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第二章
決裂
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私は週に一度、生徒達に寄り添いを施す講師として、保健室に出勤している。
……それ故、本来はトイレ以外で保健室から離れるのは良くないと思う。だが、人気者のアリアから来るのを待っていたら、いつまで経っても話が出来なさそうだ。
(昼休みは、女の子達と一緒だから……狙うとしたら、放課後かしら?)
貴族の令息令嬢は通常、馬車で通学している。だから昼休みまでは共に行動しても、帰る時は何か約束をしていなければ一人になることが多い。
そんな訳で、イザベルは「気になることがあるので放課後、少しだけ席を外したい」とナタリー先生にお願いした。そんな私に、ナタリー先生は「良いですよ……と言うか、むしろ普段が引きこもり過ぎですから!」という答えが返ってきた。心配をかけていたようなので、反省しようと思う。
「……あの、グランさん?」
こうして放課後、私は教室から出てきたアリアに声をかけた。
そんな私に、驚いたように目を見張り――そこまでは良いとして次いで表情が消え、据わった目で見返されたのには驚いた。いつもの、キラキラした美少年ぶりと差があり過ぎる。
(え、嫌われてる? 相性とかあるかもだけど、そもそも初めて話すのに? まあ、第一印象でも合う合わないはあるけど)
(カナさん……)
(あ、ごめんねイザベル! 大丈夫だからっ)
戸惑っていると、現世の私が不安そうに私の名前を呼んできた。そんな現世の私を宥めつつ、私は負けじと意識して背筋を伸ばして話しかけた。
「初めまして。イザベルと申します……唐突で恐縮ですが、よければ少しあなたとお」
「結構です。とぅるらぶとは違って、今のあなたは恋敵ですから」
途中で遮ったかと思うと、アリアは私にだけ聞こえるくらいの声でそう言って、現世の私の横を通り過ぎた。振り返るが、アリアが足を止めることはない。結い上げた栗色の髪を揺らしながら、早足で立ち去った。
(コイガタキ……って、恋敵? え? 転生者なのは確定したけど……彼女の推しは、脳筋だから……え? 私が、脳筋を好きだって思われているってこと? いや、違うから!)
……私は、知らなかった。
脳筋(エドガー)が、アリアに『聖女のクッキー』と言ったことを。そして、脳筋としては『聖女の(修道院で買った)クッキー』のつもりで言っていたことを。
それ故、相手の言葉が理解出来ず――やがて理解は出来たが、否定する前にアリアに姿を消されてしまったので、私はモヤモヤしつつも保健室に戻る為、その場を離れることしか出来なかった。
……それ故、本来はトイレ以外で保健室から離れるのは良くないと思う。だが、人気者のアリアから来るのを待っていたら、いつまで経っても話が出来なさそうだ。
(昼休みは、女の子達と一緒だから……狙うとしたら、放課後かしら?)
貴族の令息令嬢は通常、馬車で通学している。だから昼休みまでは共に行動しても、帰る時は何か約束をしていなければ一人になることが多い。
そんな訳で、イザベルは「気になることがあるので放課後、少しだけ席を外したい」とナタリー先生にお願いした。そんな私に、ナタリー先生は「良いですよ……と言うか、むしろ普段が引きこもり過ぎですから!」という答えが返ってきた。心配をかけていたようなので、反省しようと思う。
「……あの、グランさん?」
こうして放課後、私は教室から出てきたアリアに声をかけた。
そんな私に、驚いたように目を見張り――そこまでは良いとして次いで表情が消え、据わった目で見返されたのには驚いた。いつもの、キラキラした美少年ぶりと差があり過ぎる。
(え、嫌われてる? 相性とかあるかもだけど、そもそも初めて話すのに? まあ、第一印象でも合う合わないはあるけど)
(カナさん……)
(あ、ごめんねイザベル! 大丈夫だからっ)
戸惑っていると、現世の私が不安そうに私の名前を呼んできた。そんな現世の私を宥めつつ、私は負けじと意識して背筋を伸ばして話しかけた。
「初めまして。イザベルと申します……唐突で恐縮ですが、よければ少しあなたとお」
「結構です。とぅるらぶとは違って、今のあなたは恋敵ですから」
途中で遮ったかと思うと、アリアは私にだけ聞こえるくらいの声でそう言って、現世の私の横を通り過ぎた。振り返るが、アリアが足を止めることはない。結い上げた栗色の髪を揺らしながら、早足で立ち去った。
(コイガタキ……って、恋敵? え? 転生者なのは確定したけど……彼女の推しは、脳筋だから……え? 私が、脳筋を好きだって思われているってこと? いや、違うから!)
……私は、知らなかった。
脳筋(エドガー)が、アリアに『聖女のクッキー』と言ったことを。そして、脳筋としては『聖女の(修道院で買った)クッキー』のつもりで言っていたことを。
それ故、相手の言葉が理解出来ず――やがて理解は出来たが、否定する前にアリアに姿を消されてしまったので、私はモヤモヤしつつも保健室に戻る為、その場を離れることしか出来なかった。
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