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リバース!3
幕間 ~?~
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四十年ほど前、フィリピンでマニラへと向かう貨客船にタンカーが接触し、沈没する海難事故があった。
生存者は貨客船の乗客十五人と、タンカーの乗組員二人のみで。船の衝突による爆発と、タンカーから漏れ出したガソリンにより海上も炎上した、史上最悪の海難事故と言われている。
「……父さん……っ」
「マイカっ!」
私が、共に海に投げ出された娘へと手を伸ばした刹那――海面に炎が迸り、父子がそれぞれ伸ばした手を遮った。
幸か不幸か、炎は一瞬で消え去り。けれどそのことを不思議に思う前に、私は海の中に沈もうとする相手の手を掴んで引き上げた。
……そして次の瞬間、私は絶句する。
「どなた……ですか? そして、ここは一体……?」
私と同じ、黒い髪と瞳。浅黒い肌。
色彩と、年頃は娘と同じだったが――ほんの一瞬だったのに、私の前にいる女性は娘ではない別人だったのだ。
そして私は、救出されるまでの間にその女性から信じられない話を聞いた。
彼女は、テルスという別の世界の人間で。
使用人である彼女は病気の療養の為、避暑地に向かう主人と共に馬車に乗っていたが、その馬車の近くに雷が落ちて馬車が転倒し。気づいたら、この海の中にいたと言う。
……正直、異世界人だというのに言葉が通じたので、最初は単なる妄想だと思った。
もっともこれは後に、互いの世界にない言葉を使う時に本来の言語になったので、不思議だが勝手に翻訳されているのだと知ることになる。
そして、更に。
「清らかなる水よ、其れは天の恩恵なり、天より降らし給え」
そう彼女が唱えた途端、炎を消す為の雨が降り出したのに――彼女が異世界人だと、そして地球にはない魔法が使えるのだと信じるしかなかった。
(そうなると……娘は、マイカは……彼女とは逆に、その異世界に行ってしまったのか?)
私としては信じたくなかったが、入れ替わるように別人が現れ、しかも魔法まで使えるとなると信じるしかない。
そんな私が、彼女(偶然にも『マイヤ』と娘に似た名前だった)を引き取ったのは、魔法で命を救ってくれたから――だけでなく。
異世界人であるマイヤから少しでも情報を得て、いずれは娘を取り戻そうと思ったからだ。
生存者は貨客船の乗客十五人と、タンカーの乗組員二人のみで。船の衝突による爆発と、タンカーから漏れ出したガソリンにより海上も炎上した、史上最悪の海難事故と言われている。
「……父さん……っ」
「マイカっ!」
私が、共に海に投げ出された娘へと手を伸ばした刹那――海面に炎が迸り、父子がそれぞれ伸ばした手を遮った。
幸か不幸か、炎は一瞬で消え去り。けれどそのことを不思議に思う前に、私は海の中に沈もうとする相手の手を掴んで引き上げた。
……そして次の瞬間、私は絶句する。
「どなた……ですか? そして、ここは一体……?」
私と同じ、黒い髪と瞳。浅黒い肌。
色彩と、年頃は娘と同じだったが――ほんの一瞬だったのに、私の前にいる女性は娘ではない別人だったのだ。
そして私は、救出されるまでの間にその女性から信じられない話を聞いた。
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使用人である彼女は病気の療養の為、避暑地に向かう主人と共に馬車に乗っていたが、その馬車の近くに雷が落ちて馬車が転倒し。気づいたら、この海の中にいたと言う。
……正直、異世界人だというのに言葉が通じたので、最初は単なる妄想だと思った。
もっともこれは後に、互いの世界にない言葉を使う時に本来の言語になったので、不思議だが勝手に翻訳されているのだと知ることになる。
そして、更に。
「清らかなる水よ、其れは天の恩恵なり、天より降らし給え」
そう彼女が唱えた途端、炎を消す為の雨が降り出したのに――彼女が異世界人だと、そして地球にはない魔法が使えるのだと信じるしかなかった。
(そうなると……娘は、マイカは……彼女とは逆に、その異世界に行ってしまったのか?)
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そんな私が、彼女(偶然にも『マイヤ』と娘に似た名前だった)を引き取ったのは、魔法で命を救ってくれたから――だけでなく。
異世界人であるマイヤから少しでも情報を得て、いずれは娘を取り戻そうと思ったからだ。
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