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言明
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確かに魔王アキラ――暁は魔領にアルバが来た場合、別の意味で『歓迎』すると言っていた。
そしてムシュフシュも、魔領に行くことは出来るが魔王を不意打ち出来るようなところまでは近づけないと言っていた。
……だが、しかしである。
「こういうところは、有限実行じゃなくてもいいんじゃないですか……氷槍! 風刃列覇!」
声を荒げつつ、最低限の詠唱でアルバが魔法を放つと、彼へと伸びてきていた触手や鋭い爪が貫かれ、切り裂かれた。それでわずかに距離が出来るが、すぐにまた別の魔物がアルバへと襲いかかる。
「勇者よ、去れ!」
「貴様には、魔王様は討たせぬっ」
「砂射!」
そう叫び、アルバの喉笛に噛みつこうとした魔獣達を土属性の魔法で吹き飛ばす。そんな彼に、背後からからかうような声が飛んできた。
「すごいなぁ。これだけ魔物や魔獣に『君だけ』襲わせるなんて余程、目障りなんだね」
「……っ!」
流石に大天使相手なので怒鳴るのは耐えたが、振り返ってガブリエルを睨みつける。隣の遊星が焦っていた(怪しいからと、着いてすぐフードを下ろしたのでよく見える)が、その腰にガブリエルが手を回しているのを見てますます目が据わった。そんなアルバとガブリエルを、ムシュフシュが困り顔で見比べている。
(万が一があっては困るので、守ってくれているのはありがたいですが……腹の立つ!)
確かにガブリエルの言う通り、魔領に到着後城を目指して歩くアルバ『だけ』が攻撃されている。
暁が、遊星を傷つけるとは思わないが――すぐそこに見えているので何十体、いや、百を越えたのではと思う魔物達の妨害を受け、なかなか森の木々の向こうに見える城へと辿り着けないことにアルバは苛立っていた。詠唱だけでは足りず、魔法具の剣も奮っているのにだ!
「……危ないっ」
「ユーセイ!?」
「ギャ……ッ!?」
ガブリエルを睨んだ隙を突いて、上空から羽根を生やした魔物が襲いかかってくる。
咄嗟に声を上げ、ガブリエルが止める間もなくアルバの前に立ち塞がると、途端に眩い光の壁がアルバと遊星を包んだ。次いで無詠唱で炎の矢が放たれ、彼らの見ている前で魔物が焼き尽くされる。
「悪い。俺も、戦うから……一緒に、あいつのところに行こう」
「それは……」
今まで黙って守られてくれていたのは、アルバとガブリエルがそう望んだからだ。魔物退治が全く初めてではないにしろ、これからかつての親友と対峙する遊星を気遣ってである。
そして暁も同様だからこそ、遊星は今まで魔物の襲撃を受けずに済んでいた。
……けれど今、当の本人がアルバと共に戦って、暁の元へと向かうことを望んでいる。
「解りました……一緒に行きましょう、遊星」
「っ!?」
アルバが名前を呼ぶと、途端に遊星は真っ赤になった。仲良くなってもなかなか名前を呼ぶことはなかったが、だからこそいちいち初々しくも可愛い反応を示してくれる。
「っ、おう、アルバ!」
思っていたことが顔に出たのか、反撃するように遊星が彼の名前を呼ぶ。
アルバにとっては反撃どころがご褒美なので、我知らず微笑み――次いで気を取り直して、遊星と共に魔物達へと向き直った。
※
斬り捨て、燃やし、貫いて。
森と魔物の群れを抜け、そびえ立つ漆黒の城へと辿り着く。
……城でも待ち構えているかと思った魔物や魔族は、けれど今度は現れず。
足音やローブの裾が揺れる音が、静まり返った廊下に響き渡った――そして、玉座の間の扉の開く音も。
「わざわざ、自分から向かっていくなんて……魔物達には、お前は攻撃しないように伝えていたんだぞ?」
大きな怪我こそしていなかったが、アルバと遊星は顔や服に魔物達の返り血を浴びた状態だった。
そんな彼らに、深紅の瞳と漆黒の長衣――魔王として玉座に腰掛けて、暁が声をかける。
刹那、キッと遊星は暁を睨みつけた。
「そもそも、襲わせなければ良かったじゃないかっ」
「そうは言っても、俺としてはお前に討たれたかったし……それを伝えたら悲しそうにはされたけど、せめて邪魔者は排除するって。生まれ変わりって、魔物にもあるのかな?」
「生まれ変わる前提で、死ぬなんて冗談じゃない!」
事故に遭い、異世界に生まれ変わった遊星の、その言葉は重い。
淡々と語る暁に怒鳴り返した遊星を支えたくて、アルバは遊星の左手をそっと握った。
それに一瞬、息を呑んで――けれど暁から目を逸らさないまま、遊星が黙ってアルバの手を握り返す。
そして彼の視線の先で、遊星は凛とした声で言葉を続けた。
「お前は魔物に命令して、俺はその魔物を討った……俺達だけで話すなり、喧嘩するなりすれば良かったのに」
「……遊星」
「だけど……魔物は殺せても、暁、お前は殺せない」
「世界が滅びても?」
「だから、俺達だけの問題だろう!? それに世界が滅びるのは、お前が『魔王』だからだ。だったら……っ」
そこで一旦、途切れ――次いで挑むように放たれた遊星の言葉に、暁の瞳が大きく見開かれた。
「俺が、お前と『魂の誓約』をして……暁を『魔王』じゃなく『使い魔』にする!」
そしてムシュフシュも、魔領に行くことは出来るが魔王を不意打ち出来るようなところまでは近づけないと言っていた。
……だが、しかしである。
「こういうところは、有限実行じゃなくてもいいんじゃないですか……氷槍! 風刃列覇!」
声を荒げつつ、最低限の詠唱でアルバが魔法を放つと、彼へと伸びてきていた触手や鋭い爪が貫かれ、切り裂かれた。それでわずかに距離が出来るが、すぐにまた別の魔物がアルバへと襲いかかる。
「勇者よ、去れ!」
「貴様には、魔王様は討たせぬっ」
「砂射!」
そう叫び、アルバの喉笛に噛みつこうとした魔獣達を土属性の魔法で吹き飛ばす。そんな彼に、背後からからかうような声が飛んできた。
「すごいなぁ。これだけ魔物や魔獣に『君だけ』襲わせるなんて余程、目障りなんだね」
「……っ!」
流石に大天使相手なので怒鳴るのは耐えたが、振り返ってガブリエルを睨みつける。隣の遊星が焦っていた(怪しいからと、着いてすぐフードを下ろしたのでよく見える)が、その腰にガブリエルが手を回しているのを見てますます目が据わった。そんなアルバとガブリエルを、ムシュフシュが困り顔で見比べている。
(万が一があっては困るので、守ってくれているのはありがたいですが……腹の立つ!)
確かにガブリエルの言う通り、魔領に到着後城を目指して歩くアルバ『だけ』が攻撃されている。
暁が、遊星を傷つけるとは思わないが――すぐそこに見えているので何十体、いや、百を越えたのではと思う魔物達の妨害を受け、なかなか森の木々の向こうに見える城へと辿り着けないことにアルバは苛立っていた。詠唱だけでは足りず、魔法具の剣も奮っているのにだ!
「……危ないっ」
「ユーセイ!?」
「ギャ……ッ!?」
ガブリエルを睨んだ隙を突いて、上空から羽根を生やした魔物が襲いかかってくる。
咄嗟に声を上げ、ガブリエルが止める間もなくアルバの前に立ち塞がると、途端に眩い光の壁がアルバと遊星を包んだ。次いで無詠唱で炎の矢が放たれ、彼らの見ている前で魔物が焼き尽くされる。
「悪い。俺も、戦うから……一緒に、あいつのところに行こう」
「それは……」
今まで黙って守られてくれていたのは、アルバとガブリエルがそう望んだからだ。魔物退治が全く初めてではないにしろ、これからかつての親友と対峙する遊星を気遣ってである。
そして暁も同様だからこそ、遊星は今まで魔物の襲撃を受けずに済んでいた。
……けれど今、当の本人がアルバと共に戦って、暁の元へと向かうことを望んでいる。
「解りました……一緒に行きましょう、遊星」
「っ!?」
アルバが名前を呼ぶと、途端に遊星は真っ赤になった。仲良くなってもなかなか名前を呼ぶことはなかったが、だからこそいちいち初々しくも可愛い反応を示してくれる。
「っ、おう、アルバ!」
思っていたことが顔に出たのか、反撃するように遊星が彼の名前を呼ぶ。
アルバにとっては反撃どころがご褒美なので、我知らず微笑み――次いで気を取り直して、遊星と共に魔物達へと向き直った。
※
斬り捨て、燃やし、貫いて。
森と魔物の群れを抜け、そびえ立つ漆黒の城へと辿り着く。
……城でも待ち構えているかと思った魔物や魔族は、けれど今度は現れず。
足音やローブの裾が揺れる音が、静まり返った廊下に響き渡った――そして、玉座の間の扉の開く音も。
「わざわざ、自分から向かっていくなんて……魔物達には、お前は攻撃しないように伝えていたんだぞ?」
大きな怪我こそしていなかったが、アルバと遊星は顔や服に魔物達の返り血を浴びた状態だった。
そんな彼らに、深紅の瞳と漆黒の長衣――魔王として玉座に腰掛けて、暁が声をかける。
刹那、キッと遊星は暁を睨みつけた。
「そもそも、襲わせなければ良かったじゃないかっ」
「そうは言っても、俺としてはお前に討たれたかったし……それを伝えたら悲しそうにはされたけど、せめて邪魔者は排除するって。生まれ変わりって、魔物にもあるのかな?」
「生まれ変わる前提で、死ぬなんて冗談じゃない!」
事故に遭い、異世界に生まれ変わった遊星の、その言葉は重い。
淡々と語る暁に怒鳴り返した遊星を支えたくて、アルバは遊星の左手をそっと握った。
それに一瞬、息を呑んで――けれど暁から目を逸らさないまま、遊星が黙ってアルバの手を握り返す。
そして彼の視線の先で、遊星は凛とした声で言葉を続けた。
「お前は魔物に命令して、俺はその魔物を討った……俺達だけで話すなり、喧嘩するなりすれば良かったのに」
「……遊星」
「だけど……魔物は殺せても、暁、お前は殺せない」
「世界が滅びても?」
「だから、俺達だけの問題だろう!? それに世界が滅びるのは、お前が『魔王』だからだ。だったら……っ」
そこで一旦、途切れ――次いで挑むように放たれた遊星の言葉に、暁の瞳が大きく見開かれた。
「俺が、お前と『魂の誓約』をして……暁を『魔王』じゃなく『使い魔』にする!」
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