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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息
祝宴
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リブリーの言っていた宴は、あれから数日後に開かれた。
魔物の大増殖を何とか鎮め、ようやく各地から帰還した騎士団たちとその団員を労う宴だ。
その中には当然、ギゼルがかつて所属していた第27騎士団の名前もあった。
父は僕と弟を呼んで、言った。
「城から、招待状が届いた」
「はい」
「私は蟄居の身だ。
お前たちに代理を任せる、頼んだぞ」
「はい、父上」
僕は弟と一緒に父から招待状を受け取った。
それからまた父は言った。
「メルバ…心を入れ替えたお前なら、大丈夫だ。
トリルは初めての夜会だ、そちらも頼む」
「はい、父上」
トリルは僕の弟だ。
4歳年下の、しっかり者。
僕に代わって領地を治めるんだって言ってくれた…
だから僕は父に言った。
「ですが、トリルなら大丈夫です。
私よりも余程しっかり者ですから」
「っ、あにうえ!?」
「何だいトリル、僕が君を褒めたらおかしい?」
「だ、だって…」
そうだね、さっきまで僕たちは仲が悪かった。
学園で会っても目を合わせないくらいに。
「ふふ、言いたいことは分かるよ?
だけどこれは本音…初めて明かす、僕の本音だ」
長男の僕を差し置いて領主になる夢を語る弟は、その夢を語れる程に頭が良く、素行も良い。
以前の僕にはその全てがあてつけに見えて、いい子ぶってるだけだなんて周りに言ってみたり、挨拶を返さなかったり、同じ馬車で登校するのを拒否したり、とても子どもじみた事ばかりしてた。
だけど、それは全部間違いだった。
間違いは正さなくちゃならない。
その上で、この間違いを侵さざるを得なかったと言い訳できる正当な理由を、僕はこれから提示していくつもりだ。
「トリルが良き領主になろうとしてくれるから、僕はこれからのリブリー殿下を全力で支えられる。
今までだってね?
トリルがいるから僕は遊びまわる事ができた。
トリルのおかげで色々と学ぶことが出来て、それで殿下のお役に立てる力を得た」
ゴシップの作り方、消し方、人を誑し込む技術、握った弱みの使い方…等々。
策謀渦巻く宮廷で、僕はこの経験を活かすと決めた。
そうすれば少なくとも、この為に敢えて遊んでいたと言い訳が効くだろう。
「トリルの、おかげだよ」
そう、僕は少し前まで、弟が真面目に学ぶのは僕への当てつけだと苦々しく思っていた。
だけど、今は違う。
見方を変えれば、弟のおかげで…僕は魔術塔のある、王都にいる事が出来る。
ギゼルの側にいて、彼をくだらない政争から守ることができるんだ。
貴族として、貴族らしいやりかたで、彼を悪意から守ることができるんだ。
弟には感謝しかない。
「だから……有難う、トリル。
今まで冷たくあたって…ごめん」
「兄上…っ!」
弟が僕に抱き着いて来て、僕は弟を抱きしめた。
***
城に着いて大広間へ入り、同じ様に招かれた人たちに挨拶をしたり歓談したり…。
そんな中僕は、今までの非礼を詫び、不誠実でいた事を詫び…。
そんな僕を大人たちは笑って許してくれたり、もしまた不誠実な真似をしたら許さないぞ、と脅されたり…。
学友はみんな、これからの行いをしっかり見ていますからね!と厳しくも温かい言葉をくれた。
そうこうしてる間に宴は着々と準備が整い、ついに騎士たちが広間へと入ってきた。
騎士の宴の習わしにより、いつでも戦いに赴けるようにと全員が軽装備ながら鎧を纏っている。
勿論腰には剣を…人によっては槍を、弓を持っていたりする。
彼らを見て、トリルが呟く。
「兄上、騎士様…………素敵ですね」
「そうだね、彼らのおかげで魔物に国が飲み込まれずに済んだんだ。一人一人が英雄だよ」
「はい…………素敵です………」
どうやら弟は歴戦の騎士達に興味津々。
なるほど、ああいうのが好みだったのか…
そりゃ学生如きに浮ついたりしないはずだよ。
「勇気を出して、話しかけてみたら?
リブリー殿下のお話の後でね」
「…うまく、はなせるでしょうか…」
「僕も付いて行くから、安心して」
「…はい…っ」
どうやら弟にも恋の季節がやってきたみたい。
しっかり応援してあげなきゃ!
「それに、騎士様がトリルの伴侶になってくれたら、領軍にいい影響があるかもだし?」
「おっ、おにい、は、はんりょって、そんなっ」
「うふふ、冗談だよ、じょうだん」
こうしてみると、トリルって可愛いな。
さすが僕の弟…うふふ。
「あ、そうだ、そういえば、兄上の想い人も、騎士団の方なのですよね?」
「うん、そうなんだ…でも、姿が見えないな」
「あまりこういう場を好まれない方なのですか?」
「うん…でも、戦友の凱旋だし…あ」
その時、少しだけ扉が開いてから、閉まった。
あの蒼髪がちらりと見えた気がして…
僕はそっちに行きたかったけれど、丁度その時にリブリーが壇上に現れて…
僕は彼を追うことが出来なかった。
魔物の大増殖を何とか鎮め、ようやく各地から帰還した騎士団たちとその団員を労う宴だ。
その中には当然、ギゼルがかつて所属していた第27騎士団の名前もあった。
父は僕と弟を呼んで、言った。
「城から、招待状が届いた」
「はい」
「私は蟄居の身だ。
お前たちに代理を任せる、頼んだぞ」
「はい、父上」
僕は弟と一緒に父から招待状を受け取った。
それからまた父は言った。
「メルバ…心を入れ替えたお前なら、大丈夫だ。
トリルは初めての夜会だ、そちらも頼む」
「はい、父上」
トリルは僕の弟だ。
4歳年下の、しっかり者。
僕に代わって領地を治めるんだって言ってくれた…
だから僕は父に言った。
「ですが、トリルなら大丈夫です。
私よりも余程しっかり者ですから」
「っ、あにうえ!?」
「何だいトリル、僕が君を褒めたらおかしい?」
「だ、だって…」
そうだね、さっきまで僕たちは仲が悪かった。
学園で会っても目を合わせないくらいに。
「ふふ、言いたいことは分かるよ?
だけどこれは本音…初めて明かす、僕の本音だ」
長男の僕を差し置いて領主になる夢を語る弟は、その夢を語れる程に頭が良く、素行も良い。
以前の僕にはその全てがあてつけに見えて、いい子ぶってるだけだなんて周りに言ってみたり、挨拶を返さなかったり、同じ馬車で登校するのを拒否したり、とても子どもじみた事ばかりしてた。
だけど、それは全部間違いだった。
間違いは正さなくちゃならない。
その上で、この間違いを侵さざるを得なかったと言い訳できる正当な理由を、僕はこれから提示していくつもりだ。
「トリルが良き領主になろうとしてくれるから、僕はこれからのリブリー殿下を全力で支えられる。
今までだってね?
トリルがいるから僕は遊びまわる事ができた。
トリルのおかげで色々と学ぶことが出来て、それで殿下のお役に立てる力を得た」
ゴシップの作り方、消し方、人を誑し込む技術、握った弱みの使い方…等々。
策謀渦巻く宮廷で、僕はこの経験を活かすと決めた。
そうすれば少なくとも、この為に敢えて遊んでいたと言い訳が効くだろう。
「トリルの、おかげだよ」
そう、僕は少し前まで、弟が真面目に学ぶのは僕への当てつけだと苦々しく思っていた。
だけど、今は違う。
見方を変えれば、弟のおかげで…僕は魔術塔のある、王都にいる事が出来る。
ギゼルの側にいて、彼をくだらない政争から守ることができるんだ。
貴族として、貴族らしいやりかたで、彼を悪意から守ることができるんだ。
弟には感謝しかない。
「だから……有難う、トリル。
今まで冷たくあたって…ごめん」
「兄上…っ!」
弟が僕に抱き着いて来て、僕は弟を抱きしめた。
***
城に着いて大広間へ入り、同じ様に招かれた人たちに挨拶をしたり歓談したり…。
そんな中僕は、今までの非礼を詫び、不誠実でいた事を詫び…。
そんな僕を大人たちは笑って許してくれたり、もしまた不誠実な真似をしたら許さないぞ、と脅されたり…。
学友はみんな、これからの行いをしっかり見ていますからね!と厳しくも温かい言葉をくれた。
そうこうしてる間に宴は着々と準備が整い、ついに騎士たちが広間へと入ってきた。
騎士の宴の習わしにより、いつでも戦いに赴けるようにと全員が軽装備ながら鎧を纏っている。
勿論腰には剣を…人によっては槍を、弓を持っていたりする。
彼らを見て、トリルが呟く。
「兄上、騎士様…………素敵ですね」
「そうだね、彼らのおかげで魔物に国が飲み込まれずに済んだんだ。一人一人が英雄だよ」
「はい…………素敵です………」
どうやら弟は歴戦の騎士達に興味津々。
なるほど、ああいうのが好みだったのか…
そりゃ学生如きに浮ついたりしないはずだよ。
「勇気を出して、話しかけてみたら?
リブリー殿下のお話の後でね」
「…うまく、はなせるでしょうか…」
「僕も付いて行くから、安心して」
「…はい…っ」
どうやら弟にも恋の季節がやってきたみたい。
しっかり応援してあげなきゃ!
「それに、騎士様がトリルの伴侶になってくれたら、領軍にいい影響があるかもだし?」
「おっ、おにい、は、はんりょって、そんなっ」
「うふふ、冗談だよ、じょうだん」
こうしてみると、トリルって可愛いな。
さすが僕の弟…うふふ。
「あ、そうだ、そういえば、兄上の想い人も、騎士団の方なのですよね?」
「うん、そうなんだ…でも、姿が見えないな」
「あまりこういう場を好まれない方なのですか?」
「うん…でも、戦友の凱旋だし…あ」
その時、少しだけ扉が開いてから、閉まった。
あの蒼髪がちらりと見えた気がして…
僕はそっちに行きたかったけれど、丁度その時にリブリーが壇上に現れて…
僕は彼を追うことが出来なかった。
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