『ZEPPERS』(ゼッパーズ)

相沢周慈朗

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Interlude Description(幕間説明)01

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 オプティック・フライマーという巨大なSBSP(Space-based solar power=太陽光発電衛星)が破砕して以降、この惑星ほし正午ひるまでも空に満点の星片をたたえるようになった。
 かつて――
 その巨大なSBSPは人類の未来を保障するかのように、その八枚の銀翼を誇らし気に広げていた。
 それにより、人類は核の自縛を離卒し、新たなる発展を遂げたのである。
 SBSPがもたらした恩恵――それは強大なエネルギーではあるが――それを巡り、争いが起きることは、ついぞなかった。
 その計画こそが、各国の共同歩調により進められたものであったからである。
 一時期、人類は核の冬に絶えず脅かされ、それに辟易としていた。
 そんな時代、八人のユニオンコンプ(連合大使)が密に協議し、その離脱を促進させた。
 彼らは後にオプティック・マイヤート(八賢人)と呼ばれ、SBSPを実現せしめる礎を築いた者たちであり、その功績であるSBSPはオプティック・フライマー(八枚の壁)と名づけられた。
 最も、それが具現化したのは、彼ら八賢人が没して後の話であるが……。しかし、彼らの残した理念に基づき、その無限のエネルギーは各国各地に供給された。
 レクテナ(rectifying antenna=マイクロ波に変換されたエネルギーを受信するアンテナ)やその施設が各所に設置され、それにより人類は栄華を夢見た。
 相変わらず矮小な紛争は絶えることはなかったが、それでも前を向く者達は恐ろしい速さで躍進していった。
 やがて《ユニオンステッジュ(連合の時代)》という名のもとに各国は協調を果たし、永世中立国であったガイヤポリスがその中心となると国家の語意における主権はそれに取って代わられた。
 そして人類は、更なる飛躍を遂げる。
 スペースポッド(大掛かりな宇宙ステーション)を足がかりとして、月との共鳴軌道上にトーラス型(約1万人収容)のスペースコロニーが数機建設された。
 そして、いよいよラグランジュL4におけるオニールのコロニー(シリンダー型約1000万人収容)の建設に乗り出した矢先である。
 ――オプティック・フライマーが破砕したのである。
 その巨大な人工衛星の崩壊は瞬く間にチェインリアクションを招き、あっさりとケスラーシンドロームの予想モデルを覆してしまった。
『彗星が衝突しても破砕しない!』
『それだけの対策がなされている!』
 オプティック・フライマーの開発計画《ドゥミノ・ヴォリオン》のチーフエンジニアであったジョン・アブレイアが計画の始動時、全世界に向け発せられた衛星放送で語った言葉である。
 しかし通説では、この破砕はNEO (Near Earth Object=地球近傍天体)の衝突がもたらしたものとされている。
「皆さん、落ち着いてください!」
「すぐに状況は回復します!」
「現在、ブレイオン(共鳴軌道上のスペースコロニー)に援助を要請しています!」
「こういった時こそ、良識ある行動を……」
 等々……。
 主導者と呼ばれる者達の嗄らした声が様々なメディアを通し、絶えることなく似たようなポリティカルスピーチ(政治的発言)を繰り返した。
 しかし。
 皆、気づかずにいたのである。
 彼ら主導者が、どこでそのスピーチを行っていたのか……。
 彼ら――それは主導者に限らず――権力や富を有する者のほとんどは、その持ち得た力を罹災防止のためにではなく、自己の地球脱出のために使用していたのであった。
 それでも無事ブレイオンに辿りつけた者は、いち早く動いた一千数百名であり、後発の者達はその途中で自らがデブリとなり、ケスラーシンドロームを促進させていた。
 ブレイオンに辿りついた者達は宇宙から、惑星こきょうが、まるでダニに覆われてゆく龍舌蘭りゅうぜつらんのようにデブリ(宇宙塵)にむしばまれてゆくその姿を眺め、皆一様に涙した……と伝えられている。
 その頃、地上にいる者達は涙を流すどころではなかった。
 オプティック・フライマー崩壊の当初――
 発せられたマイクロウェーブが辺りかまわず地上に照射された。
 その強大なエネルギーを被射した地域は、電子レンジにかけられたグラタンが出来上がった料理としてテーブルに並ぶまでの過程を再現して見せた。
 航空機を始めとするあらゆる交通機関のそのほとんどが停止し、それによる災害が生じた。さらに、磁気が荒れ、電気機器の不調や停止が相次ぐと、二、三次的被害が拡大した。
 その頃には、すでに都市まちは人と炎と悲鳴と、それにパニックという名のエッセンスをピールしてシェイカーで振った状態と化していた。
 しかし、人が人としていられたのも、そこまでなのかもしれない。
 オプティック・フライマーが完全に崩壊すると、衝突し合ったデブリがやがて引力に牽かれ、無数の赤い火の玉となって地上に降り注いだのである。
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