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Act04 ホックギール東端部/アミーアロゼ/秘密軍事施設AY197‐Dの外縁
Act04-01
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『ポイントタイム(点刻)より、15分間のパッチアタック(短期断続的支援攻撃)を行う。市街地へ潜入を果たしたら、このルートを辿るがよい。アナライザー(情報分析班)によれば、このルートが一番安全らしい。幸い敵も……』
何が安全だっテェ……
化粧することしか能がなイ
万年盛りのついたメスネコ(情報分析班)共ガ……
おかげでコッチは……
おかげで…………
おか…げ…
「ッ!? オリゴッ!」
カレンは上体をつい起こしては、
「痛ッ……」
頭を抱え、そのまま上体を伏せてしまった。
ゼップメットは脱がされていた。
「あっ、班長。大丈夫ですか?」
シュワンツが歩み寄ってくる。彼はゼップメットのバイザーを上げており、その顔が見て取れた。色が白く、整った顔をしているのだが……。
ただ一つ――
やや垂れたブルーの眼が、常に締りのないこの男の様を、表現しているように思える。
「いや~、心配しましたよ」
そう言いながらカレンの隣に腰を下ろすと、壁にもたれた。
(お前……心配するなら、もっと表情作れヨっ。辛そうな表情とか、せつなそうな表情とか……色々あるだろゥ? 『プライム・マリーズ・ストーリー(『嗚呼、我が君よ』全五二話Avx55放送・三二話打切終了)』見てなかったのかヨっ……)
「ハハっ。良かった、良かった」
(……まったク)
「ここは?」
「U3PのSV2ブロックです」
「とりあえずは、AY197‐Dの外縁には辿り着けた。というわけカ……」
そこは円形に広がる外周ブロックの地下第三層、プラント南西に位置する場所であった。
「IVは?」
「今、通れそうなルートを探しにいってます。あの後、安全確保が精一杯で……。当初の予定からずれてしまいましたからね~。あの状況下では、ここに辿り着けただけでも、良しとしないと……」
「オリゴのおかげだナ……」
「ヤメましょうよ、班長……」
(エ…ッ!? お前ッ……そんな顔……できんのかヨ……)
シュワンツは手にしたものを、ゼップグラブ越しにその感触を確かめている。それは、オリゴが賭けの代償として、最期にその首から引きちぎり彼に手渡したものであった。
やがて、ベルトに装着しているメディックパック(医療用パック)のジップを開けると、それをそこに仕舞い込んだ。
「マイティ・ボーイは、死なないと思ってましたよ……」
「いつダ……アイツと初めて組んだのは……」
「パイソン・アタック(テッセン渓谷侵攻作戦)です……」
「そうか……。アタシはデイジー・カッター(カリュヒル降下作戦)の時が、初めてダ……」
「随分と古いですね……」
「ああ……。あの頃はまだ、ゼップチェイサー(人型突撃艇)にも乗ってなかっタ……」
「そうなんですか……」
(おいおい……。そんな……淋しそうな顔、見せるんじゃないヨ……。そんな顔してたら……生き残れねぇゾ……)
カレンは壁にもたれながら、シュワンツを斜目(はすめ)に窺っていた。この男にはあってはならないほどの悲壮の色をその顔に浮かべている。
「知ってるヨ……。お前たチ、アタシを抱く回数で、『賭け』してたんだロっ?」
カレンはわざと笑って見せた。
「まいったな……」
と言ってテれ隠しに俯いたシュワンツの顔を覗きこむと、
「アイツ……何発っテ、言ってタ……?」
それは悪戯な女の声であった。
「……………………132…………」
「ふッ、ハっハっハハハ……」
「…………?」
「どこまで、お人好しなんだカ……」
彼の垂れた目がきょとんとしてカレンを見つめてくるのを、微笑に去(い)なしながら、カレンは爽快に言った。
「332ッ」
「え!?」
「ハハハハッ!」
「マイティも人が悪いな~……」
「優しいのサっ」
(笑えヨっ……)
「これでお前は、当分、死ねないナっ!」
(ほら、笑えっ……)
「あと一九九発、アタシとヤンなきゃ、負けだもんナっ」
(笑えっ…)
「それともアタシが、そのパックに仕舞ったモン。もらう権利があるってことかイっ」
(ほらっ)
「いくら班長でも、それは簡便だなあ~」
(いい顔に、なってきたじゃないカ……)
「だったらっ。オリゴを超えてみナ。男としてモ……♂(オス)としてモっ」
(もう少しっ…)
「あー、チクショウっ……遠き道のりだなあ~……」
「はっはっはっはっ……」
(そうだヨ…その顔だヨ……。やっぱり、お前は…その締まりのない顔が、一番サ……)
「班長ーっ!」
イヴァンの声が駆ける音と共に、カーブを描いた廊下に反響した。
「ルートッ、見つかったっスッ!」
何が安全だっテェ……
化粧することしか能がなイ
万年盛りのついたメスネコ(情報分析班)共ガ……
おかげでコッチは……
おかげで…………
おか…げ…
「ッ!? オリゴッ!」
カレンは上体をつい起こしては、
「痛ッ……」
頭を抱え、そのまま上体を伏せてしまった。
ゼップメットは脱がされていた。
「あっ、班長。大丈夫ですか?」
シュワンツが歩み寄ってくる。彼はゼップメットのバイザーを上げており、その顔が見て取れた。色が白く、整った顔をしているのだが……。
ただ一つ――
やや垂れたブルーの眼が、常に締りのないこの男の様を、表現しているように思える。
「いや~、心配しましたよ」
そう言いながらカレンの隣に腰を下ろすと、壁にもたれた。
(お前……心配するなら、もっと表情作れヨっ。辛そうな表情とか、せつなそうな表情とか……色々あるだろゥ? 『プライム・マリーズ・ストーリー(『嗚呼、我が君よ』全五二話Avx55放送・三二話打切終了)』見てなかったのかヨっ……)
「ハハっ。良かった、良かった」
(……まったク)
「ここは?」
「U3PのSV2ブロックです」
「とりあえずは、AY197‐Dの外縁には辿り着けた。というわけカ……」
そこは円形に広がる外周ブロックの地下第三層、プラント南西に位置する場所であった。
「IVは?」
「今、通れそうなルートを探しにいってます。あの後、安全確保が精一杯で……。当初の予定からずれてしまいましたからね~。あの状況下では、ここに辿り着けただけでも、良しとしないと……」
「オリゴのおかげだナ……」
「ヤメましょうよ、班長……」
(エ…ッ!? お前ッ……そんな顔……できんのかヨ……)
シュワンツは手にしたものを、ゼップグラブ越しにその感触を確かめている。それは、オリゴが賭けの代償として、最期にその首から引きちぎり彼に手渡したものであった。
やがて、ベルトに装着しているメディックパック(医療用パック)のジップを開けると、それをそこに仕舞い込んだ。
「マイティ・ボーイは、死なないと思ってましたよ……」
「いつダ……アイツと初めて組んだのは……」
「パイソン・アタック(テッセン渓谷侵攻作戦)です……」
「そうか……。アタシはデイジー・カッター(カリュヒル降下作戦)の時が、初めてダ……」
「随分と古いですね……」
「ああ……。あの頃はまだ、ゼップチェイサー(人型突撃艇)にも乗ってなかっタ……」
「そうなんですか……」
(おいおい……。そんな……淋しそうな顔、見せるんじゃないヨ……。そんな顔してたら……生き残れねぇゾ……)
カレンは壁にもたれながら、シュワンツを斜目(はすめ)に窺っていた。この男にはあってはならないほどの悲壮の色をその顔に浮かべている。
「知ってるヨ……。お前たチ、アタシを抱く回数で、『賭け』してたんだロっ?」
カレンはわざと笑って見せた。
「まいったな……」
と言ってテれ隠しに俯いたシュワンツの顔を覗きこむと、
「アイツ……何発っテ、言ってタ……?」
それは悪戯な女の声であった。
「……………………132…………」
「ふッ、ハっハっハハハ……」
「…………?」
「どこまで、お人好しなんだカ……」
彼の垂れた目がきょとんとしてカレンを見つめてくるのを、微笑に去(い)なしながら、カレンは爽快に言った。
「332ッ」
「え!?」
「ハハハハッ!」
「マイティも人が悪いな~……」
「優しいのサっ」
(笑えヨっ……)
「これでお前は、当分、死ねないナっ!」
(ほら、笑えっ……)
「あと一九九発、アタシとヤンなきゃ、負けだもんナっ」
(笑えっ…)
「それともアタシが、そのパックに仕舞ったモン。もらう権利があるってことかイっ」
(ほらっ)
「いくら班長でも、それは簡便だなあ~」
(いい顔に、なってきたじゃないカ……)
「だったらっ。オリゴを超えてみナ。男としてモ……♂(オス)としてモっ」
(もう少しっ…)
「あー、チクショウっ……遠き道のりだなあ~……」
「はっはっはっはっ……」
(そうだヨ…その顔だヨ……。やっぱり、お前は…その締まりのない顔が、一番サ……)
「班長ーっ!」
イヴァンの声が駆ける音と共に、カーブを描いた廊下に反響した。
「ルートッ、見つかったっスッ!」
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