弟子と師匠と下剋上?

紫蘇

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第三章/家と土地

精霊と家づくり

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「窓用のガラスもだいぶ出来たね」
「はい」
「窓は一部屋に一つは必要だから、頑張って作ってもらおうね」
「はい、この見本を木の精霊モビの子と風の精霊フーシェの子らに見せて、手伝ってくれるよう頼んでみるんですよね」
「そうそう、木枠の材料を作って貰えるだけでも大分助かるからね」

あれからどんな家を建てたいかを話し合い、部屋数を決め、間取りも決めた。
玄関があって、入って正面に玄関ホール、左右にのびる階段…。
一階には台所と食事をする場所。
食糧庫に洗濯場、応接室が1つに4室の空き部屋…急なお客さんが来た時に対応できるように。
二階には寝室と書斎、書庫、それから子ども部屋。

「かなり豪華な建物だけど、頑張って作ろうね」
「はい」
「じゃあ、僕は家の土台をお願いして作ってもらうから…」

家を建てる時、大事なのは基礎。
まず地面が水平になるように均して、地面を固め、石で基礎を作る。

その時大事なのは排水路だ。
水は魔法で確保できるけど、汚水を魔法で無かった事にするのは難しい。
汚水を引き受けてくれる精霊も魔物もいないから、これは人間の手でやるしかない…

「元々、農地ということは、排泄物は肥料にも活用してたんじゃないかなと思ってね。
 下水処理の装置が残ってないか調べたんだ」
「そんなものがあるんですか」
「うん、あったよ。使えるように整備しておいたから、そこへ汚水を流そう」
「はい」

僕は土の精霊にお願いして、ここまでを魔法で作る。

「<土の精霊クーリエ、どうか願いを聞いてください。
 僕たち、ここに家を建てたいんです、だから手伝って頂けませんか>」
<んん~~、なんだタビトか。家を作るのか?>
「<はい、この土地に、ロープを引いてあるので、そこを平らにならして…>」
<分かっている、一度やったからな!
 図面を見せてみろ…ああ成程、任せておけ>

家の造りを言葉で伝えるのは難しい。
だからこうして絵を描いておけば、よく伝わる。
家の構造にも詳しいクーリエ様なら、すぐに理解して下さるしね。

地面がズズズと動き、平らになって、そこへ基礎、排水路、土台までが出来上がっていく…
大サービスだなあ。

<んん~~こんなものか?>
「<ありがとう土の精霊クーリエ、ここまで完璧に作ってしまうなんて流石です>」
<んん~~もっと褒めるがよいぞ>
「<はい、土の精霊クーリエ、あなたはとっても力持ちで格好いいです>」
<んん~~それほどでもない>

土の精霊クーリエはご機嫌になり、体を揺らす。
そうして後で頼もうと思っていた柱までついでに作ってしまった。

<んん~~あとは木か?草も呼ぶか?>
「<草の精霊シュイは今お忙しいのでは?朝日が出たばかりですし>」
<呼ばぬ方が怒るぞよ!ものを作るというのは格別の面白さであるからな>

どうやら、精霊たちの間に今モノづくりブームが来ているらしい。
これなら領地を区分けした後の各目印づくりにもご協力頂けそうだ。

<んん~~ところでお前、身重じゃないか>
「<はい、おかげさまで…>」
<んん~~我の子を産んだタビトなら大丈夫であろう!後で木の実を届けさせよう>
「<いつもありがとうございます>」
<んん~~木のもお前に産ませたのだ、気にするでない>
「<ははは>」

どうやらエルデ君の言う通り、精霊の子をわりと頻繁に産んでいた僕。
まあ、僕に限らず、精霊と意思疎通できる人なら大体一回は出産を経験するものらしいけど。
ということは、僕以外の男の人でも子どもを産める体にすることが出来るという事で…。

ご学友の方々に報告したほうが良さそうな気がする。

<んん~~次は木か?また呼ぶが良いぞ>
「<ありがとうございます土の精霊クーリエ>」
<んん~~>

力のかかる柱は石で。
それ以外は木…ということで、今度は木の精霊モビにお願いする。

木の精霊モビの子らはエルデ君のお願いに順調に応えてくれているようだし、きっと大丈夫…

「<木の精霊モビよ、私の願いを>」
<むー、遅いぞタビト!柱と床だろう?>
「<木の精霊モビはさすがですね、建築家のようです>」
<むー、もっと褒めるのだ>
「<木の精霊モビの叡智には恐れ入ります>」
<むふー、もっともっと>

精霊は褒められるのが好きだ。
人間も同じだけど、褒めろとはっきり要求するところが僕はとても好きだ。

順調に家の建設は進んでいく。
精霊の力を借りると、正に人ならざる速度で家が建ってしまう。
どこに誰の力を借りるか、とか、どうして貰いたいか、を正確に伝えるだけでいい。

あっちではエルデ君が窓を頼んでいる。
見本を見せて頼めば、難しい説明が無くても大丈夫。
あとは精霊と楽しく作業が出来れば…。

<むー、できたぞタビト!>
「<早い!すごいです、木の精霊モビ!ありがとうございます>」
<むーふふ、もっと褒めるのだ>

僕は木の精霊モビを褒める言葉を探しながら、そろそろ向こうを手伝いに行こうかな…と考えていた。

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