先祖返りの君と普通の僕

紫蘇

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先祖返りの君と普通の僕

野球部と碧

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「高原先生、その人は…」
「ああ、こちらの方はね、今日から研修で学校に来てる…」
「高原 あおいだ。宜しく」

放課後、野球部の練習にも顔を出した碧。
突然現れたオーラのある女性に、野球部は興味津々で話しかける。

「碧さんは、高原先生の親戚ですか?」
「いや、血のつながりは無いな」
「へえー、じゃ偶然だ」

河川敷のグラウンドに行くまで質問大会は続き、河川敷についたらついたで今度は商店街チームを加えて盛り上がる。今日は野球の練習どころでは無くなってしまった。

「ところで、他の部は随分と練習をするようだが、野球部は練習をしないのか」
「するよ、するする!だけど、俺たちは全国大会とかが目標じゃないからさ」
「ほう?では何が目標なのだ?」
「それはね、野球を通じて色んな人と仲良くなることだよ!」

こうやってみんな仲良くなったんだよ。
野球仲間の繋がりで、学校の中だけじゃなくて、色んな人と知り合うんだ。
お祭りも一緒にやったんだよ。
シェルター巡りとかもしたよな。

ワイワイと今までの活動を自慢する生徒たち。

「そうか、スポーツというのは強くなければならんというものではないんだな」
「そうそう、楽しみであり健康維持だな」
「試合に勝ちたい気持ちはあるけど、そればっかりじゃ続かないからな~」
「みんながみんなプロになりたいわけじゃないんだ。野球がしたいだけなんだよ」
「ふむ…」

どうやら碧にも彼らの言葉は伝わったらしい。

「どうだい碧さん、ちょっと野球やってみないか?」
「ふむ、どうすればいいんだ?」

突然現れた迫力ある美人に、「わずかな下心」と「親切心」と「野球を布教したいという熱い思い」が混ざったキャプテンが、バットの持ち方から丁寧に指導する。

「おっちゃん、鼻の下伸びてるぞ~」
「うるせえ小僧ども!」

和気あいあいを具現化したような交流は、碧の心に届いただろうか。

高原先生は、彼女がティーバッティングであらぬ方向に球を飛ばすのを見ながら、そう思った。



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