メテオライト

渡里あずま

文字の大きさ
7 / 43

孤独

しおりを挟む
遊星視点1



 外見も成績も、運動神経も――何もかもが『平均』で『平凡』。
 それが彼、平遊星だった。強いて言えば、名前だけがちょっと珍しいくらいだろうか?
(まあ、苗字のたいらは『平均』『平凡』のへいだから。あってるっちゃあってるか)
 そんなことを考える辺り、我ながら卑屈なのか図太いのか解らないが。
 同級生達とドラマやゲーム、あと可愛い子の話で盛り上がり。かと言って話しかけるのは、ハードルが高すぎる。こっそり眺めるのが、関の山。
 ドラマチックな展開はなく、けれど穏やかな日々を遊星は送っていた――中学二年生の、夏までは。

向坂暁こうさかあきらです、よろしく」

 夏休み明けの二学期。遊星のクラスに、転校生が来た。
 淡い色彩の髪と瞳。けれど外国の血が混じっているということで、チャラい感じはせず自然だった。それは芸能人かと思うような、美形だったせいもあるだろう。漫画かドラマのような展開に、クラス中が思わずざわめいてしまったくらいだ。
 ……それでも、窓際の遊星の席の後ろには暁の分の机と椅子が置かれていて。

「俺、平遊星。よろしく」

 もし教科書がなければ、隣の生徒が見せるだろう。そして学校の案内は、学級委員長がすると思う。
 しかし、だからと言って無視することも出来ず――歩いてきた暁に、遊星はそう声をかけた。軽く目を見張られた時は「あ、失敗した」と思ったが、すぐに微笑んでくれたのでホッとした。
 そんな感じで、遊星としては何の気なしの行動だったのだが、暁にとっては別だったらしい。

「転校初日で緊張するし、何か騒がれるし……だから、遊星に笑いかけて貰ってすごく安心出来たんだ」

 教科書こそ用意が出来るまで、隣の女生徒に見せて貰っていたが――学校の案内に始まり、食堂で給食を食べる時や登下校、あと休みの日も気づけば一緒に行動するようになった。

「遊星といると本当、癒される」
「大げさだって」
「そんなことない! 遊星の傍は、すごく居心地がいいんだ」

 力説する暁は、やっぱりり大げさだ。けれど、一方で大人びた見た目に反して『普通』なんだなと思いもした。
(それなのにあんな風に騒がれたり、逆に距離置かれたら)
 暁の傍で見ている遊星でもそう思うのだから、当人ともなると相当、きついと言うかしんどいだろう。まあ、一方でそんな暁が懐いている遊星には、疑問や嫉妬の目が痛いくらいに突き刺さるのだが。
(俺も、暁といると楽しいし)
 そう結論づけて、気にしないようにしていたのだが――三年になり、暁とクラスが別になった時にそれは起こった。



「男同士でベタベタして、気持ち悪い」
「ホモなの?」
「空気読めなすぎ。あんたがいるせいで、向坂君友達いないんだよ……せっかくクラス別になったんだから、遠慮しなさいよ」
「向坂君可哀想~」
「向坂君は優しいから、迷惑だって思ってても言えないの! 身の程をわきまえなさいよねっ」

 昼休み、給食の後に遊星は同学年の女子達に体育館裏へと呼び出され、囲まれて口々に責め立てられた。
 ベタベタやホモ云々は、特に気にならなかったが――後半の、暁に他の友達がいないこと。そしてそのことで、暁に迷惑をかけていると言われたことにはその通りだと思ってしまった。
(……確かに、暁なら迷惑だと思っても表に出さないよな)
 現に暁は周りから騒がれて、困った顔はするがそれ以上の、嫌だという感情は見せないし口にもしない。それに、遊星のような凡人とも仲良くなれたのだから、その気になれば誰とでも仲良くなれるだろう。
(そうだよな、クラスも別れたんだし……来年には、卒業するんだから)
 寂しさに胸が痛んだが、遊星は一人残された体育館裏でスマートフォンを取り出した。コミュニケーションアプリとメール、どちらにするか少し悩んだ後――より感情を悟られない為にメールで受験を理由にし、しばらく距離を置きたいと暁に伝えた。
 暁からはせめて朝の通学は一緒にと言われたが、それもメールで断って電話には出ず本人を避けまくった結果、遊星への連絡は来なくなった。

 暁と一緒にいたのは二年の時の半年間くらいだったが、別のクラスになった遊星は他の同級生から暁とは別の意味で距離を置かれた。
 いじめとまでは言わないが、声をかけても無視をされ。次第に周囲が怖くなり遊星はクラスで、そして学校で孤立した。
 塾で同じ学校の生徒に会うのも気が引けて、帰宅部なのを良いことに早々に帰宅して勉強をした。朝も、逆にギリギリまで家で勉強をして学校に行く。それは暁を避ける為だけではなく、志望校を変えたからでもあった。
 ……そんな努力が実り、遊星が通うことになった高校は通学に片道二時間くらいかかるような場所だった。
 正直、登下校が大変だし、両親にももう少しの近くの高校ではどうかと気づかわれたが――遊星は、新しい環境で新たな一歩を踏み出したかったのだ。
 まさか春休み中に事故で死に、転生した異世界で学校に通うことになるとは思っていなかったが。

(これもある意味、高校デビューになるのかな?)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

第2王子は断罪役を放棄します!

木月月
BL
ある日前世の記憶が蘇った主人公。 前世で読んだ、悪役令嬢が主人公の、冤罪断罪からの巻き返し痛快ライフ漫画(アニメ化もされた)。 それの冒頭で主人公の悪役令嬢を断罪する第2王子、それが俺。内容はよくある設定で貴族の子供が通う学園の卒業式後のパーティーにて悪役令嬢を断罪して追放した第2王子と男爵令嬢は身勝手な行いで身分剥奪ののち追放、そのあとは物語に一切現れない、と言うキャラ。 記憶が蘇った今は、物語の主人公の令嬢をはじめ、自分の臣下や婚約者を選定するためのお茶会が始まる前日!5歳児万歳!まだ何も起こらない!フラグはバキバキに折りまくって折りまくって!なんなら5つ上の兄王子の臣下とかも!面倒いから!王弟として大公になるのはいい!だがしかし自由になる! ここは剣と魔法となんならダンジョンもあって冒険者にもなれる! スローライフもいい!なんでも選べる!だから俺は!物語の第2王子の役割を放棄します! この話は小説家になろうにも投稿しています。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした

444
BL
『醜い顔…汚らしい』 幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。 だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。 その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話 暴力表現があるところには※をつけております

おしまいのそのあとは

makase
BL
悪役令息として転生してしまった神楽坂龍一郎は、心を入れ替え、主人公のよき友人になるよう努力していた。ところがこの選択肢が、神楽坂の大切な人を傷つける可能性が浮上する。困った神楽坂は、自分を犠牲にする道を歩みかけるが……

きっと、君は知らない

mahiro
BL
前世、というのだろうか。 俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。 大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。 皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。 あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。 次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。 次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。 それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

処理中です...