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第八話 体液を少しばかりいただきます
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幻魔。何となくだが覚えている。さっき、イリスがちらっと言っていたような?
「ええっと、幻魔ってのはなんだ? 魔人に力を与えるとかイリスが言ってたよーな……」
「魔人が幻魔様方から力を賜るように、幻魔の皆様は、魔の王様に直接お力を賜った、言うなれば生え抜きの魔の者でございます」
魔の王。魔の者。語感からすると、なんだか悪そうな奴らと言うか、ファンタジーなゲーム何かでは、どちらかと言えば敵キャラってヤツなのでは?
――俺は、何だか、怖い所に迷い込んだのでは?!
「はい! 質問! 魔の王様って、その、悪い人って言うか、怖い人、か?」
ヤクザの親分を数倍でかくしたような、そんないかつい人物を想像して泰樹は青くなる。
「残念ながら、魔の王様は現在、在位なさっておられません。500年前に起こった魔の者と人の戦争で崩御されてから、魔の王様になられた方はいらっしゃらないのです」
「はーっ。そうか……」
魔の王がいないなら、ここに勇者だとか、そんなヤツらが攻めてくる事も無さそうだ。
「ん? じゃあ今いる幻魔ってのは誰が決めたんだ?」
魔の王が幻魔を作るなら、魔の王不在の今は幻魔もいなくなるはず。ましてや500年も前に魔の王がいなくなっているなら。それが引っかかって、泰樹は首をかしげる。
「先代の魔の王様のお力で幻魔様になられた方々は、皆様ご健在ですよ。最低でも、500年は生きておいでですね」
ああ、ここがファンタジーな世界だと実感する。時間のスケールが違いすぎる!
「……? じゃあ、イリス、も?」
「うん。僕も先代の魔の王様に、幻魔にして貰ったからね。その位は生きてるよー」
子供っぽい顔をするイリスは、年下どころかはるかに年上だった。
「……やっぱ、敬語とかで話した方がいい、です、か?」
泰樹とて敬老精神は持ち合わせている。まあ、イリスの外見はどう見ても25歳に届いていないのだが。当のイリスは、笑って首を振った。
「僕はどっちでも良いよ。タイキがシーモスみたいに話したいなら、それでも」
「……めんどくせぇから、このままで良いならこのままで!」
「うん。僕もその方が良いと思う!」
本当は偉いヤツだと言うが、イリスにいばった所は全くない。心底、コイツは良いヤツなんだと、泰樹は思う。
ならば、どうして『魔の者』なのだろう。シーモスがかけた、翻訳の魔法の不具合ってヤツなのか。
「……なあ、どうしてアンタ達が『魔の者』、なんだ? アンタ達は親切だし、俺にはアンタ達が悪いヤツらには思えない」
思い切って、泰樹はたずねる。
「俺の感覚だと、『魔』ってヤツは、えっと、なんか得体が知れなくて、悪い感じのする単語なんだ。だからアンタ達がそう呼ばれてることに違和感がある」
泰樹の問いに、シーモスは静かに微笑む。イリスと顔を見合わせて、小さくうなずくと泰樹に向き直った。
「そうでございますね。私たちが『魔の者』と呼ばれるのは……この『島』の外の人々にとって、私たちは確実に『悪』、だからでございます」
「……幻魔や魔人はね、人の天敵なの。僕たちは人を食べなくちゃ生きられない。だから、人と『魔の者』は戦争になったし、『魔の者』は戦争に負けてこの『島』に封印されたんだよ」
「……人の、天敵……?!」
人を食べる? 心優しいイリスも、やたらとバカ丁寧なシーモスも?
……俺が落っこちてきたファンタジー世界は、どうやら本当にとんでもない所だったみたいだ。
「アンタ達は……俺を、人を食べるのか?」
恐る恐る、イリスの顔をのぞきこむ。イリスは困ったように、眉を寄せた。
「……うん。でも、僕は、人から血をちょっと貰うだけで生きられるから。人を殺したりしなくても大丈夫。血を分けてくれる奴隷のコたちもいるしね」
「幻魔様方や魔人の中には人を骨ごと食らう者もおりますが、私は、体液を少しばかりいただきます」
二人とも恐ろしいことを言う。二人そろって、吸血鬼みたいなもんか。とりあえず、今すぐ取って食われることは無さそうだ。
「……もしかして、俺はラッキーだったのか?」
「どうして、そう思うの?」
イリスは不思議そうに、首をかしげた。
「アンタ達以外の幻魔とか魔人のとこに落ちてたら、助かったとしても食われてたかも知れないってことだろ?」
「そう、かもしれませんね。私たちは、たまたま食が細いのです。もっとも、『ソトビト』は直ぐに食用にしてはならないと言う法がございますので。他の方々の敷地に落ちていたとしても、直ぐに食卓に供されることは無かったでしょう」
法律があるくらい、『島』にまぎれこむ『ソトビト』は多いと言うことか。それは良いとして、この『島』の外にはどんな世界が広がっているのだろう。解らないことが、どんどん増えていく。
「……じゃあ、やっぱ俺はラッキーってことだ。状況は良くねえけど、一番良い札を引き当てたってことだからな」
にっと泰樹は歯を見せて笑う。それにつられて、イリスはにこにこと表情を崩した。
「うん! タイキにもっとそう思って貰えるように、僕たち、頑張るね! 絶対、タイキを守ってあげるね!」
「ええっと、幻魔ってのはなんだ? 魔人に力を与えるとかイリスが言ってたよーな……」
「魔人が幻魔様方から力を賜るように、幻魔の皆様は、魔の王様に直接お力を賜った、言うなれば生え抜きの魔の者でございます」
魔の王。魔の者。語感からすると、なんだか悪そうな奴らと言うか、ファンタジーなゲーム何かでは、どちらかと言えば敵キャラってヤツなのでは?
――俺は、何だか、怖い所に迷い込んだのでは?!
「はい! 質問! 魔の王様って、その、悪い人って言うか、怖い人、か?」
ヤクザの親分を数倍でかくしたような、そんないかつい人物を想像して泰樹は青くなる。
「残念ながら、魔の王様は現在、在位なさっておられません。500年前に起こった魔の者と人の戦争で崩御されてから、魔の王様になられた方はいらっしゃらないのです」
「はーっ。そうか……」
魔の王がいないなら、ここに勇者だとか、そんなヤツらが攻めてくる事も無さそうだ。
「ん? じゃあ今いる幻魔ってのは誰が決めたんだ?」
魔の王が幻魔を作るなら、魔の王不在の今は幻魔もいなくなるはず。ましてや500年も前に魔の王がいなくなっているなら。それが引っかかって、泰樹は首をかしげる。
「先代の魔の王様のお力で幻魔様になられた方々は、皆様ご健在ですよ。最低でも、500年は生きておいでですね」
ああ、ここがファンタジーな世界だと実感する。時間のスケールが違いすぎる!
「……? じゃあ、イリス、も?」
「うん。僕も先代の魔の王様に、幻魔にして貰ったからね。その位は生きてるよー」
子供っぽい顔をするイリスは、年下どころかはるかに年上だった。
「……やっぱ、敬語とかで話した方がいい、です、か?」
泰樹とて敬老精神は持ち合わせている。まあ、イリスの外見はどう見ても25歳に届いていないのだが。当のイリスは、笑って首を振った。
「僕はどっちでも良いよ。タイキがシーモスみたいに話したいなら、それでも」
「……めんどくせぇから、このままで良いならこのままで!」
「うん。僕もその方が良いと思う!」
本当は偉いヤツだと言うが、イリスにいばった所は全くない。心底、コイツは良いヤツなんだと、泰樹は思う。
ならば、どうして『魔の者』なのだろう。シーモスがかけた、翻訳の魔法の不具合ってヤツなのか。
「……なあ、どうしてアンタ達が『魔の者』、なんだ? アンタ達は親切だし、俺にはアンタ達が悪いヤツらには思えない」
思い切って、泰樹はたずねる。
「俺の感覚だと、『魔』ってヤツは、えっと、なんか得体が知れなくて、悪い感じのする単語なんだ。だからアンタ達がそう呼ばれてることに違和感がある」
泰樹の問いに、シーモスは静かに微笑む。イリスと顔を見合わせて、小さくうなずくと泰樹に向き直った。
「そうでございますね。私たちが『魔の者』と呼ばれるのは……この『島』の外の人々にとって、私たちは確実に『悪』、だからでございます」
「……幻魔や魔人はね、人の天敵なの。僕たちは人を食べなくちゃ生きられない。だから、人と『魔の者』は戦争になったし、『魔の者』は戦争に負けてこの『島』に封印されたんだよ」
「……人の、天敵……?!」
人を食べる? 心優しいイリスも、やたらとバカ丁寧なシーモスも?
……俺が落っこちてきたファンタジー世界は、どうやら本当にとんでもない所だったみたいだ。
「アンタ達は……俺を、人を食べるのか?」
恐る恐る、イリスの顔をのぞきこむ。イリスは困ったように、眉を寄せた。
「……うん。でも、僕は、人から血をちょっと貰うだけで生きられるから。人を殺したりしなくても大丈夫。血を分けてくれる奴隷のコたちもいるしね」
「幻魔様方や魔人の中には人を骨ごと食らう者もおりますが、私は、体液を少しばかりいただきます」
二人とも恐ろしいことを言う。二人そろって、吸血鬼みたいなもんか。とりあえず、今すぐ取って食われることは無さそうだ。
「……もしかして、俺はラッキーだったのか?」
「どうして、そう思うの?」
イリスは不思議そうに、首をかしげた。
「アンタ達以外の幻魔とか魔人のとこに落ちてたら、助かったとしても食われてたかも知れないってことだろ?」
「そう、かもしれませんね。私たちは、たまたま食が細いのです。もっとも、『ソトビト』は直ぐに食用にしてはならないと言う法がございますので。他の方々の敷地に落ちていたとしても、直ぐに食卓に供されることは無かったでしょう」
法律があるくらい、『島』にまぎれこむ『ソトビト』は多いと言うことか。それは良いとして、この『島』の外にはどんな世界が広がっているのだろう。解らないことが、どんどん増えていく。
「……じゃあ、やっぱ俺はラッキーってことだ。状況は良くねえけど、一番良い札を引き当てたってことだからな」
にっと泰樹は歯を見せて笑う。それにつられて、イリスはにこにこと表情を崩した。
「うん! タイキにもっとそう思って貰えるように、僕たち、頑張るね! 絶対、タイキを守ってあげるね!」
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