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怒気
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ユージンの好みに合えば、流石に一線こそ越えないがクロエは己を利用することもやぶさかではなかった。そうやって、ジャンヌの復讐の為に何としてもラウラとの『真実の愛』をぶち壊すつもりだった。
おそらくだがこれから、ハリドはソフィアと婚約解消になるだろう。彼女のおかげで、フリーになったハリドは今までのように、ラウラに近づけなくなる。いや、もしかしたら『友人』を理由にするかもしれないが、少なくとも今までのように当然にはならない。周りからの評価が、明らかに下がる。
そしてクロエは元々、ハリドからの脅しを利用して勉強会を断り、ユージンの気を引こうと思っていた。この必死な調子なら断らず、頷いていいと思う。
……思うのだが、何と言うかクロエは気に食わないと思った。
(ハリドみたいな、恋愛感情からの行動じゃない……母親に、何か言われたか?)
復讐の為に事前に調べていたのでユージンと親との関係性も、あと王妃・レミーアの気性も知ってはいる。セルシウス公爵家からの婚約解消の申し出でハリドの愚行と、証拠はないかもしれないがおそらくラウラが関係していると気づいたのだろう。
(王妃の性格なら、俺との勉強会がラウラの罰になるとか、俺への詫びになるとでも言ったか?)
そこまで考えて、クロエは自分が怒っていることに気づいた。
断っておくが中身は男なので女として、あるいは性的な対象として見られるのは喜色悪い。ただ、同じ男なので同性が喜ぶツボのようなものは解るし、復讐に利用することに躊躇いはない。もっとも、人の好みはそれぞれなので好かれない場合もあると思うし、だからこそ自分以外のレーヴという『駒』も用意していた。
だが今、こうしてユージンと対峙してクロエが怒っているのは。
(俺を……いや。こいつらが、知らないにしてもまた『ジャンヌ』を馬鹿にしているからだ)
自分達で躾けられなかったラウラへの罰に、クロエを利用する? 美形の王太子と勉強することが、詫び?
かつて、ジャンヌに汚名を着せて追いやったお前達が──この可哀想な娘に、また?
(いや、落ち着け……今、こいつらが馬鹿にしてるのは、ジャンヌじゃなくて俺だ。今後のことを考えたら、このチャンスに乗っかった方がいい)
クロエがそう考えを切り替えたところで、縋るようにユージンが尋ねてくる。
「急かして、申し訳ないが……私との勉強会は、どうしても駄目だろうか?」
そんなユージンに肩を掴まれたまま、クロエは答えた──唇に、綺麗に見える笑みを形造って。
「『友達』とは、恐れ多いですが……私で、よろしければ。ノートを用意したいので来週、休み明けの日の放課後に、図書室で……いかがでしょう?」
「っ、ああ! そうしようっ……それでは、失礼する!」
「ユージンっ」
「はい」
クロエの返事に気を良くしたユージンは、ハリドの抗議に構わず彼を引っ張って踵を返した。
そんな彼らを、笑みを浮かべたまま見送って──完全に見えなくなったところで笑みを消すと、クロエは呼び出された生徒会室を後にした。
おそらくだがこれから、ハリドはソフィアと婚約解消になるだろう。彼女のおかげで、フリーになったハリドは今までのように、ラウラに近づけなくなる。いや、もしかしたら『友人』を理由にするかもしれないが、少なくとも今までのように当然にはならない。周りからの評価が、明らかに下がる。
そしてクロエは元々、ハリドからの脅しを利用して勉強会を断り、ユージンの気を引こうと思っていた。この必死な調子なら断らず、頷いていいと思う。
……思うのだが、何と言うかクロエは気に食わないと思った。
(ハリドみたいな、恋愛感情からの行動じゃない……母親に、何か言われたか?)
復讐の為に事前に調べていたのでユージンと親との関係性も、あと王妃・レミーアの気性も知ってはいる。セルシウス公爵家からの婚約解消の申し出でハリドの愚行と、証拠はないかもしれないがおそらくラウラが関係していると気づいたのだろう。
(王妃の性格なら、俺との勉強会がラウラの罰になるとか、俺への詫びになるとでも言ったか?)
そこまで考えて、クロエは自分が怒っていることに気づいた。
断っておくが中身は男なので女として、あるいは性的な対象として見られるのは喜色悪い。ただ、同じ男なので同性が喜ぶツボのようなものは解るし、復讐に利用することに躊躇いはない。もっとも、人の好みはそれぞれなので好かれない場合もあると思うし、だからこそ自分以外のレーヴという『駒』も用意していた。
だが今、こうしてユージンと対峙してクロエが怒っているのは。
(俺を……いや。こいつらが、知らないにしてもまた『ジャンヌ』を馬鹿にしているからだ)
自分達で躾けられなかったラウラへの罰に、クロエを利用する? 美形の王太子と勉強することが、詫び?
かつて、ジャンヌに汚名を着せて追いやったお前達が──この可哀想な娘に、また?
(いや、落ち着け……今、こいつらが馬鹿にしてるのは、ジャンヌじゃなくて俺だ。今後のことを考えたら、このチャンスに乗っかった方がいい)
クロエがそう考えを切り替えたところで、縋るようにユージンが尋ねてくる。
「急かして、申し訳ないが……私との勉強会は、どうしても駄目だろうか?」
そんなユージンに肩を掴まれたまま、クロエは答えた──唇に、綺麗に見える笑みを形造って。
「『友達』とは、恐れ多いですが……私で、よろしければ。ノートを用意したいので来週、休み明けの日の放課後に、図書室で……いかがでしょう?」
「っ、ああ! そうしようっ……それでは、失礼する!」
「ユージンっ」
「はい」
クロエの返事に気を良くしたユージンは、ハリドの抗議に構わず彼を引っ張って踵を返した。
そんな彼らを、笑みを浮かべたまま見送って──完全に見えなくなったところで笑みを消すと、クロエは呼び出された生徒会室を後にした。
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