先祖返りの君と普通の僕

紫蘇

文字の大きさ
63 / 88
先祖返りの君と普通の僕

謎の女性

しおりを挟む
今朝の職員室は一種異様な雰囲気であった。
理事長から簡単な説明があった後、研修に来たという女性は挨拶をした。

「今日から暫く世話になる、高原あおいだ。
 宜しく頼む」

凡そ社会人がする挨拶ではない。
だが、彼女の青い目に物言える職員もいなかった。
彼女の質問にはできるだけ答えるように、と理事長からお達しがあり、朝の会議は終了した。

幸田先生は高原先生に話しかけた。

「不思議な方ですね!あの方も高原さんですか!」
「そうですね、それにしても苗字が一緒なのってちょっと不便なんですね」
「確かにそうですね!名前でお呼びするのも馴れ馴れしい感じですし!私、女性に対してそういう態度をとるのはどうにも受け付けなくてね!
 なので暫く、高原先生を一郎先生と呼ばせてもらいますね!宜しくお願いします!」
「あ、はい…」

向こうは先生でも無いのだが、生徒からみれば学校にいる大人はみんな先生である。
仕方がない。

「さてと!朝の授業に参りましょう!」
「そうですね」
「私も一緒に行こう」
「ふえっ!!」

急に背後に現れた碧にびっくりする高原先生。

「おや、高原さんは一郎先生の授業を見学されるんですか?」
「ああ、そうだ。今日一日、よろしく頼む」
「ええっ、ああ、はい…」

波乱の予感がする。

***

「一郎、次の授業は?」
「次は5組ですね」
「同じ内容を繰り返すことに苦痛はないのか」
「生徒の反応はまたそれぞれですから、内容は同じでも補足の部分を変えたり…」

2人で話をしながら1つ上の階へ上がる。
いつもながらそこには…

「あっ、高原先生…?」
「あ、樫原君」

高原先生を待ち構えている樫原君がいる。

「…その人、誰?」
「えっと、今日から研修に来られた方で…」
「高原あおいだ」

同じ苗字であることに奇妙な驚きを感じる樫原君。

「ふむ、君は先祖がえりか。ここには獣人の生徒が多いと聞いたが本当だな」
「…どうも」

自分の事を訝しむ樫原君に対し、碧は堂々と告げた。

「私は暫く一郎と行動を共にすることにした。今後また君に会う事もあるだろう、宜しく頼む」
「えっ、暫く!?」

聞いてないよ、と慌てる高原先生に対し、碧は言った。

「最も参考になりそうなのは一郎だし、こういう慣れない場所では一郎の姿が側にあるのは心強いからな」
「あ、はあ…」

何だこの女…。
樫原君は彼女を、初対面で敵と認識した。

「名前で呼ぶような間柄なんですね」
「ああ、その事か。
 同じ苗字だしその方が都合がいいだろう」
「ふ~ん…」

一触即発の雰囲気に、高原先生が待ったをかける。

「あ、ほら、授業始まっちゃうから…。
 行きましょう碧さん、樫原君も、またね」
「……うん」
「時間に遅れるのはいかんな、行こう一郎」

これみよがしに「下の名前で呼び合う」のを見せつけられて、樫原君はますます碧に対して嫌悪を募らせた。

「……あんなやつ、関係ない……」

そうは言ってみたが、
愛する人を獲られたようで…

樫原君はかつてないほどイラついた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】取り柄は顔が良い事だけです

pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。 そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。 そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて? ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ! BLです。 性的表現有り。 伊吹視点のお話になります。 題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。 表紙は伊吹です。

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

処理中です...