?
しおりを挟む一方その作戦の裏で、俺はラディアと久々に会っていた。
もちろん場所は王宮の自室だ。
学園の中で会えば、ラディアに余計な注目と嫉妬が集まる……
パッセルと違って「力」を持たないラディアには耐えられない事が起きるだろう。
「……学園内で堂々と恋愛できる相手が、そもそもパッセルぐらいしかいなかったんだな」
「えっ?」
「いや、何でもない。
俺が勉強を教えなくなっても、お前の成績は優秀なままだったな。
素晴らしいぞ、ラディア」
「……はい、ギル様のために頑張ったんです」
「ああ……知ってる」
ラディアと会わなくなった期間をどう彼に説明すべきか、兄上に相談した。
すると兄上は言った。
『取り繕っても取り繕わなくても、恥をかく。
だったら取り繕う分無駄という事だな』
……と。
俺は、かつて話した計画が頓挫した事を告げた。
「ラディア、あの計画の事だが……
兄上との関係もすっかり改善したし、パッセルにはフラれてしまった。
だからあの計画は反故にして、兄上に俺の子どもへの王位継承権を堂々と求めた」
「……結果は?」
「ああ……目標は達成された。
だからラディアは」
「もう、用無しですか?」
「いや、逆だ。大いに用がある」
「……えっ」
用無しだったら、とっくにラディアはここに居ないだろう。
あの計画の事が笑い話になるまで、牢に閉じ込めておくか……殺すかだ。
だが俺は、ラディアをそんな目に遭わせるなんて考えられなかった。
いや、考えられなくなっていたんだ。
その上俺は、自分を隣で支えてくれる人間はと聞かれた時、真っ先にラディアを思い浮かべた。
彼と話していると、自分の思考が冴える気がしたからだ。
「だからお前を部屋に呼んだ。
高等部に入ったら、俺の補佐役になってくれないか……と、思って」
下らない妄想だろうと口に出して語る事で見えてくるものがあって、それを語れる相手がラディアだった。
ラディアは俺を馬鹿にしたりしなかった。
それは、馬鹿にしたら物理的に首が飛ぶほどに、身分差があったからかもしれない。
だけどその時の俺は、それでも良かった。
周りの大人は俺の話を『所詮子どもの言う事』だと笑った。
笑わない大人もいるにはいたが、
『それは何を目的に立案されたものですか?他に計画を立てるとしたら、とお考えになりましたか?計画には柔軟性が必要です、さもなければ計画を実行する事が目的になり、実現したかった事が遠のく事にもなるでしょう。いいですかエイギルフェルド殿下、あなたは王になるかもしれない人間なのですから、何の計画を立てるにしてもまず目的をしっかりと見定め、多角的な視点から……』
と、みっちり説教をしてきたりして閉口した。
だから俺は、思いついた事を何でもラディアに話した。
彼は説教だってしてこないから。
俺はあの時を思い出しながら、ラディアに話した。
「高等部に、とある勉強会があってな。
主催がいなくなったから潰すというには勿体ない集まりなんだ」
俺は勉強会の必要性について語った。
バース性も性別も関係なく学び合える事。
アルファでなくとも魔法が使えると証明した事。
一方で、魔法が使えなくても良いのだと、自分が出来る事を仕事に繋げられるまで追求できる事。
「あれほどのものは俺には作れん。
運も縁も足りない」
「……だから、僕と?」
「ああ、その勉強会をもっと先まで残る組織にするんだ。
お前がいれば……出来る気がする」
「!!」
***
その後俺は、ラディアとこれまでにあった事を話した。
魔法農法・魔法工法の本を出す為に、リュノ殿と一緒にパッセルの遠征に付いて行った事。
東の辺境で魔物が増えているなと思っていたら、西のカヌス領で地震が起きて、そこへ災害救助に出た事。
ダンジョンという奇妙な空間を見つけた事……油断して死にかけた事。
それから…高慢にもあの計画を進めようとして、返り討ちに合い、パッセルに恋をした事。
そしてこの前、身内以上の感情を持てないと言われて別れた事。
自分の望む恋愛とパッセルの望む恋愛の形が違い過ぎる事……
結局、リュノに勝てなかった事。
「……高等部に入って忙しかったのは本当だ。
……パッセルに恋をしたのも、失恋したのも」
「はい」
「俺はパッセルを道具に使う事ばかりを考えて来た。
だが、彼は道具にされるような人間では無かった。
だから目が覚めた。
人は道具ではない。数字でもない。
人は、人だ」
「……ギル様?」
「俺は、お前の事も道具だと思っていた。
だがお前の事を改めて人間として見た時、気が付いたんだ。
俺の計画から『目的』を理解したのはラディアだけだった」
「はい」
お祖父様はまともだった。
だが愚かな人間が後を継いだ結果、どうなった?
シルウェストリス公が玉座を欲しない人間だから、丸く収まっているだけだ。
あの御仁でなければ……内乱が起きていた。
だから俺は、考えたのだ。
次の次の王……それこそが大事だ、と。
「……俺だって、アルバトルスの王子だ。
この国の事を考えない日は無い」
権力欲はある。
権力がなければ出来ない事がある以上は。
だが、多くが俺はただ権力が欲しいだけの子どもだと笑う中……
「目的を話せば、理解してくれる友はいる。
だが計画を聞いて目的を分かってくれたのは、ラディアだけだ」
だから、ラディアを側に置きたいんだ。
「側妃になんて、ならなくていい。
俺よりずっと誠実で、お前だけを愛してくれる奴はいくらでもいるんだか」
「っ、いやですっ!!」
えっ?
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