メテオライト

渡里あずま

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召還

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 魔武器を作成した後は、使い魔召還だ。
 魔法陣に己の血を垂らすことで、生涯の相棒となる他種族や魔物を召還出来る。
 ただし強い使い魔を召還しようと、他の血(生贄のように鳥や獣などを混ぜたり、金で魔力の強い他の人間の血を手に入れたり)を混ぜて垂らすことは禁忌だ。他の血を混ぜることで存在が歪み、理性を失った合成獣キメラとなるので、その歪みを断ち切ろうと死神が現れて召還者の命を刈り取るのである。

「そのことわりを逆手に取って、死神を使い魔にって考える奴もいたけどな……いくら魔法が使えても、死神には勝てん。言っておくが、教師に庇って貰えると思うなよ? 授業で無駄死になんて、冗談じゃないからな」

 身も蓋もない物言いだが、なまじ魔法が使えるだけに慢心し、馬鹿な考えを起こす生徒がいるのだろう。
(更に下手な正義感を起こして、召還者を庇おうとしたら……二次被害、三次被害が起こる)
教師の話を聞きながら、アルバは得心した。そして、つ、と形の良い眉を顰めた。
(あいつは……そんな馬鹿な正義感を、振りかざしそうだな)
 あいつ、とは勿論、異世界から転生してきた遊星だ。禁忌は犯さないとしても、同情して死神に逆らおうとするのは十分、ありえる。
(そうなったら、あいつを殴ってでも止めないと)
 まあ、馬鹿が現れなければ一番だが――心の中でそう締め括ると、アルバは皇女達と共に魔法陣へと向かった。



 魔武器作りと同様に、アルバは使い魔召還をアスセーナ達に譲った。
 そして、それぞれその血筋や魔力に相応しい、上位の精霊や幻獣を召還するのを眺めた後、躊躇なく指を切って魔法陣に垂らした。
 刹那、光が放たれたのは魔武器作成と、そして他の生徒達と同じだけれど――。

「……っ!」

 頭は蛇、上半身は獅子で、下半身は鷲。尾は、蠍――一瞬、キメラかと場がざわついたが、アルバを見つめる目は静かだった。
そしてその異形を伏せると、アルバに対してこうべを垂れた。

「私は『怒れる蛇ムシュフシュ』。この背に、腰を下ろせ……それが、契約の証だ」

 語られた種族名に、先程とは違う意味で一同がざわめく。神が創った高位の幻獣であり、かつての勇者が使い魔としていた存在だからだ。
 使い魔契約は主人の死と共に解除されるが、今まで他の人間と契約したことはない。それ故、ありえないと思っていたのでキメラと区別がつかなかったのである。
 一方、当のアルバは別のことを考えていた。

(背に座ったところで、気に食わなければ尾の蠍に刺されそうだな)

 とは言え、召還された使い魔によっては戦っての勝利が条件になる場合もあるらしい。そう考えればまだ穏便だと結論付けて、アルバは躊躇なく腰を下ろした。
 そして周囲の驚愕をよそに「よろしくお願いします」と、その背を撫でたのである。

「あちらは、契約成立みたいだな」
「あ、あの」
「私は、これでいいよ……よろしく、遊星。我が恩人」
「……ガブリエル、様。俺、そんな大したこと、してませんってば」

 そんな中、空気を読まない声――ではなく、知った名前が呼ばれるのに、アルバはつ、と目を上げた。
 見ると金髪碧眼、そして六枚の翼をその背に宿した青年が、笑みを刻んだ唇を引き寄せた遊星の手の甲に口付けている。
 天使というだけでも最低中位以上だが、羽根の数と困り果てた声で紡がれた名前でその正体は知れた。

「大したことだよ。誰かに庇って貰ったなんて、初めてだったからね」

 四大天使の一人・ガブリエル。
 他の者には意味不明の会話だろうが、アルバには「遊星が、前世で救った天使」だと解った。そして二人の姿を見てつ、と眉を寄せ――そんな自分に内心、首を傾げた。
(何故、こんな気持ちに? 確かに大物だが、魔力や学力のようなズルではなく、あの馬鹿なお人好しぶりにほだされたんだろうに)
 いくら癪に障るからと言って、正当な評価にすら苛立つ程、自分は遊星のことが『嫌い』なんだろうか?
 そう思ったアルバの視界で、魔法陣が光を放ち――それに応えるようにムシュフシュが唸り、ガブリエルがその翼で遊星を守るように包み込んだ。
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