話が違う2人

紫蘇

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最後の学園生活

王都組の暗躍

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一方、王都にいるエバ王子・オヴィス・アラウダ・ウルサの4人は……

「父がいよいよ無気力になってきていてな」
「噂では、王様がその、……不全、気味、とか?」
「そうなんだ、囲っていた愛人も手放して、今更母上に固執し始めた」
「厄介ですわねぇ」
「もしかしたら、あの治療の副作用……」
「だとすれば自業自得で済むがな」

つまり、問題はそこではない。
このタイミングで、シルウェストリス公もその息子も、中央政界からの引退を表明した事だ。
表向きの理由は、ざっくり言うとこう。


「もう働きたくないでゴザル」


シルウェストリス公は妻との田舎暮らしを希望し、次期シルウェストリス公は自領の屋敷で領地経営に専念したいと希望している。

次期シルウェストリス公・デライトは言う。

「もう、腹の探り合いも嫌だし、うちの子のバース性をああだこうだ予想されるのも嫌。
 特に長男がオメガっぽく見えるからって、今から結納金の話とか死んで、どうぞ」

先進的な感覚を持つ父親に育てられた子どももまた、先進的な感覚であった。
自分の子を売るような真似ができるか、と言って周りを威嚇して回るのにも疲れたらしい。

『別にいい、孫がベータでも……
 そうだ、ベータが当主で何が悪い』
『ならば法律を変えるか、デライト』
『そうですね父上』

そうして二人で新法案を提出するぐらい、疲れている。
法案自体は「まだ議論が尽くされていない」として審議にもかけられていないが、やつらを早いとこ田舎へ追いやらないと、成立するのは時間の問題……

「……成立しても、何ら問題は無いがな」
「ですが、反対勢力の方が大きいでしょう」
「そう、だからこそ、この二人をさっさと田舎へ引っ込めようという動きが出て来たんだ……貴族派の中に」
「あやしいですね?」
「そう、怪しい」

貴族派筆頭のシルウェストリス家を追い落とす……
そんな事ができる貴族家があれば、これほどシルウェストリス公が国政で苦労するはずがない。

つまり、シルウェストリス公の差し金によって、貴族派がそう動いているとも取れなくはない。

事と次第によっては、シルウェストリス公が現王に何か悪さをして、それがバレる前に親子共々逃げる……ようにも、見えなくはない。

「いきなり婚約解消を認めたあたりから、どうもおかしいんだ。あれほど反対していたのに」
「うーーん……言われてみれば」

言われてみなくても、明らかな急変である。
当時も違和感を相当感じていたはずだ。
都合が良いから無視していたが。

「息子のフェリスは腕の良い薬師だ。
 そしてその影には、あらゆる薬草関連の本を集め最高の調合器材を揃えたシルウェストリス公の力がある……
 と、言われてきた」
「……本?」
「そう、フェリスはどうやって薬学の勉強をしていたか、覚えているか?」
「えっと、確か……図書、館……?」

フェリスの薬学の勉強は、図書館で始まった。
パッセルと一緒に薬草の種類から一つ一つ覚え、生来のオタク的性質から、のめり込むように広く深く知識を蓄え、考察を繰り返し……

「そう、図書館だ。
 そして研究に明け暮れ、新しいを開発した。
 学園の器材でだ」
「器材も?」
「シルウェストリス公が購入した器材も本も、今フェリスが遠征に使っている馬車に積んである。
 当然それらは、嫁入り道具として西の辺境へ持っていく事になるだろう」
「……証拠も残らない?」

親の愛、の皮を被った証拠隠滅……
とも、とれなくはない。
だが……

「いや、そもそも何の証拠もない」

ここまで言うと、相当きな臭い話になる。
つまりシルウェストリス公が、現王に何かを盛って今の状態にしてしまった……ということだ。

「とはいえ盛ったのが抑制ポーションであるならば、ただ『本人の意思を確認せずに』というだけです。
 そこまでして投与しなければならなかった相応の理由があれば、大した罪には……多分」

実際、シルウェストリス公にはそうしなければならなかった相応の理由がある。

現王が捨てた愛人を優しく迎え入れる修道院も、そこに併設された王のご落胤の為の孤児院も、全部シルウェストリス公の経営だ。
『これ以上の人数は面倒を見きれない』のは相応の理由になるに決まっている。

「……シルウェストリス公を、追求するんですか?」
「いや、しない。
 しても意味がない」

そもそも、彼には大きな同情とそれ以上に大きな感謝しかない……とエバ王子。

「現王に最も振り回されてきたのはシルウェストリス公ご自身だ。
 その上で、王位簒奪も出来たはずなのに、俺やギルを次の王として教育してきた。
 ……うんざりするほどな」

度重なる指導・指導・指導そして説教。
2人をグレさせるぐらいにみっちりと。

シルウェストリス公にしてみれば、次の王こそ賢き王でなければと必死だったのだろう。
それでも……

「だが俺とギルを比べる発言は無かった。
 ギルの方が優れている、俺の方が良く出来る、というような言葉は一言も無かったんだ。
 俺とギルで得意不得意が綺麗に分かれているのも、公のおかげなのかもな」

兄の不得意を弟が、弟の不得意は兄が。
最初からそうなるように、彼が教育を施したのだとしたら……

「シルウェストリス公は、教育者としても優れていらっしゃるんですね」

彼もまた、先見の明がありすぎる人間なのだ。
まるで「この世界」を知っていたかのように……。

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