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Act05 ブライトン・ユニポリス/複合首都オールドポッペン/ベリオス(統合参謀本部)
Act05-02
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前述したとおり、ホックギールはゼップチェイサー(人型突撃艇)が登場した当初より、研究開発に力を注いでおり、その技術力は他のポリスを圧倒している。
それは等しくゼップチェイサーを有しているモバンテでさえ、その導入は最近のことであり、全く追いつけていないのが実状である。
ゼップチェイサーの優位性が戦場で示され始めている昨今にあって、他のポリスからしてみれば、その研究データ等は喉から手が出るほど欲しい代物と言って良い。
実際、ユニポリス(共同都市国家)の政治において、その技術供与を要求する動きも生じ始めている。
そんな状況にあって、今回のようなゼップチェイサーの極秘開発施設の奪還は、そのどさくさに紛れて技術を入手するといった、彼らにとって絶好の機会なのである。いや、どさくさに紛れずとも、これを理由に政治において圧力をかけ、ゼップチェイサーの技術供与を働きかけてくる公算がかなり高い。
ホックギールの政治家たちにあっては、例えユニポリス(共同都市国家)とはいえ他のポリスに技術を供与することは国益を損なうのと道議であり、そのような事態は忌避すべきと考えている。いやむしろ、政治家たちの中にはゼップチェイサーの技術の優位性によって自分のプライドが保たれている者も少なく無く、そのプライドを守る為に……と言った方が良いのかも知れない。
ともあれ、ホックギールの内部において、政府から軍部に対して今回の特殊作戦につき、絶対に成功させるようにとの圧力がかかっているのは確かなことである。
そのホックギールの機動陸兵作戦副部長であるタミール・アジェル・ベルガーは、いささか焦燥を覚えつつ、彼を見つめて回答を待っている副議長のマイヤーを見つめ返した。
「いえ。その必要はありません。彼らは必ず我々の期待に答えてくれるはずです」
「しかし、失敗したら。我々はこの後、3人のゼッパー(突撃艇乗り)を失うことになる。いや、それだけで済むのなら、まだいい……」
下手に離脱行動時を襲われ、AY197‐Dにあるゼップチェイサーが鹵獲されたらどうするのか?
彼ら(侵攻者)のターゲット(獲得目標)に、それが含まれていることは、想像に易い。
そのようなことになれば、犠牲を払ったうえ、みすみす敵国にゼップチェイサーをくれてやるようなものではないか。
我が軍としてもゼップチェイサーは一艇でも確保したいところであるが、敵国もまた同じ。
「議長(統合参謀本部議長)も。まさに、その点について心を痛めておいでになるのだ。それが相手に渡るぐらいであれば、この手で破壊した方がまだましである。結果によっては、わざわざSF(特務部隊)を派遣せず、AY197‐Dはそのまま黙殺し、反撃行動に出ておいた方が賢明であった……と、嘆くことにもなりかねない」
「その点は、ご心配にはおよびませんっ」
ベルガーは切り札を切ろうとしていた。それが、カードゲームをするほど痛快な行為でなかったことは、彼の険しい表情が物語っていた。
「どういうことかね?」
マイヤーに限らず、円卓を囲む者の全てが、怪訝そうな表情で彼を見つめた。
「PTX‐2をセットしてあります……」
〝ッ!?〟
〝なんだって!?〟
〝え!?〟
〝おいおい……〟
〝馬鹿なことを……〟
〝……〟
等々……。
様々な言葉が囁かれた。
それでも皆が、一様に驚きの表情を湛えている。
「それでリミット(制限時間)は?」
「はい。エマージェンシーエフェクト発動後に艇を起動させてから、72時間」
「そうか……」
マイヤーは眼鏡を額に上げると、目頭を指でほぐした。そうやって、尋思する表情をごまかしているのだろう。
やがて、大きく息を吐くと、
「まあ、いい頃合いと言ったところか……」
と一同を見回した。
「それでは、支援行動は保留とし、72時間以内に彼らが戻るか、または、その爆破が確認されれば、良し。そうでない場合には、支援行動をオミット(飛ば)して、カウンターアタック(奪還作戦)のAプランを発動する」
円卓に、様々な思いをのせた溜め息が毀れる中、
「チッ……」
と舌打ちする音を、カルザフ・コルヴィンスキーは溶け込ませていた。
それを意に介さず、マイヤーは続けた。
「各軍、情報収集に努め、万が一の場合に備えておくように。作戦コードについては、その発令時に合わせ発表する。尚、適宜、臨時会議を徴集するゆえ、その身を備えおくように。以上っ」
それは等しくゼップチェイサーを有しているモバンテでさえ、その導入は最近のことであり、全く追いつけていないのが実状である。
ゼップチェイサーの優位性が戦場で示され始めている昨今にあって、他のポリスからしてみれば、その研究データ等は喉から手が出るほど欲しい代物と言って良い。
実際、ユニポリス(共同都市国家)の政治において、その技術供与を要求する動きも生じ始めている。
そんな状況にあって、今回のようなゼップチェイサーの極秘開発施設の奪還は、そのどさくさに紛れて技術を入手するといった、彼らにとって絶好の機会なのである。いや、どさくさに紛れずとも、これを理由に政治において圧力をかけ、ゼップチェイサーの技術供与を働きかけてくる公算がかなり高い。
ホックギールの政治家たちにあっては、例えユニポリス(共同都市国家)とはいえ他のポリスに技術を供与することは国益を損なうのと道議であり、そのような事態は忌避すべきと考えている。いやむしろ、政治家たちの中にはゼップチェイサーの技術の優位性によって自分のプライドが保たれている者も少なく無く、そのプライドを守る為に……と言った方が良いのかも知れない。
ともあれ、ホックギールの内部において、政府から軍部に対して今回の特殊作戦につき、絶対に成功させるようにとの圧力がかかっているのは確かなことである。
そのホックギールの機動陸兵作戦副部長であるタミール・アジェル・ベルガーは、いささか焦燥を覚えつつ、彼を見つめて回答を待っている副議長のマイヤーを見つめ返した。
「いえ。その必要はありません。彼らは必ず我々の期待に答えてくれるはずです」
「しかし、失敗したら。我々はこの後、3人のゼッパー(突撃艇乗り)を失うことになる。いや、それだけで済むのなら、まだいい……」
下手に離脱行動時を襲われ、AY197‐Dにあるゼップチェイサーが鹵獲されたらどうするのか?
彼ら(侵攻者)のターゲット(獲得目標)に、それが含まれていることは、想像に易い。
そのようなことになれば、犠牲を払ったうえ、みすみす敵国にゼップチェイサーをくれてやるようなものではないか。
我が軍としてもゼップチェイサーは一艇でも確保したいところであるが、敵国もまた同じ。
「議長(統合参謀本部議長)も。まさに、その点について心を痛めておいでになるのだ。それが相手に渡るぐらいであれば、この手で破壊した方がまだましである。結果によっては、わざわざSF(特務部隊)を派遣せず、AY197‐Dはそのまま黙殺し、反撃行動に出ておいた方が賢明であった……と、嘆くことにもなりかねない」
「その点は、ご心配にはおよびませんっ」
ベルガーは切り札を切ろうとしていた。それが、カードゲームをするほど痛快な行為でなかったことは、彼の険しい表情が物語っていた。
「どういうことかね?」
マイヤーに限らず、円卓を囲む者の全てが、怪訝そうな表情で彼を見つめた。
「PTX‐2をセットしてあります……」
〝ッ!?〟
〝なんだって!?〟
〝え!?〟
〝おいおい……〟
〝馬鹿なことを……〟
〝……〟
等々……。
様々な言葉が囁かれた。
それでも皆が、一様に驚きの表情を湛えている。
「それでリミット(制限時間)は?」
「はい。エマージェンシーエフェクト発動後に艇を起動させてから、72時間」
「そうか……」
マイヤーは眼鏡を額に上げると、目頭を指でほぐした。そうやって、尋思する表情をごまかしているのだろう。
やがて、大きく息を吐くと、
「まあ、いい頃合いと言ったところか……」
と一同を見回した。
「それでは、支援行動は保留とし、72時間以内に彼らが戻るか、または、その爆破が確認されれば、良し。そうでない場合には、支援行動をオミット(飛ば)して、カウンターアタック(奪還作戦)のAプランを発動する」
円卓に、様々な思いをのせた溜め息が毀れる中、
「チッ……」
と舌打ちする音を、カルザフ・コルヴィンスキーは溶け込ませていた。
それを意に介さず、マイヤーは続けた。
「各軍、情報収集に努め、万が一の場合に備えておくように。作戦コードについては、その発令時に合わせ発表する。尚、適宜、臨時会議を徴集するゆえ、その身を備えおくように。以上っ」
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