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決意
主人公の名前を、他作品や(主人公ではないですが)自作品と、今更ながらに名前の被りが気になったので『イリヤ』に変更しましたm(__)m
※
歴史ある大国エスカーダには、近隣の小国から外交官や留学生が訪れる。そんな国の一つ、リブレは海による交易で栄え、異国風の品々をエスカーダに提供していた。
リブレの外交官であるローラン伯爵には、養女がいると言う。
その養女が卒業までの一年間、王立学園に留学してくることになった。そんな訳で今日は、新学期が始まる前に、彼女の面倒を見てくれる生徒会の面々を集めたお茶会である。
「殿下、並びに生徒会の皆様。本日は我が家にお越しいただき、ありがとうございます」
前髪を撫でつけた黒髪。切れ長の瞳。口ひげまで黒い、彼──リブレからの外交官であるローラン伯爵は、笑顔で挨拶した。彼の故郷の衣装である裾や袖がゆったりした緑の長衣と、同じ色の袴を身に着けていた。
そして、義父であるローラン伯爵に連れられてやって来たのは、銀髪と青い瞳をした美しい少女だった。
義父である伯爵と同じ、けれど女性なので下は巻きスカートの、リブレ風の青い衣装を着ている。腰の帯があることで、細い腰や豊かな胸が強調されていた。
平民を引き取ったと聞いているが、リブレの民はローラン伯爵や少女の背後に控える従者のように黒髪である。だから、他国から彼女を引き取ったのだろう。
「ローラン伯爵、今日はお招きありがとう……ようこそ、我が国へ。私はユージン・ド・エスカーダだ。君の留学を歓迎する」
招いた側のローラン伯爵はともかく、生徒会長であり、王太子であるユージンがこの中で一番、身分が高い。それ故、彼が声をかけたことで、少女──イリヤは、初めて口を開いた。平民だと聞いていたが、思っていたより礼儀作法は心得ているらしい。
「イリヤ・ローランと申します。一年間、お世話になります」
「あ、ああ」
金髪と緑の瞳。普段はその美しさで見惚れられる側だが、イリヤは穏やかに微笑むだけだ。いつもと勝手が違うことに戸惑いつつも興味を持つが、傍らにいた少女がそれを許さなかった。
「まあ、ユージン様ってば……綺麗な方ですから、見惚れる気持ちは解りますけれど」
「ラウラ」
「ラウラ・ド・ファーレンハイトと申します」
彼女は生徒会書記であり、ユージンの婚約者であるファーレンハイト侯爵令嬢のラウラだ。ツインテールにしたピンクブロンドと、青い瞳。笑顔は可憐だが、イリヤに見せつけるようにユージンの腕にくっついてイリヤを牽制していた。
微妙な空気を払拭するように、イリヤが笑みを深めて言う。
「お二人は『真実の愛』で結ばれているそうですね。憧れます」
「まあ! ありがとうございますっ」
それに嬉しそうに声を上げるラウラと、まんざらではない様子のユージン。そんな二人を、他の生徒会役員は微笑ましげに見守っている。
そんな面々を、イリヤは微笑みながらも──眺めるその眼差しは一瞬、けれど確かに冷ややかだった。
※
和やかにお茶会を終えた夜。イリヤは自室で風呂に入っていた。
浴槽に入っているイリヤの、髪を洗っているのはお茶会で背後に控えていた従者の青年である。男性が入浴の手伝いをしているのに、いつものことなのか二人とも平然としている。
「お疲れ様でした」
「……別に。リブレの社交界に比べると、ぬるいもんだ」
昼間の淑女然とした言動とは異なる、男性口調。そして銀髪の手入れをさせながら青年に、そして己自身に誓うようにイリヤは言った。
「『ジャンヌ』の代わりに、俺はアイツらに復讐する。『真実の愛』に関わったアイツらを」
※
歴史ある大国エスカーダには、近隣の小国から外交官や留学生が訪れる。そんな国の一つ、リブレは海による交易で栄え、異国風の品々をエスカーダに提供していた。
リブレの外交官であるローラン伯爵には、養女がいると言う。
その養女が卒業までの一年間、王立学園に留学してくることになった。そんな訳で今日は、新学期が始まる前に、彼女の面倒を見てくれる生徒会の面々を集めたお茶会である。
「殿下、並びに生徒会の皆様。本日は我が家にお越しいただき、ありがとうございます」
前髪を撫でつけた黒髪。切れ長の瞳。口ひげまで黒い、彼──リブレからの外交官であるローラン伯爵は、笑顔で挨拶した。彼の故郷の衣装である裾や袖がゆったりした緑の長衣と、同じ色の袴を身に着けていた。
そして、義父であるローラン伯爵に連れられてやって来たのは、銀髪と青い瞳をした美しい少女だった。
義父である伯爵と同じ、けれど女性なので下は巻きスカートの、リブレ風の青い衣装を着ている。腰の帯があることで、細い腰や豊かな胸が強調されていた。
平民を引き取ったと聞いているが、リブレの民はローラン伯爵や少女の背後に控える従者のように黒髪である。だから、他国から彼女を引き取ったのだろう。
「ローラン伯爵、今日はお招きありがとう……ようこそ、我が国へ。私はユージン・ド・エスカーダだ。君の留学を歓迎する」
招いた側のローラン伯爵はともかく、生徒会長であり、王太子であるユージンがこの中で一番、身分が高い。それ故、彼が声をかけたことで、少女──イリヤは、初めて口を開いた。平民だと聞いていたが、思っていたより礼儀作法は心得ているらしい。
「イリヤ・ローランと申します。一年間、お世話になります」
「あ、ああ」
金髪と緑の瞳。普段はその美しさで見惚れられる側だが、イリヤは穏やかに微笑むだけだ。いつもと勝手が違うことに戸惑いつつも興味を持つが、傍らにいた少女がそれを許さなかった。
「まあ、ユージン様ってば……綺麗な方ですから、見惚れる気持ちは解りますけれど」
「ラウラ」
「ラウラ・ド・ファーレンハイトと申します」
彼女は生徒会書記であり、ユージンの婚約者であるファーレンハイト侯爵令嬢のラウラだ。ツインテールにしたピンクブロンドと、青い瞳。笑顔は可憐だが、イリヤに見せつけるようにユージンの腕にくっついてイリヤを牽制していた。
微妙な空気を払拭するように、イリヤが笑みを深めて言う。
「お二人は『真実の愛』で結ばれているそうですね。憧れます」
「まあ! ありがとうございますっ」
それに嬉しそうに声を上げるラウラと、まんざらではない様子のユージン。そんな二人を、他の生徒会役員は微笑ましげに見守っている。
そんな面々を、イリヤは微笑みながらも──眺めるその眼差しは一瞬、けれど確かに冷ややかだった。
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