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歪形
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本来は、魔法学園に入学するだけでも誉れになる。しかし彼の父は、それだけでは満足しなかった。
「兄達のように、首席は……殿下や長の息子がいるから、難しいかもしれんが。私の息子なら、入学試験では三位までには入らないとな」
皇室魔法使いの一人である父に、そう言われたが――Sクラスにこそ入れたが、平民のくせに首席を取るような『規格外』二人のせいで三位以内には入れなかった。
おかげで父に厳しく叱責され、兄達には見下され。プレッシャーに耐え切れなかった『彼』は、今回の使い魔召還の為に自分の血に獣の血を混ぜた小瓶を用意した。
(それでも……禁忌だし、先生にも言われたし……お守りのつもりで、実際に使う気はなかったけど)
けれど、そんな彼の前で規格外の二人――アルバとユーセイは、同じくらい規格外な使い魔を召還した。伝説の幻獣に、大天使。どんな使い魔を召還しても、まるで勝てる気はしない。
(……また、父上や兄上達に呆れられる……いや、いっそ見捨てられる……?)
そう思った途端、彼は「もう、いいや」と思った。
そして、より強い使い魔を召還するのではなくこれ以上、父を失望させない為に――それでも、自分で死ぬのは怖いから禁忌を犯して殺して貰おうと思ったのだ。
※
アルバが視線を向けた先、光を放った魔法陣からは二本の腕が、そして赤い翼が現れた。
色はともかく、最初は天使かと思ったが――その翼を背にした少女の目は禍々しい真紅に染まり、少女の下半身は魚のものだった。まさか、と一同は咄嗟に否定しようとしたが、次いで魔法陣から現れた黒衣の存在がそれらを一蹴した。
「……咎人は、貴様か」
深く被られたフードの下から零れた声は、疑問形ではなかった。手にした大鎌は、咆哮するキメラの前で座り込んでいる小柄な少年へと向けられていた。
「お前ら、早く教室へ戻れ!」
呆然と立ち尽くしていた生徒達が教師の声で我に返り、次いで弾かれたように悲鳴を上げながら逃げ出した。アルバも、教師の指示に従って校庭を後にしようとしたが――そこで、思いがけないことが起こった。
「何とか、ならないのですか? 彼を、助けられないですか?」
馬鹿なことを言い出したのは、けれど遊星ではなかった。
皇女であるアスセーナの言葉に、お付きである二人が顔を見合わせ、それぞれの魔武器を手に死神の元へと向かおうとする。
「待って下さい!」
いくら主人の願いとは言え、非常識な行動を取ろうとする二人に幻獣の背から降り、制止しようとしたアルバだったが――その前に、地面が盛り上がって壁となることで物理的に制止した。呪文を唱えず、そんなことが出来るのは一人しかいない。
「俺が、行く……ガブリエル様、離して下さい」
「……だが、遊星」
「この世界の『理』に従わないとって、思いましたけど……他の人達も危険になるんなら、見逃せません」
「仕方ないね……それなら」
一度は同級生の死を受け止めようとしたせいか、その顔は青ざめていた。
だが、あどけないそれを引き締めて一歩、踏み出そうとする遊星の耳元にガブリエルが何かを囁く。それに大きく目を見張り、頷いて歩き出した遊星に眉を顰めると。
「聖防御光陣」
一言、そう唱えるとアスセーナ達三人と、遊星を心配するフェルス達。そして、彼らが残ったせいで逃げられない教師の周りが光の壁に包まれた。防御の為でもあるが、同時に彼らがこれ以上、余計なことをするのを防ぐ為である。自分も含め、妙なことをして遊星の集中を乱してはいけない。
そんなアルバにペコリと律儀に頭を下げて、遊星は死神と対峙した。
「兄達のように、首席は……殿下や長の息子がいるから、難しいかもしれんが。私の息子なら、入学試験では三位までには入らないとな」
皇室魔法使いの一人である父に、そう言われたが――Sクラスにこそ入れたが、平民のくせに首席を取るような『規格外』二人のせいで三位以内には入れなかった。
おかげで父に厳しく叱責され、兄達には見下され。プレッシャーに耐え切れなかった『彼』は、今回の使い魔召還の為に自分の血に獣の血を混ぜた小瓶を用意した。
(それでも……禁忌だし、先生にも言われたし……お守りのつもりで、実際に使う気はなかったけど)
けれど、そんな彼の前で規格外の二人――アルバとユーセイは、同じくらい規格外な使い魔を召還した。伝説の幻獣に、大天使。どんな使い魔を召還しても、まるで勝てる気はしない。
(……また、父上や兄上達に呆れられる……いや、いっそ見捨てられる……?)
そう思った途端、彼は「もう、いいや」と思った。
そして、より強い使い魔を召還するのではなくこれ以上、父を失望させない為に――それでも、自分で死ぬのは怖いから禁忌を犯して殺して貰おうと思ったのだ。
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アルバが視線を向けた先、光を放った魔法陣からは二本の腕が、そして赤い翼が現れた。
色はともかく、最初は天使かと思ったが――その翼を背にした少女の目は禍々しい真紅に染まり、少女の下半身は魚のものだった。まさか、と一同は咄嗟に否定しようとしたが、次いで魔法陣から現れた黒衣の存在がそれらを一蹴した。
「……咎人は、貴様か」
深く被られたフードの下から零れた声は、疑問形ではなかった。手にした大鎌は、咆哮するキメラの前で座り込んでいる小柄な少年へと向けられていた。
「お前ら、早く教室へ戻れ!」
呆然と立ち尽くしていた生徒達が教師の声で我に返り、次いで弾かれたように悲鳴を上げながら逃げ出した。アルバも、教師の指示に従って校庭を後にしようとしたが――そこで、思いがけないことが起こった。
「何とか、ならないのですか? 彼を、助けられないですか?」
馬鹿なことを言い出したのは、けれど遊星ではなかった。
皇女であるアスセーナの言葉に、お付きである二人が顔を見合わせ、それぞれの魔武器を手に死神の元へと向かおうとする。
「待って下さい!」
いくら主人の願いとは言え、非常識な行動を取ろうとする二人に幻獣の背から降り、制止しようとしたアルバだったが――その前に、地面が盛り上がって壁となることで物理的に制止した。呪文を唱えず、そんなことが出来るのは一人しかいない。
「俺が、行く……ガブリエル様、離して下さい」
「……だが、遊星」
「この世界の『理』に従わないとって、思いましたけど……他の人達も危険になるんなら、見逃せません」
「仕方ないね……それなら」
一度は同級生の死を受け止めようとしたせいか、その顔は青ざめていた。
だが、あどけないそれを引き締めて一歩、踏み出そうとする遊星の耳元にガブリエルが何かを囁く。それに大きく目を見張り、頷いて歩き出した遊星に眉を顰めると。
「聖防御光陣」
一言、そう唱えるとアスセーナ達三人と、遊星を心配するフェルス達。そして、彼らが残ったせいで逃げられない教師の周りが光の壁に包まれた。防御の為でもあるが、同時に彼らがこれ以上、余計なことをするのを防ぐ為である。自分も含め、妙なことをして遊星の集中を乱してはいけない。
そんなアルバにペコリと律儀に頭を下げて、遊星は死神と対峙した。
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