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双子の愛情
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私、紗羅と妹の深羅は双子どうし。
でも、双子と言っても何でも息がピッタリとか、考え方が一緒、とか言う事は全くない。正直、そんな事が出来る双子が居るなんてことが信じられない。
「紗羅、もっとそっち行って」
「深羅こそ、そっち行ってよ」
今日もまた争いが始まる。
争いの種はいつも小さな事だ。
あれ取ってきてとか、先に手を洗う、とか。同じような事を何度も何度も繰り返しては決着を付けられずにいた。
今日はテレビを見るためのソファーの場所の奪い合いだ。
ソファーは四人くらい余裕で座れる長さがあるけれど、何故だかお互いに譲らない。
そのうちお互いに諦めてそのままの体勢でいるんだけれど。何故だか安心したりする。
気のせいだ、そう思っても、何故だか深羅と争っては流れ。この繰り返しだ。
今日もその例には漏れず、
「狭いんだから、もっと考えてよね」
「深羅こそ、我が儘なんだから!!」
スペースは十分にあるのに。
でもお互いに譲らずにずっとそのくっついたままの体勢だった。
何故だかこれが一番しっくりくるから。
『今日はいい双子の日! 日本の双子の――――』
深羅とくっつきながらテレビを観ていると、双子についての特集をやり出した。テレビをぼ~っと見ながら心の中で、
(そんなことあり得ない!)
(絶対うそうそ!!)
と突っ込まずにはいられなかった。
でも、心の奥ではなんだかもやもやが貯まっていった。
いつも争っているときとは違うもやもやが。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
紗羅とは仲が悪い。
いつからかは分からないけれど、気付いたら仲が悪かった。
よく周りから、
「双子って、考えてる事とか一緒だったり、行動パターンが同じなんでしょ?」
とか言われるけれど、そんな事は絶対ない。
私が紗羅と争うのは単になんだかそうしなければ、という気持ちが強いから。
別に嫌いな訳じゃない。
普通の姉妹だってそういう人も多いはずだ。
でも、紗羅がいなかったら私は私でいなくなる。
そんな気がいつもする。
紗羅がいるから、紗羅と争う事で私というものが成り立っている気がする。
争いを始めたり、途中でうやむやにするのも全部私からだ。
だって、そうもしないと私の事なんて忘れられてしまいそうだから……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
また深羅がちょっかいをかけてくる。
そのくせすぐに自分からうやむやにする。
いつもなら気にしない普通の出来事。でも、今日はなんだか違った。
テレビの双子の特集を見たからかもしれない。
気付いたら思ったよりも強い口調で責めるように言っていた。
「なんでいつも変な事をしてくるの!? いい加減にしてよ。文句があるならはっきり言いなさい!」
本当はなんでいつもしてくるの? と聞くつもりだった。
でも、何故だかこうなってしまった。
ごめんね。そう言いたくても口が動かない。
どうしてだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
紗羅から責められた。
それだけで不意に涙が溢れだしてくる。
「み、深羅!?」
紗羅が慌てた様子で近付いてくる。
背中をさすろうとでもしてくれたのか、手を伸ばしてきた。
でも私は無意識に、そして感情的にその手を払った。
「……っ!!」
「深羅……?」
酷いことをされたはずなのに、紗羅は怒りもせず、ただ立ち尽くしていた。
でも、冷静さを失った私にはその様子が目に入っていなかった。
(紗羅に嫌われた。紗羅に捨てられる……)
胸が張り裂けそうだった。
私は紗羅に向かって次々と言葉を投げる。
「紗羅は……お姉ちゃんは私なんかどうでもいいんでしょ!?」
「なっ……。深羅……?」
「私は、わたしはお姉ちゃんに忘れられないように、ずっと一緒にいたくて…………。なのに、なのに!!」
「…………」
洪水のように言葉が溢れてくる。
言葉はぐちゃぐちゃ。何を言っているのかも分からないような涙混じりの声に、紗羅はじっと私を見つめていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お姉ちゃんは私なんかいなければいい、そう思ってるんでしょ!?」
もう何年も前に言われなくなった“お姉ちゃん”という言葉。
それを繰り返して深羅は自分の想いをぶつけてくる。
「…………」
「お姉ちゃんにとって私はいらないっ……!?」
声を荒げる深羅に思いっきり抱き着く。強く、固く。
落ち着かせるように。
深羅の顔を私の胸に押しつけるようにして抱きしめる。心臓の鼓動を聞かせるために。
「落ち着いた……?」
「お姉ちゃん……。なんで…………?」
若干落ち着きを取り戻した深羅にゆっくりと、しっかり言い聞かせるように、そっと耳元で言葉を囁く。
“大好き”
そう伝えるために。
やっと分かった。ずっと溜め込んでいたモヤモヤとした感情は、愛。
今更のように気付いた。
愛なのだと。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お姉ちゃんに抱きしめられた私は、お姉ちゃんの胸から聞こえる優しい心臓の鼓動によって徐々に落ち着いてきた。
「落ち着いた……?」
「お姉ちゃん……。なんで…………?」
お姉ちゃんは、私の耳元にそっと唇を寄せると、そっと言葉を囁く。
「深羅、たった今やっと気付いた。……私は深羅を愛してる。そう、ね」
「いま、なんて……?」
「愛してる。何度でも言うわ。あなたを愛してる。家族として、姉として。だから私が深羅を嫌いになる訳がないし、見捨てるなんてありえない」
「でも……わたしっ……!! ……ひっく、うわぁぁぁん、お姉ちゃん……!!」
お姉ちゃんに抱きしめられたまま私は号泣した。
お姉ちゃんは服が汚れるのに、気にしないでずっと抱き締めていてくれた。
「わたし、ううっ……わたしもぉ、お姉ちゃんの事、大好きぃぃ!!」
「うん」
「わたしも、お姉ちゃんを愛してる!!」
「うん!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それからの二人の生活は変わった。
争いがなくなり、ふたりはずっと仲睦まじく、いつも仲良く幸せに暮らした。
仲が悪かった二人は、とっても仲がいい姉妹として近所でも有名になるほどまでになった。
あれほど険悪だった二人は、今ではそれはもうべったりくっついて、離れている時間はほぼほぼ無くなっていた。
姉妹の愛。それは深く、熱い物語。
でも、双子と言っても何でも息がピッタリとか、考え方が一緒、とか言う事は全くない。正直、そんな事が出来る双子が居るなんてことが信じられない。
「紗羅、もっとそっち行って」
「深羅こそ、そっち行ってよ」
今日もまた争いが始まる。
争いの種はいつも小さな事だ。
あれ取ってきてとか、先に手を洗う、とか。同じような事を何度も何度も繰り返しては決着を付けられずにいた。
今日はテレビを見るためのソファーの場所の奪い合いだ。
ソファーは四人くらい余裕で座れる長さがあるけれど、何故だかお互いに譲らない。
そのうちお互いに諦めてそのままの体勢でいるんだけれど。何故だか安心したりする。
気のせいだ、そう思っても、何故だか深羅と争っては流れ。この繰り返しだ。
今日もその例には漏れず、
「狭いんだから、もっと考えてよね」
「深羅こそ、我が儘なんだから!!」
スペースは十分にあるのに。
でもお互いに譲らずにずっとそのくっついたままの体勢だった。
何故だかこれが一番しっくりくるから。
『今日はいい双子の日! 日本の双子の――――』
深羅とくっつきながらテレビを観ていると、双子についての特集をやり出した。テレビをぼ~っと見ながら心の中で、
(そんなことあり得ない!)
(絶対うそうそ!!)
と突っ込まずにはいられなかった。
でも、心の奥ではなんだかもやもやが貯まっていった。
いつも争っているときとは違うもやもやが。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
紗羅とは仲が悪い。
いつからかは分からないけれど、気付いたら仲が悪かった。
よく周りから、
「双子って、考えてる事とか一緒だったり、行動パターンが同じなんでしょ?」
とか言われるけれど、そんな事は絶対ない。
私が紗羅と争うのは単になんだかそうしなければ、という気持ちが強いから。
別に嫌いな訳じゃない。
普通の姉妹だってそういう人も多いはずだ。
でも、紗羅がいなかったら私は私でいなくなる。
そんな気がいつもする。
紗羅がいるから、紗羅と争う事で私というものが成り立っている気がする。
争いを始めたり、途中でうやむやにするのも全部私からだ。
だって、そうもしないと私の事なんて忘れられてしまいそうだから……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
また深羅がちょっかいをかけてくる。
そのくせすぐに自分からうやむやにする。
いつもなら気にしない普通の出来事。でも、今日はなんだか違った。
テレビの双子の特集を見たからかもしれない。
気付いたら思ったよりも強い口調で責めるように言っていた。
「なんでいつも変な事をしてくるの!? いい加減にしてよ。文句があるならはっきり言いなさい!」
本当はなんでいつもしてくるの? と聞くつもりだった。
でも、何故だかこうなってしまった。
ごめんね。そう言いたくても口が動かない。
どうしてだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
紗羅から責められた。
それだけで不意に涙が溢れだしてくる。
「み、深羅!?」
紗羅が慌てた様子で近付いてくる。
背中をさすろうとでもしてくれたのか、手を伸ばしてきた。
でも私は無意識に、そして感情的にその手を払った。
「……っ!!」
「深羅……?」
酷いことをされたはずなのに、紗羅は怒りもせず、ただ立ち尽くしていた。
でも、冷静さを失った私にはその様子が目に入っていなかった。
(紗羅に嫌われた。紗羅に捨てられる……)
胸が張り裂けそうだった。
私は紗羅に向かって次々と言葉を投げる。
「紗羅は……お姉ちゃんは私なんかどうでもいいんでしょ!?」
「なっ……。深羅……?」
「私は、わたしはお姉ちゃんに忘れられないように、ずっと一緒にいたくて…………。なのに、なのに!!」
「…………」
洪水のように言葉が溢れてくる。
言葉はぐちゃぐちゃ。何を言っているのかも分からないような涙混じりの声に、紗羅はじっと私を見つめていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お姉ちゃんは私なんかいなければいい、そう思ってるんでしょ!?」
もう何年も前に言われなくなった“お姉ちゃん”という言葉。
それを繰り返して深羅は自分の想いをぶつけてくる。
「…………」
「お姉ちゃんにとって私はいらないっ……!?」
声を荒げる深羅に思いっきり抱き着く。強く、固く。
落ち着かせるように。
深羅の顔を私の胸に押しつけるようにして抱きしめる。心臓の鼓動を聞かせるために。
「落ち着いた……?」
「お姉ちゃん……。なんで…………?」
若干落ち着きを取り戻した深羅にゆっくりと、しっかり言い聞かせるように、そっと耳元で言葉を囁く。
“大好き”
そう伝えるために。
やっと分かった。ずっと溜め込んでいたモヤモヤとした感情は、愛。
今更のように気付いた。
愛なのだと。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お姉ちゃんに抱きしめられた私は、お姉ちゃんの胸から聞こえる優しい心臓の鼓動によって徐々に落ち着いてきた。
「落ち着いた……?」
「お姉ちゃん……。なんで…………?」
お姉ちゃんは、私の耳元にそっと唇を寄せると、そっと言葉を囁く。
「深羅、たった今やっと気付いた。……私は深羅を愛してる。そう、ね」
「いま、なんて……?」
「愛してる。何度でも言うわ。あなたを愛してる。家族として、姉として。だから私が深羅を嫌いになる訳がないし、見捨てるなんてありえない」
「でも……わたしっ……!! ……ひっく、うわぁぁぁん、お姉ちゃん……!!」
お姉ちゃんに抱きしめられたまま私は号泣した。
お姉ちゃんは服が汚れるのに、気にしないでずっと抱き締めていてくれた。
「わたし、ううっ……わたしもぉ、お姉ちゃんの事、大好きぃぃ!!」
「うん」
「わたしも、お姉ちゃんを愛してる!!」
「うん!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それからの二人の生活は変わった。
争いがなくなり、ふたりはずっと仲睦まじく、いつも仲良く幸せに暮らした。
仲が悪かった二人は、とっても仲がいい姉妹として近所でも有名になるほどまでになった。
あれほど険悪だった二人は、今ではそれはもうべったりくっついて、離れている時間はほぼほぼ無くなっていた。
姉妹の愛。それは深く、熱い物語。
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