話が違う2人

紫蘇

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最後の学園生活

【東ルート側】ダンジョン再訪 2

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ダンジョンに行くため森の中を歩く一行の前に、ついにウサギの魔物が現れた。

「首を守りなさい!」
「えっ」
「危ない!!」

大人数のパーティーであるにも関わらず、ウサギは平気で新人騎士に飛び掛かる。
パッセルの細剣がすんでのところで間に合い、魔物を串刺しにする。

「良いですか、この前歯を見てください。
 この歯で頸動脈を狙いに来るのです、こうして首を守る防具を身に着けていても安心できません」

パッセルはウサギの魔物の死骸を見せながら、全員に指導を行う。

「動体視力がものを言います、跳んで来たところをこうして仕留められれば良いですが、さっきの動きが見えなかった方は見つけたら首を守る行動をお願いします」
「はい!」

本当にウサギは怖いのだ、と全員に刷り込みつつ進んでいくと、ダンジョンが姿を現わした。

「久し振りに来ましたが、やはり不思議な空間ですね」
「うわぁ……すごい」
「これがダンジョン……ですか?」
「てっきり洞窟みたいな場所だと……」
「洞窟は西のダンジョンだな」

どちらのダンジョンも経験したリュノ王子がそう発言し、少し場がしらける。
半分羨ましく、半分悔しいこの感じ……。
そんな彼らの様子に、パッセルは言う。

「西のダンジョンは専門の騎士団もいますし、冬休みに希望者を募って行くのもいいかもしれませんよ。
 今回で遠征のやり方も少しは頭に入ったでしょうし。
 ただその為には、ここで『ダンジョンの魔物』を少しでも知っておく事が大事です」

人間を敵視しているように、襲い掛かって来る性質。
異なる生き物が入り混じった形状。
どこからか湧いて出るような唐突さ。
何より毒を持ったものがいる事……

「それから、小さな魔物ほど気を緩めてはいけないという事です。
 では、柱と柱の間を進んで、あの地下へ続く階段まで進みましょう。
 ……メジロ、ここで待てるな?」
「ブフブフ」

パッセルは愛馬にそう話しかけると、手綱を離した。
メジロはポコポコと小走りに草が茂る場所へと行き、モサモサと草を食べ始めた。

「ではリュノ殿下、先頭をお願いできますか。
 ラディアと学生のみなさんは私と共に中盤を。
 最後尾は騎士の3名でお願いします」

そうして一行は、東のダンジョンへ踏み込んだ。
長い長い授業の始まりである……。


***


「パッセルさん、この敵、何が効くんですか!?」
「分かりません。
 だから片っ端から試して記録を取ります、リュノ」
「分かってる、始めてくれ」

そんな会話をしながら、パッセルは火・水・氷・風、リュノは土……と、威力は無いが的確に同じ位置を狙って魔法を当てて行く。

「どれも効かなかったら、どうすんですか!?」
「大抵は剣で斬れます」
「本当ですか!?」
「ええ、実体がある魔物は全て殴れますから」

まだ、最初の穴にも到達していないのにこの騒ぎ。
というのも、頭が猿で胴体が縞々模様、フサフサの尻尾が3本という謎の魔物が出て来たからだ。

「っと、どうやら一番効くのは火ですね」
「そのようだ!」
「では、火球で怯ませますから皆さん攻撃してみてください」
「え、えええ」
「ラディア、火球」
「はい、……火の球、こんぐらいの、当たれ!」

ラディアの魔法も今は、長い詠唱なしでも身振り手振りでイメージを作りだせるまでになった。

「上手くなってきましたね」

ダンジョンの魔物は弱点を攻撃するとほんの数秒動きが止まり、攻撃しやすくなる。

「はい、ありがとうございま、あ!!」

ただその時にきっちり仕留めきれないと……

ギャァアアア!
「うわ、ひぃ!」
「なんで、斬れない!?」
「くそ、なんだよこの尻尾……!」

魔物はきっちりと反撃してくる。
自分の攻撃が届く範囲ならどこへでも、だ。

「仕方ありませんね」

今回の魔物は尻尾の毛が見た目に反して堅く、それを振り回して攻撃してくる。
例えるなら無数の針が生えた鞭を振り回しているようなものだ。

「火、鞭となり拘束」
「パッセルさん!」

こんなところで怪我をしていたんじゃ困る。
パッセルは魔法を飛ばし敵をしっかり拘束してから、学生と新人騎士に指導する。

「肩に力が入り過ぎです!
 見た目に怯えてはなりません!」
「はい!!」
「まずは真っ直ぐ振り下ろす!」

その動きは、騎士になったものなら何千回と繰り返してきた動きだ。

「いつもの訓練を思い出して!」
「おおお!!」

いわゆる基本の素振りにはきちんと意味がある……
下手でも、敵にダメージを食らわせられる。

ギャァアアアア!!
「当たった、斬れた!!」
「よし、もう一回だ!」

未知の魔物と戦う事はいくらでもある。
それがダンジョンというものだ。
まだ見た事のない魔物がその辺にいる……

「こうなると、海のダンジョンがやはり気になりますね」
「冬は南か?」
「そうなるかもしれませんね」

ダンジョン初体験の若者たちが何とか未知への恐怖を克服し、魔物に立ち向かっている。
彼らを見ながら、パッセルは自分が初めて魔物を倒した時の事を思い出し……

「……彼らもきっと、自力で西へ行けるようになりますから」

と、小さく微笑んだ。

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