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ざまぁなど知らぬ!
過去最大級のおねだり
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その日の夕方、俺は戦々恐々とダリル様の私室に向かい、言った。
「ダリルさまぁ、ぼく国際会議を開きたいの♡」
「……………………………………………………………………………………」
「…すみません」
おねだりとかいう範囲の話ではない。
でも、セジュールに代わりに言いに行ってもらうのも違う気がして、自分でダリル様に言おうと思って…。
せめて可愛らしくお願いしたら、許されないかなと思ったんだけど駄目っぽい。
ダリル様は渋い表情を作った。
「内容が想像を超えすぎて……いっそ清々しい」
俺はただ縮こまるしかない。
だってこんな政治的な事おねだりするなんて、なんかさ…なんか駄目じゃん?
「すみません……」
「……………………………………………………………………………………」
だけどダリル様は、しばらくして渋い顔のまま言った。
「…お前が食糧問題をどうこう、と言い出した時点で父上にはご奏上している。
母上は既に親睦茶会の準備に入っている。
問題は無い…が、少しばかり早いな」
「それは…その…、レドモンド君が、いきなり…」
俺はダリル様に事の顛末を説明した。
レドモンド君はいつも話を大きくするんだ。
腕輪の時だって、いろんなやつをどの国でも買えるようにしたらどうかって…
生産体制も何もないうちから!
でもダリル様にも思う所があったのか、レドモンド君の名前を出した途端に何かが通じたらしい。
「は、さすが『雹雷』、その名の通り電光石火だ」
「へえー、レドモンド君、有名人なんですね」
「…お前、本気で言っているのか?」
ダリル様によると、レドモンド君はレドモンド・スフィーリア公爵と言って、アデア王国の護りを建国以来ずっと支えてきた武門の家系で、奇襲を得意とするスピード重視の部隊を束ねていて、グリフォンを一人で倒した事があるくらい強いらしい。
「へえー、すごいんだなぁ、レドモンド君」
「お前…なぜそこまで人の名を知らんのだ」
呆れた様にダリル様が言う。
だから俺は反論する。
「失礼な、名前と顔くらい一致します!
……爵位とか地位が一致しないだけで」
「……………………………………………………………………………………」
はい、すいません。
「…今すぐ、留学生の分だけでも全部覚えろ」
「…はい」
「国際会議までに、全部!」
「……はいっ!」
ちなみに現在留学生の数は68…
これは、厳しい…!
***
「…みんなこんなに偉い人だったんだな」
「何を急に仰っているんですか、お兄様」
「いや、パン爺から貰ってきた…名鑑?見てるんだけど、サリュール先輩、サリル国王の弟なのな」
「そうですね、末弟です」
「王様と20歳以上歳離れてるんだってさ」
「あそこはハーレム制で、後宮には女性が何人もいらっしゃるそうですよ」
「なるほど…」
「そんでカナデ君はおじいさんが将軍様なんだな」
「はい、長期戦にめっぽう強い駆け引きの天才と言われていますね」
「敵に回したくないなー」
って、どこも敵に回したくないけど。
「人間と争う前に、まず魔物だからな…」
「世界に5000種以上いますもんね」
「そうだな、人の住めないとこにも平気で住んでるから…」
「どうしてそんな事が可能なんでしょうね?」
「環境適応能力が高いんだろうな…
あと、魔力を動力にしてるって話」
「そうなんですね」
そうなんだよね、まるで生きてる兵器…
「って、セジュールは魔物詳しくないのか?」
「この国周辺に出る魔物と大型魔物については知っていますが、それだけです」
「そっか、まあそれくらい知ってれば充分だもんな」
そうかそうか…ふふっ。
「どうしたんですかお兄様?」
「いや、まだ俺がセジュールに教えられる事が残ってたんだなって思っただけ」
「そんなのいっぱいありますよ!
魔法の事は詳しくないですし、お兄様の方が優れているところはいっぱいあります」
「そっか…」
俺、兄としての自信がちょっと無くなってたとこだったから、何か嬉しい。
ここのところ、セジュールに助けられっぱなしで…。
「俺、ちゃんとセジュールの兄、出来てるか?」
「勿論ですお兄様!
お兄様は一生僕のお兄様です!!」
「そっか…ふふ」
なんかちょっと安心した。
出来の良い弟を持った兄も楽じゃないぜ…。
「ダリルさまぁ、ぼく国際会議を開きたいの♡」
「……………………………………………………………………………………」
「…すみません」
おねだりとかいう範囲の話ではない。
でも、セジュールに代わりに言いに行ってもらうのも違う気がして、自分でダリル様に言おうと思って…。
せめて可愛らしくお願いしたら、許されないかなと思ったんだけど駄目っぽい。
ダリル様は渋い表情を作った。
「内容が想像を超えすぎて……いっそ清々しい」
俺はただ縮こまるしかない。
だってこんな政治的な事おねだりするなんて、なんかさ…なんか駄目じゃん?
「すみません……」
「……………………………………………………………………………………」
だけどダリル様は、しばらくして渋い顔のまま言った。
「…お前が食糧問題をどうこう、と言い出した時点で父上にはご奏上している。
母上は既に親睦茶会の準備に入っている。
問題は無い…が、少しばかり早いな」
「それは…その…、レドモンド君が、いきなり…」
俺はダリル様に事の顛末を説明した。
レドモンド君はいつも話を大きくするんだ。
腕輪の時だって、いろんなやつをどの国でも買えるようにしたらどうかって…
生産体制も何もないうちから!
でもダリル様にも思う所があったのか、レドモンド君の名前を出した途端に何かが通じたらしい。
「は、さすが『雹雷』、その名の通り電光石火だ」
「へえー、レドモンド君、有名人なんですね」
「…お前、本気で言っているのか?」
ダリル様によると、レドモンド君はレドモンド・スフィーリア公爵と言って、アデア王国の護りを建国以来ずっと支えてきた武門の家系で、奇襲を得意とするスピード重視の部隊を束ねていて、グリフォンを一人で倒した事があるくらい強いらしい。
「へえー、すごいんだなぁ、レドモンド君」
「お前…なぜそこまで人の名を知らんのだ」
呆れた様にダリル様が言う。
だから俺は反論する。
「失礼な、名前と顔くらい一致します!
……爵位とか地位が一致しないだけで」
「……………………………………………………………………………………」
はい、すいません。
「…今すぐ、留学生の分だけでも全部覚えろ」
「…はい」
「国際会議までに、全部!」
「……はいっ!」
ちなみに現在留学生の数は68…
これは、厳しい…!
***
「…みんなこんなに偉い人だったんだな」
「何を急に仰っているんですか、お兄様」
「いや、パン爺から貰ってきた…名鑑?見てるんだけど、サリュール先輩、サリル国王の弟なのな」
「そうですね、末弟です」
「王様と20歳以上歳離れてるんだってさ」
「あそこはハーレム制で、後宮には女性が何人もいらっしゃるそうですよ」
「なるほど…」
「そんでカナデ君はおじいさんが将軍様なんだな」
「はい、長期戦にめっぽう強い駆け引きの天才と言われていますね」
「敵に回したくないなー」
って、どこも敵に回したくないけど。
「人間と争う前に、まず魔物だからな…」
「世界に5000種以上いますもんね」
「そうだな、人の住めないとこにも平気で住んでるから…」
「どうしてそんな事が可能なんでしょうね?」
「環境適応能力が高いんだろうな…
あと、魔力を動力にしてるって話」
「そうなんですね」
そうなんだよね、まるで生きてる兵器…
「って、セジュールは魔物詳しくないのか?」
「この国周辺に出る魔物と大型魔物については知っていますが、それだけです」
「そっか、まあそれくらい知ってれば充分だもんな」
そうかそうか…ふふっ。
「どうしたんですかお兄様?」
「いや、まだ俺がセジュールに教えられる事が残ってたんだなって思っただけ」
「そんなのいっぱいありますよ!
魔法の事は詳しくないですし、お兄様の方が優れているところはいっぱいあります」
「そっか…」
俺、兄としての自信がちょっと無くなってたとこだったから、何か嬉しい。
ここのところ、セジュールに助けられっぱなしで…。
「俺、ちゃんとセジュールの兄、出来てるか?」
「勿論ですお兄様!
お兄様は一生僕のお兄様です!!」
「そっか…ふふ」
なんかちょっと安心した。
出来の良い弟を持った兄も楽じゃないぜ…。
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