【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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向かえ!大団円

意外と役立つものらしい

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「ロンバード様、ご無事で、」
「危ない!」

駆け寄ってきたクレーさんの向こうから魔法が飛んでくる。
クレーさんは首元の何かを掴む。
魔法がクレーさんの手前で掻き消える。

「なっ、なぜ!?」
「大人しくしろ!!」
「カンテさん!?」

魔法を撃った魔術師はカンテさんの手によって取り押さえられ、気絶させられる。

「助かりました、ロンバード様!」
「え!?」
「まだいるぞクレー、気を抜くな!」
「分かって、る!」

クレーさんが見えない速さで手を横に振る。

「ぐぁっ!?」
「うぐっ!」

すると2人ほどの人が倒れる。
スタンガンを食らわされたみたいに。
クレーさんは2人を一気に縛り上げる。
カンテさんが叫ぶ。

「首魁はこの下ですか!?」
「ああ、うん、そうです!」
「クレー!」
「おう、行け!」

カンテさんは俺が出てきた穴へ急いで入っていく。

「…大丈夫かなぁ」
「大丈夫ですよ、暗闇で行動する事には慣れておりますからね」
「あ、そうなんですか」

何か知らんが、俺の護衛がスゴイ。

「さ、外へ出ましょう、ロンバード様」
「はい、あ、でも、カンテさん…」

一人で行って、大丈夫かな。
いや、カンテさんが強いのは知ってるけど…
バレンって人、多分魔法使えると思うし…

「大丈夫ですよ、いざとなったら治癒魔法がありますから」
「えっ、カンテさんって魔法使えたんですか!?」
「ええ、これのおかげで、一回だけ」

そう言うとクレーさんはポケットから俺の飴を取り出して見せた。

「突入する前に、1つ食べましたから」
「意外と役に立ってる!」
「それからこれも」
「あっ!」

クレーさんがポケットから取り出したそれは…

「ミリエッタ様の耳飾りに、紐を取り付けましてね」
「もしかしてそれ、試作品のやつ…」

ミリエッタさんのイヤーカフを作った時に何個か出来た失敗作で、見た目がごつすぎるし何より効果がデカすぎるからって、魔術塔の俺のデスクの引き出しにしまい込んでた…
なんでここに!?

「ギゼル様が『使えるから持っていけ』って」
「親父が!?」
「魔力が無いと使えないかもしれないから、これも…って」
「あっ…!」

クレーさんのベルトには、ちゃっかり俺の髪の毛紐が…!

「ロンバード様のお部屋は何処もとんでもない場所ですね。
 誰もが入りたがるはずですよ」

…そういって笑うクレーさんの首には、道すがら量産した「ミリエッタさんのネックレス」がかけられていた。

***

クレーさんに連れられて部屋を出る。

「急いで屋敷を出ましょう!」
「はい!」

廊下には怒号と叫び声が響き、大捕り物の真っ最中だと知らせる。
俺はクレーさんに付いて走りながら、聞く。

「…この屋敷、一体」
「元はマイアンを治めていた貴族の邸宅です」

聞けば魔物の大増殖の折に、先立つものが無かった領主様がこの屋敷を抵当に入れて借金したのだそうだ。

「今はどこぞの商人の持ち物でしてね」
「じゃあ、その貴族の人は今…」
「ええ、別の場所で領主になられて、今はご子息にその地位をお譲りに」
「そうなんですか!?」

クレーさんによると、ここの領主様は元々メレゲーン伯爵という魔法無し貴族で、魔物の大増殖の際に領民を守るための領軍が足りず、傭兵を雇ったところお金が底を尽き、ついには屋敷を抵当に入れて借金をしたのだそう。
領民からは『屋敷要らずの慈悲領主様』と称えられて、領地替えの時は惜しむ声も大分聞かれたのだとか…

「メレゲーン伯は『魔法が使えれば領民を守れたのに』と前王に領地と爵位を返上されたんです」
「立派なお方がいたんですね」

こいつら、そんな領主様が住んでいた屋敷で、なんちゅうことするかね。
あの魔法が使えない貴族を馬鹿にした発言、メレゲーン伯爵が聞いたら大怒り…
ん?

「あの、歴史学のメレゲーン教授って…」
「そうです、ご本人ですよ!」
「そうだったんだ!?」

俺に「特別扱いはしない」って言ったあの教授。
もしかして、厳しかったのは「ギゼルの息子だから」じゃなくて…

「…魔法が使えるから、だったのか…」
「厳しかったんですか?」
「ええ…まあ」

クレーさんは「そうでしょうね」と言って、続けた。

「元魔法持ち貴族の領地を任されたんで、彼らの統治の結果を目の当たりにしたんでしょうね」
「……そっか」

別に、俺だからじゃないんだ。
魔法持ちには全員厳しくするって事だったんだ…

なーんだ、そっか、そういう事か。

「良かった!」

ひがんでたのは、俺の方だった。
それが少しだけ分かって…

俺はちょっと、救われたような気がした。
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