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第二章
目には目を、身分には身分を
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侯爵家の令嬢として生まれ、聖女と呼ばれる私は基本、大切にされている。
でも子供の頃や、逆に成長してきた頃、新年のパーティーに出た時に会場から連れ出されそうになり――その度に、こうしてラウルさんが盾になり庇ってくれた。
神兵は修道士、つまりは平民だ。しかし神に仕える剣士という立場な上、見た目の迫力でこれまでは彼に逆らう者はいなかった。
……けれど、今回の令息達は違った。怯みこそしたが、負けじと反論してきた。
「平民風情が、余計な口を挟むな!」
「万死に値するだと? 生意気な、貴族に逆らうつもりか!?」
「イザベル嬢は、我々がお守りする! お前は一人で、修道院に戻れっ」
「「…………」」
暴言の数々に、ラウルさんもだが私も絶句した。
学園では身分を笠に着るのは、校則違反だと聞いていた。
けれど目の前の少年達を見ていると、とてもそうとは思えない。いや、それぞれの親に言われて引くに引けないのかもしれないが、それにしても酷すぎる。
(だけど、身分で物を言われるとラウルさんもだけど、私もマズいか)
(カナさん……)
(ああ、ごめんねイザベル。不安になっちゃうよね……でも、そもそも私、講師だから。それこそ立場上は、目の前の彼らより上の筈なんだけど)
そう思うが先程、ナタリーの言葉を無視したところを見ると、彼らの中では教師より生徒の方が立場が上なのかもしれない。
思えば前世でも教師に対してそう決めつけ、クレームを言う子供や親がいた。変なところで前世が反映されているのに内心、ウンザリしていると新たな参戦者が現れた。
「……あなた達こそ、黙りなさい。校内で、騒ぐものではありません」
「てか、ラウルさんは俺でも勝てないんだぞ? 何、勝てない喧嘩売ってんだ?」
「そもそも、身分を笠に着るのは校則違反だ」
「「「あ……」」」
宰相の息子である、ケイン。
騎士団長の息子である、エドガー。
そして、この中の誰よりも身分の高い王太子・ユリウス。
乙女ゲームの攻略対象であり、そもそもが高位貴族である彼らの登場に少年達は絶句した。
その隙を突いて、エマが駆け寄ってくる。私と仲が良いのは知っているので、ラウルさんも彼女を咎めることはない。
「お姉さま、大丈夫ですか?」
「……エマ。ええ、大丈夫。ありがとう」
「いえ。むしろ、遅くなって失礼しました……『イザベル様』に目をつけるのは解りますが、こんな風に迷惑をかけるなんて」
ボソリと呟いたエマの目と声は冷ややかで、けれどだからこそ激しい怒りを感じさせた。同担拒否ではなかった筈だが、彼らの迷惑行為は腹に据えかねたようだ。
すると、殿下達との話が終わったのか、少年達は逃げるようにこの場を後にした――そりゃあ、身分で物を言う彼らが敵う相手ではないだろう。
でも子供の頃や、逆に成長してきた頃、新年のパーティーに出た時に会場から連れ出されそうになり――その度に、こうしてラウルさんが盾になり庇ってくれた。
神兵は修道士、つまりは平民だ。しかし神に仕える剣士という立場な上、見た目の迫力でこれまでは彼に逆らう者はいなかった。
……けれど、今回の令息達は違った。怯みこそしたが、負けじと反論してきた。
「平民風情が、余計な口を挟むな!」
「万死に値するだと? 生意気な、貴族に逆らうつもりか!?」
「イザベル嬢は、我々がお守りする! お前は一人で、修道院に戻れっ」
「「…………」」
暴言の数々に、ラウルさんもだが私も絶句した。
学園では身分を笠に着るのは、校則違反だと聞いていた。
けれど目の前の少年達を見ていると、とてもそうとは思えない。いや、それぞれの親に言われて引くに引けないのかもしれないが、それにしても酷すぎる。
(だけど、身分で物を言われるとラウルさんもだけど、私もマズいか)
(カナさん……)
(ああ、ごめんねイザベル。不安になっちゃうよね……でも、そもそも私、講師だから。それこそ立場上は、目の前の彼らより上の筈なんだけど)
そう思うが先程、ナタリーの言葉を無視したところを見ると、彼らの中では教師より生徒の方が立場が上なのかもしれない。
思えば前世でも教師に対してそう決めつけ、クレームを言う子供や親がいた。変なところで前世が反映されているのに内心、ウンザリしていると新たな参戦者が現れた。
「……あなた達こそ、黙りなさい。校内で、騒ぐものではありません」
「てか、ラウルさんは俺でも勝てないんだぞ? 何、勝てない喧嘩売ってんだ?」
「そもそも、身分を笠に着るのは校則違反だ」
「「「あ……」」」
宰相の息子である、ケイン。
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そして、この中の誰よりも身分の高い王太子・ユリウス。
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その隙を突いて、エマが駆け寄ってくる。私と仲が良いのは知っているので、ラウルさんも彼女を咎めることはない。
「お姉さま、大丈夫ですか?」
「……エマ。ええ、大丈夫。ありがとう」
「いえ。むしろ、遅くなって失礼しました……『イザベル様』に目をつけるのは解りますが、こんな風に迷惑をかけるなんて」
ボソリと呟いたエマの目と声は冷ややかで、けれどだからこそ激しい怒りを感じさせた。同担拒否ではなかった筈だが、彼らの迷惑行為は腹に据えかねたようだ。
すると、殿下達との話が終わったのか、少年達は逃げるようにこの場を後にした――そりゃあ、身分で物を言う彼らが敵う相手ではないだろう。
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