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第一章

実際に、見て貰うことにしました【1】

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 この世界の貴族と、一部平民には魔法が使える。
 ……それは事実だが、魔法の使い方が私の思っていたものとまるで違った。

「攻撃と防御、のみ?」
「ああ。だから令息にとっては敵を倒す剣と同義で、令嬢にとっては己を守る懐剣のようなものだ」
「……魔法は解るのに、何でその使い方を知らないの?」
「ほ、本で魔法があることだけ、読みましたから」

 くつろぎのひとときの後、部屋に戻ってきた時、私は二人に尋ねた。
 アントワーヌ様の説明に目を見張っていると、ビアンカ様から問いかけられて私は笑って誤魔化した。そして話題を変える為に、実践してみることにした。

「私は、小さいので……こうして魔法を使うことで、もっと色んな労働が出来ると思ったんです」
「「っ!?」」

 概念が無いのなら、見て貰った方が早い。
 そう思って、私は自分の影を動かして背後から抱っこするように持ち上げて貰った。目線が高くなったのに、両手を万歳して見せる。自分からは見えないが、イメージとしては昔、アニメで見た、どんな形にでも変形出来る生き物のような感じだろうか?

「こうすれば、一人は届かない高いところにも手が届きますし、あとは影を動かして一人で持てないものを運べると思います」
「……魔法を『労働力』や『補助』として、使うと言うのかい?」
「すごい発想ね……考えたこともなかったわ」
「私は逆に、攻撃や防御に使うと思わなかったので……あの、だから嫌がらせとかはないです。心配をおかけして、申し訳ないです」

 むしろ、突然現れた幼女を修道士や修道女の皆さんはひどく可愛がってくれた。だから、そこは誤解が無いようにしっかり伝える。

「私の魔法の属性は闇なので、こうして影を使ってになりますが……他の魔法でも、水をお掃除や畑仕事に使ったり、風で空気の入れ替えや寒暖の調整したり出来るんじゃないでしょうか?」
「はぁ~……どっから来たの? その発想」
「……成程。実に、興味深い」

 魔法の可能性について私が語ると、ビアンカ様は話に付いていけないのかポカンとし。逆に、アントワーヌ様は面白がるようにその瞳を細めた。そして、腰かけていた寝台から立ち上がり、影に抱えられたままの私の顔を覗きこむように目線を合わせる。

「ただ、我々の独断では判断出来ない……明日、院長にお伺いを立てよう。我々もだが、神兵達にも魔法が使える者がいる。どんな風に使えるかは、色んな属性の魔法で試した方が良いだろうからな」
「……ああ。だから、ビアンカ様が先程」
「そうよ……ある意味、もっとぶっ飛んだ思いつきだったけどね」

 そう言って、アントワーヌ様は昨日のように私の頭をベールの上から撫でてくれた。そしてビアンカ様もやれやれって感じで笑ってくれた。
 それにつられて、あるいはホッとして――私の丸い頬も、笑みに緩んだ。
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