話が違う2人

紫蘇

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合わさる世界

無策

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騎士科での体験授業が終わり、泣きそうな顔でラディアは練習場を後にした。

「そんな落ち込むなよラディア……」
「で、でも、僕、ベータなのに」
「そりゃオメガと一緒になるのは嫌だろうけどさ、出来ないものは仕方なくね」

アルファほど苛烈でないにしても、オメガを差別的な目で見るベータは多い。
だから、ラディアから「ベータなのに」という言葉が出た時点で全員が何となく納得してしまった。

「ま、お前ちょっと細いもんな。
 オメガの奴らと一緒にされたら悔しいの、分かる気がする」
「けどラディアはアルファの奴らと争えるぐらい成績も良いし、魔力だって多いしさ」

クラスメイトたちはラディアを励まそうと「まずい」発言を連発する。
そして、それに乗せられたようにラディアもまた失言をしてしまう……

「でも、それはオメガでも出来る事だもん」

その言葉に、全員がフェリスとパッセルを思い浮かべる。

成績優秀かつ薬師としても有名なフェリス。
膨大な魔力で魔物を圧倒するパッセル。

「あの人たちは特別じゃん!
 普通のオメガは成績も良くないし魔法も使えないし……」

すると、彼らの後ろからいきなり声がした。

「いいえ?
 普通のオメガでも魔法は使えますよ」
「え……」

彼らが振り向くと、そこには声の主……

「パッセル様!?」

そう、パッセルがそこにいた。
彼は困った様な顔でさらに言った。

「私に『様』は不要です。
 ……ここで説明するには時間が足りませんから、放課後『第一寮裏の勉強会』へお越しください」


***


「すまん、パッセル……」
「剣を握ると人が変わるのは、お父様譲りだもんね」
「親子ですまん」
「意味が分からない謝罪はお止めください」

仲良く第一寮裏に向かいながら、3人はそれぞれにため息をついた。
そして3人とも同じ事を思っていた。

『面倒な事になった』……と。


パッセルがあそこにいたのは、偶然ではない。
ギル王子の「草」からエバ王子に、エバ王子からオヴィス、オヴィスからパッセルに……と「クレイドのやらかし」が伝言ゲームのようにして届いたからだ。

そしてその後、

『パッセルさん!ラディア君と仲良くなるなら今ですよ、今!』

……とオヴィスが猛烈にアピールし、
クレイドはクレイドで

『……責任は取ってもらう』

とギル王子から圧をかけられ、
フェリスはフェリスで

『すまん、フェリス……頼む』

とエバ王子に頭を下げられたから、仕方なくこうして3人で歩いているというわけだ。


「面倒ですなぁ第2性というのは」
「男と女だけでも結構あるのにね」
「誰だよ最初に差別始めた奴……」

そもそも「バース性差別」がなければこんな面倒な話は生まれない。
クレイドの言い分は尤もな事であった。


第一寮裏に着くと、問題をこれ以上大きくしないためのアラウダと「パッセルとラブラブ作戦」決行中のリュノ王子がスタンバイしていた。

「パッセル!遅かったじゃないか」
「……はぁ」

早速作戦通りにリュノ王子はパッセルに駆け寄ってきたタイミングで、パッセルは彼に小声で尋ねた。

「……ウルサ殿は?」
「印刷所に」
「後の3人は?」
「俺の部屋から監視している」
「ああ……そりゃそうか」

確かに、表立ってウロウロしたら特別扱いされているのが丸わかりだ。
中等部と高等部で分かれている今、彼を守り切るのは容易ではない。

「そういえば、彼らはどこへ?」
「ああ、あっちで待たせている。
 早く行こう」
「……その前に、離れて頂けませんか」

ギル王子の恋人だった男が、別れた途端別の男と付き合っているという事実も、ラディアの神経に触るだろう…とパッセルは気を回したつもりだった。
だがリュノ王子はお構いなしに言う。

「だが、何かしてきたら叩きのめすんだろう?」
「だからと言って衝動的になるのを助長するのはいかがなものでしょうね」

出来れば叩きのめすような事はしたくない。
したくはないが……

「彼がオメガかもしれないという疑惑を払拭しつつ、差別感情を和らげる」妙案は、今のところ、無い。


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