【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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本気のざまぁを見せてやる!

王子様は、心置きなく結婚したい 7

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先日お爺様から貰ったばかりの通信用腕輪の宝石が一つ光った。

「兄貴、俺だ、グヴェンだ」
「…急に、どうした」
転売屋ハエの駆除ってどうなった?」

この通信用腕輪の困ったところは、周囲に声が漏れる事だ。
グヴェンが隠語を使って話をするという事は、誰かが近くにいるのだろう。

原因はいけいを究明するのに、印をつけて観察中だ。
 関係があるかは分からないが、小鳥ロンバードのいたがくえんさざれ石平民に、いくつかガラス玉元貴族の子が混じって、それを集めていたカラス黒幕がいるらしい」

学園は一般に開かれている。
入学するには試験を受けて合格する事、それ以外に何も要件を必要としない。
身分はもちろん、年齢すらも…
だから30代のスフィーリア公が留学して来られる。
30過ぎの学園生は珍しいが居なくもないし、20代後半の生徒は少なくない。
むしろ平民の生徒に限れば、18歳を過ぎてから通う者の方が多いのだ。

黒幕はそれを利用している。

「そのガラス玉を小鳥にぶつけたって事?」
「そう、小鳥を追い詰める為にな」

ロンバードが入学する前後、父の創設した未成年保護施設から何人もがこの入試を突破した事が分かっている。
改革の混乱で親の逃亡資金のために売り飛ばされ、行先が無くなった子を保護するための施設…

当時の孤児院にしては珍しく三食きちんと食べられて、個室は無いものの個人のベッドがあり、大人数制ではあるが教育もつけてもらえる施設だ。
他の孤児からしてみれば、羨ましくて仕方がなかっただろう。
だが保護された彼らには不満しか無かった。

何故なら、彼らは元々貴族の子息だったからだ。

贅沢な服を着て贅沢なものを食べ、一人部屋の贅沢なベッドで眠り、良質な個人教育を窮屈だと嘆く…
そんな生活をしていた彼らからしてみれば、それは生活という屈辱だったのだろう。
実家が取り潰され、平民に事も含めて。

その彼らが、一般用の入学試験を受けてまで学園に来たのは何故か?

平民という立場を利用し、国民を代表しているかのように見せかけ、ロンバードに「意見」するためだ。

ロンバードにしてみれば、自分が王子妃になる事を「国民」に否定されているように聞こえるだろう。
だが実際のところ、平民出身の学園生でもロンバードの事を好意的に受け止めている方が多数派だ。

ロンバードの耳に「国民からの」賛成の言葉が入らないのは、賛成していることを態々わざわざ言いに来るものがいないからだ。
取り入ろうとしている貴族令息ならともかく、平民出身者は考えたこともなかろう。

だから自然と、ロンバードの耳に入る「否定」の言葉は平民出身者からのものになり、「賛成」の言葉は貴族子息からのものになる。

おまけに、ロンバードの友人は大多数が魔術師。
そしてロンバードを次の魔術局長にしたい彼らは、王子妃より魔術局長になる道を推していた。
それはもうあからさまで、本気にする方がどうかしている状態なのだが、追い詰められたロンバードの心には素晴らしい逃げ道に見えたのかもしれない…

「こんな簡単なからくりなのに、俺はロンバードの心を守ってやれなかった…」

つまり分け隔てなく物を考えるロンバードには、数の少ない貴族の賛成意見より、大多数の国民の反対意見の方が刺さったのだ。

ロンバードの目は、いつも民の方を向いている。
対する俺は、どうしても貴族達の言葉や行いに気を取られやすい。
宮廷での権力争いや派閥調整に頭を悩ませる事が多いからだ…というのは、ただの言い訳にしかならないだろうが。

「小鳥は今、どうしてる?」
「遠くから庭を眺めて鳴いている」
「そうか」

…俺と結婚したくない、と言い出したのはいつだったか。
「ぱっくぱっかぁ」という旅人になって、世界を放浪するのだと…
そして旅先で死ぬのだと、暗に示していた。
だから留学生たちは「我が国で生きろ」と誘うし、俺たちは「この国で生きろ」と言う。

ギゼル殿に至っては、どうにか「死ぬ」事を思い止まらせたくて迷走している。
無理して学園に通わなくて良いと言ってみたり、出来る限り通えと言ってみたり…
日によって言う事がばらばらだ。

「…遠からず安心できる庭に戻す。
 安心して飛び回れる庭に…」
「ああ、頼むぜ兄貴。
 小鳥はこれ以上逃げて行かないように見張っておくよ。
 カラスが悪さしにくるかもしれないしな」
「…すまんが、よろしく頼む」

そうか、泣いているのか…ロンバード。
俺の事を思って泣いてくれているのか?
それとも、ただ悲しくて泣くのか…。

「一つ伝言を頼めるか、グヴェン」
「…ああ」
「一度でいいから…手紙が、欲しい」
「…分かった」

忘れない。
忘れるものか。

俺が隣にいて欲しいのは、お前だけだ。

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