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思惑
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遊星とアルバは、同じ部屋だがそれだけだ。遊星に告げた通り食事も登校も別々で、寮や同じクラスでも挨拶以外の会話はしない。
「お、おはよう!」
「……おはよう、ございます」
それでも、いや、だからこそか遊星はアルバに挨拶をしてくる。
今朝も先に寮を出て、教室で予習していたアルバだが――前に、挨拶『くらい』と言ってしまったので無視も出来ない。
渋々、挨拶を返したアルバにふにゃっと頬を緩めると、遊星は満足したようにアルバから離れた。
魔法学園は、皇族や貴族だけではなく平民も通う為、制服が用意されている。
紺の上着とズボン。ネクタイの色は学年ごとに決まっていて、一年は赤だ。女生徒はスカートで、ネクタイではなくリボンになる。
そしてクラスは、S・A・B・Cの四つに分かれている。
成績順なので、貴族も平民も関係ないが――成績上位者であるSクラスは、やはり家庭教師などがつく分、貴族の割合が多く。更に今年は、皇女であるアスセーナもいるので、全く関係ないと言うのは嘘になる。
(とは言え、悪いことばかりじゃない)
そこまで考えて、アルバは彼より後に登校してきたある生徒へと視線を向けた。
その先にいる小柄な少女には、猫耳がついていた。亜人がいない訳ではないが、エルフ族とは違い、獣人は差別されやすい。
アルバからすると、入学試験に合格したのだからそれで良いではないかと思うのだが。
それでも、他のクラスだともっと目に見える形で苛められるだろう。しかしSクラスでは(まだ二日目ではあるが)アスセーナの目があるので表立っての差別はない。せいぜい無視をする程度だ。
(……あいつはまるで、気にしていないみたいだけど)
そんな獣人の少女と、笑顔で話している遊星を見てアルバはこっそりため息をつく。
昨日の入学式の後、各クラスで自己紹介があったのだが――その時の、常識知らずや無詠唱をごまかす為の理由が馬鹿だった。
「遊星・平です。ずっと田舎で暮らしてて! 寒くて口も開けられないようなところで、おかげで呪文とか不慣れなんで……勉強しに来ました、よろしくお願いします!」
大抵は失笑(そこで新たな苛めにならないのも、皇女効果だろう)だったが、そんな遊星に興味を持って声をかけた生徒がいた。男爵家の子息で、明るく好奇心旺盛そうな少年・フェルスだ。
「君、面白いね! 俺はフェルス、よろしく! 仲良くしようね!」
「落ち着きなさい、フェルス……あ、わたしはイグレット。こいつの幼なじみで、この娘はわたしの友達の」
「……ミーネ、よろしく」
「え、えっと……こっちこそ、よろしくっ」
そんな彼により、遊星と引き合わされたのが商家の娘であるイグレットと、獣人であるミーネだった。はぐれ者同士という見方もあるが、まあ、世間知らずが一人でいるよりは良いだろう。
「ヴェーチェル、君?」
そう結論付け、アルバがそっと遊星から視線を離したところで声をかけられた。少しぎこちない感じなのは、仕方がないだろう。同級生とは言え、相手を君付けで呼ぶことに慣れていないのだ。
ちなみに全帝であることは明かしていないが、ギルドマスターであるカリィの息子だということは隠していない。制御具で属性や魔力を抑えてはいるが、それでも首席になれるくらいの実力への良い隠れ蓑になるからである。
「ヴェーチェルでもアルバでも、結構です……何でしょう、殿下?」
「解りました。では、アルバ……今日の魔武器作りと使い魔召還で、私と同じグループになってくれませんか?」
長い銀色の髪に、すみれ色の瞳。
背後に、二人の生徒(確か、騎士団長の娘と皇室魔法使いの息子だ)を従えて登校してきた美少女――皇女・アスセーナに尋ねると、そんな言葉が返ってきた。
ギルドマスターの息子ではあるが、アルバも平民だ。とは言え、首席入学ということや今日の実習は「四人一組」と昨日の自己紹介の後、担任から指示を受けている。皇女だけではなく、おそらく護衛である他の二人と近づこうと立候補する生徒達はいただろう。
ちなみに身分はともかく、首席合格とこの見た目のせいでアルバにも声はかけられた。もっとも、下手に関わるのが面倒なのでどれも断り、余ったところに割り振られれば良いかと思っていたのだが。
「解りました、よろしくお願いします」
妙な下心はなさそうだし、虫除けになって良いかもしれない。そんな打算を顔には出さず、むしろこの場を円満に済ませる為にアルバはアスセーナに微笑んでみせた。
※
「笑ってる……元々、綺麗な顔してるけど……美男美女で、お似合いだよなぁ」
……本人知らず、頬を染めて見惚れながら。
社交辞令の笑顔に対して、遊星が呟いていたことをアルバは知らない。
「お、おはよう!」
「……おはよう、ございます」
それでも、いや、だからこそか遊星はアルバに挨拶をしてくる。
今朝も先に寮を出て、教室で予習していたアルバだが――前に、挨拶『くらい』と言ってしまったので無視も出来ない。
渋々、挨拶を返したアルバにふにゃっと頬を緩めると、遊星は満足したようにアルバから離れた。
魔法学園は、皇族や貴族だけではなく平民も通う為、制服が用意されている。
紺の上着とズボン。ネクタイの色は学年ごとに決まっていて、一年は赤だ。女生徒はスカートで、ネクタイではなくリボンになる。
そしてクラスは、S・A・B・Cの四つに分かれている。
成績順なので、貴族も平民も関係ないが――成績上位者であるSクラスは、やはり家庭教師などがつく分、貴族の割合が多く。更に今年は、皇女であるアスセーナもいるので、全く関係ないと言うのは嘘になる。
(とは言え、悪いことばかりじゃない)
そこまで考えて、アルバは彼より後に登校してきたある生徒へと視線を向けた。
その先にいる小柄な少女には、猫耳がついていた。亜人がいない訳ではないが、エルフ族とは違い、獣人は差別されやすい。
アルバからすると、入学試験に合格したのだからそれで良いではないかと思うのだが。
それでも、他のクラスだともっと目に見える形で苛められるだろう。しかしSクラスでは(まだ二日目ではあるが)アスセーナの目があるので表立っての差別はない。せいぜい無視をする程度だ。
(……あいつはまるで、気にしていないみたいだけど)
そんな獣人の少女と、笑顔で話している遊星を見てアルバはこっそりため息をつく。
昨日の入学式の後、各クラスで自己紹介があったのだが――その時の、常識知らずや無詠唱をごまかす為の理由が馬鹿だった。
「遊星・平です。ずっと田舎で暮らしてて! 寒くて口も開けられないようなところで、おかげで呪文とか不慣れなんで……勉強しに来ました、よろしくお願いします!」
大抵は失笑(そこで新たな苛めにならないのも、皇女効果だろう)だったが、そんな遊星に興味を持って声をかけた生徒がいた。男爵家の子息で、明るく好奇心旺盛そうな少年・フェルスだ。
「君、面白いね! 俺はフェルス、よろしく! 仲良くしようね!」
「落ち着きなさい、フェルス……あ、わたしはイグレット。こいつの幼なじみで、この娘はわたしの友達の」
「……ミーネ、よろしく」
「え、えっと……こっちこそ、よろしくっ」
そんな彼により、遊星と引き合わされたのが商家の娘であるイグレットと、獣人であるミーネだった。はぐれ者同士という見方もあるが、まあ、世間知らずが一人でいるよりは良いだろう。
「ヴェーチェル、君?」
そう結論付け、アルバがそっと遊星から視線を離したところで声をかけられた。少しぎこちない感じなのは、仕方がないだろう。同級生とは言え、相手を君付けで呼ぶことに慣れていないのだ。
ちなみに全帝であることは明かしていないが、ギルドマスターであるカリィの息子だということは隠していない。制御具で属性や魔力を抑えてはいるが、それでも首席になれるくらいの実力への良い隠れ蓑になるからである。
「ヴェーチェルでもアルバでも、結構です……何でしょう、殿下?」
「解りました。では、アルバ……今日の魔武器作りと使い魔召還で、私と同じグループになってくれませんか?」
長い銀色の髪に、すみれ色の瞳。
背後に、二人の生徒(確か、騎士団長の娘と皇室魔法使いの息子だ)を従えて登校してきた美少女――皇女・アスセーナに尋ねると、そんな言葉が返ってきた。
ギルドマスターの息子ではあるが、アルバも平民だ。とは言え、首席入学ということや今日の実習は「四人一組」と昨日の自己紹介の後、担任から指示を受けている。皇女だけではなく、おそらく護衛である他の二人と近づこうと立候補する生徒達はいただろう。
ちなみに身分はともかく、首席合格とこの見た目のせいでアルバにも声はかけられた。もっとも、下手に関わるのが面倒なのでどれも断り、余ったところに割り振られれば良いかと思っていたのだが。
「解りました、よろしくお願いします」
妙な下心はなさそうだし、虫除けになって良いかもしれない。そんな打算を顔には出さず、むしろこの場を円満に済ませる為にアルバはアスセーナに微笑んでみせた。
※
「笑ってる……元々、綺麗な顔してるけど……美男美女で、お似合いだよなぁ」
……本人知らず、頬を染めて見惚れながら。
社交辞令の笑顔に対して、遊星が呟いていたことをアルバは知らない。
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