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前世と現世の違い
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クララベルがフライパンでの同時調理を覚えたのは、前世の朝食とお弁当作りでだ。前世の家族が許すのは、食材の味つけまでで。作り置きは許さず、当日朝に作るように言われたのだ。ちなみに、夕食も同様である。
だから中学卒業後は朝から昼過ぎまで掃除洗濯、あと祖母が生きている間は介護を。亡くなってからは昼のバイトを入れ、夕方には一旦戻り、食事の支度をしてから深夜までバイトに行った。
話を戻すが、そんな訳で朝と夕方の食事作りは大変だった。それ故、同時に作れる仕切り付きフライパンに惹かれたのだが、親が購入を許してくれず。連絡用に持たされていたスマートフォンで検索し、キッチンペーパーを使っての複数調理を覚えたのである。
(……まあ、それだけやっても当たり前で、何の感謝もされなかったけど)
現世は使用人なのでノーカウントとして、前世の家族を思い出してクララベルは少し遠い目になった。そして気を取り直し、にんじんの塩漬け肉巻きを挟んだパンを載せた皿と、細かく切った塩漬け肉と玉ねぎのスープを注いだカップを(野宿用か、どちらも壊れにくいよう木で作られていた)ウィラードの元へと運んだ。
ちなみに、腹心とは言え家臣なので、ハーラルはクララベル達とは一緒に食べない。だから、とクララベルの分を運んでくれた。自分の分は、この後に他の部下達と食べるらしい。
「……えっ?」
「あの、まず毒見しましょうか?」
「いやいや、そうじゃなく……クララベルが、作ったんだよな?」
「あ、は」
「そうですよ」
声を上げたウィラードにそう言うと、何故だか尋ねられた。それに答えようとしたら、代わりにハーラルが返事をした。
(あ、そうか)
使用人として働いていたことは話しているが、おそらく想定より『まとも』な料理なので驚いたのだろう。ハーラルも答えてくれたのでクララベルも改めて頷いた。
「はい、そうです!」
「そうか」
「はい!」
そして昨日のように、ウィラードの隣に腰かけたクララベルはハーラルから皿とカップを受け取り、彼が戻ったところでまずはスープに口をつけた。初夏だが、朝晩はまだ涼しい。だから出汁はないが、塩漬け肉と玉ねぎでそれなりに味が出て、更に温かいスープはそれだけで美味しかった。
ほ、と満足して息を吐き、次いでクララベルはパンを手に取った。最初、別々にとも思ったがそうするとフォークなどを使うことになる。一応、貴族なので用意はされているが昨日の串焼きなどを見ると、使わない方がいいのかなと思ってパンに切れ目を入れ、作ったおかずを挟んだのだ。
(生まれながらの令嬢なら、かぶりつきはしないだろうけど……私なら、いいわよね!)
昨日もやったし、と思いながらクララベルは「あ」と口を開けた。そしてパンとおかずを頬張り、肉の脂や蒸して甘くなったにんじんを堪能した。
「ありがとう……これ、明日の夜も食べられるか?」
「いいですよ。ただ、同じもので飽きないですか?」
「美味しいから飽きないな」
ウィラードの口にもあったのか、そんな風に問いかけられた。前世の家族から、少なくとも半月以上経たないと同じ献立を作ることを許されなかったのでそう尋ねると、嬉しい言葉が返ってきた。
「……飽きないのなら、また明日も作りますね」
「むしろ、領地に帰ってもたまにはこれを作ってくれ」
「はい!」
いつの間にか食べきり、スープを飲みながら言うウィラードに、クララベルは笑顔で頷いたのだった。
だから中学卒業後は朝から昼過ぎまで掃除洗濯、あと祖母が生きている間は介護を。亡くなってからは昼のバイトを入れ、夕方には一旦戻り、食事の支度をしてから深夜までバイトに行った。
話を戻すが、そんな訳で朝と夕方の食事作りは大変だった。それ故、同時に作れる仕切り付きフライパンに惹かれたのだが、親が購入を許してくれず。連絡用に持たされていたスマートフォンで検索し、キッチンペーパーを使っての複数調理を覚えたのである。
(……まあ、それだけやっても当たり前で、何の感謝もされなかったけど)
現世は使用人なのでノーカウントとして、前世の家族を思い出してクララベルは少し遠い目になった。そして気を取り直し、にんじんの塩漬け肉巻きを挟んだパンを載せた皿と、細かく切った塩漬け肉と玉ねぎのスープを注いだカップを(野宿用か、どちらも壊れにくいよう木で作られていた)ウィラードの元へと運んだ。
ちなみに、腹心とは言え家臣なので、ハーラルはクララベル達とは一緒に食べない。だから、とクララベルの分を運んでくれた。自分の分は、この後に他の部下達と食べるらしい。
「……えっ?」
「あの、まず毒見しましょうか?」
「いやいや、そうじゃなく……クララベルが、作ったんだよな?」
「あ、は」
「そうですよ」
声を上げたウィラードにそう言うと、何故だか尋ねられた。それに答えようとしたら、代わりにハーラルが返事をした。
(あ、そうか)
使用人として働いていたことは話しているが、おそらく想定より『まとも』な料理なので驚いたのだろう。ハーラルも答えてくれたのでクララベルも改めて頷いた。
「はい、そうです!」
「そうか」
「はい!」
そして昨日のように、ウィラードの隣に腰かけたクララベルはハーラルから皿とカップを受け取り、彼が戻ったところでまずはスープに口をつけた。初夏だが、朝晩はまだ涼しい。だから出汁はないが、塩漬け肉と玉ねぎでそれなりに味が出て、更に温かいスープはそれだけで美味しかった。
ほ、と満足して息を吐き、次いでクララベルはパンを手に取った。最初、別々にとも思ったがそうするとフォークなどを使うことになる。一応、貴族なので用意はされているが昨日の串焼きなどを見ると、使わない方がいいのかなと思ってパンに切れ目を入れ、作ったおかずを挟んだのだ。
(生まれながらの令嬢なら、かぶりつきはしないだろうけど……私なら、いいわよね!)
昨日もやったし、と思いながらクララベルは「あ」と口を開けた。そしてパンとおかずを頬張り、肉の脂や蒸して甘くなったにんじんを堪能した。
「ありがとう……これ、明日の夜も食べられるか?」
「いいですよ。ただ、同じもので飽きないですか?」
「美味しいから飽きないな」
ウィラードの口にもあったのか、そんな風に問いかけられた。前世の家族から、少なくとも半月以上経たないと同じ献立を作ることを許されなかったのでそう尋ねると、嬉しい言葉が返ってきた。
「……飽きないのなら、また明日も作りますね」
「むしろ、領地に帰ってもたまにはこれを作ってくれ」
「はい!」
いつの間にか食べきり、スープを飲みながら言うウィラードに、クララベルは笑顔で頷いたのだった。
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